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Counterparts / Nothing Left to Love(2019)〜叙情派ハードコアの傑作〜


カナダ産メロディックハードコアバンド、2年振り通算6枚目のフルアルバム。

2010年、SilversteinのボーカルShaneが主宰のレーベルVerona Recordsから華々しくデビューを飾った彼らは、瞬く間にシーンを席巻していく。
本作ではついにビルボードTOP100以内に食い込むなど、恐らくこの手のサウンドを鳴らす中でも最も成功しているバンドの一つと言えると思う。

このバンドの最大の魅力はなんと言っても泣きのメロディーとカオスの両立。
古き良き叙情派ニュースクールを現代的にアップデートし続ける様は聴いていて本当に気持ちが良い。

メタルコアやカオティックハードコア、あるいはメロデスといった要素を巧みに汲み上げ、泣きの疾走へと突き抜けていく類い稀なセンスを持ち、リスナーはBrendanの歌詞世界へとずぶずぶ没入していく。
セールス的にも伸ばしてるのは、様々なサブジャンルを非常に上手く纏め上げることから、幅広いリスナーの支持を得ることに繋がってるんだと思う。

#1「Love Me」はストレートな歌詞がめちゃくちゃ刺さる。

Will you love me when there's nothing left to love?
(愛するものが無くなった時、あなたは私を愛してくれますか)

これ明らかに前作から地続きになっていて、“君はもうかつての君じゃない”とうなだれた“俺”がそれでも愛されたいと願う(思ってしまう)葛藤を描いてるんじゃないかなと思う。

#2「Wings of Nightmares」でその相反する想いが噴き出してる。喪失への羨望と、流れに身を任せたいという乖離した感情の揺らめきが見える。で、この曲がもう素晴らしく良い。序盤から泣きメロとスリリングな刻みや転調が共存していて、これぞCounterpartsといった感じ。

#3「Paradise and Plague」は前曲の感情の乖離、矛盾した揺らめきがそのままタイトルになっている。まあ歌詞の解釈は各々に任せるとして、この曲も良曲だ。クリーンが導入されるが甘さはなく、退廃的な美しさと鬱屈とした空気をヒリヒリと感じる。ブレイクダウンなどシンプルな要素も本作では積極的に取り入れてて、新規のファン獲得も狙えそう。

#4「The Hands That Used to Hold Me」はアートワークのテーマにもなっている象徴的な曲。跳ねるドラミングから叙情的なフレーズと疾走の嵐。リズム隊は結構変動あるバンドなんだけど、良いドラマーが多いよね。Counterpartsの持つ独特の緊張感を演出するのが上手い。

#5「Separate Wounds」はメタルコア色の強いバースから美しいメロディーへと繋げていく曲。このへんのバランス感覚が彼らの中でも最高潮に極まってて、メタルコアが好きな人もハードコアが好きな人もどっちにも響くよね。変則的なブレイクダウンはAugust Burns Redっぽさもあるな。

#6「Your Own Knife」は本作の中でも攻撃性が非常に高く、完全にメタルコアやってる。スリリングなリフもアグレッシブなリズム隊も完璧。一瞬ブラスト入るやん。あれ?叙情ハードコアだよね?このバンド。

#7「Cherished」はテクニカルなギターを随所に差し込みつつ、中盤でブレイク、ラストはディレイの効いたポストロック的な音空間で煌びやかに散っていく。Counterpartsは基本的に無駄な展開が無いバンドで、ほとんどコンパクトな楽曲なんだけど、ドラマ性が異常に高いんだよね。

#8「Imprints」はアッパーなメロデスリフと疾走を組み合わせ、涙ちょちょ切れの泣きメロが襲ってくる。いやほんとに無駄が無いんだよね。アルバム終盤に差し掛かってもなお名曲の応酬。

#9「Ocean of Another」は彼らにしては少し大げさでクサめのイントロからメタルコア的な疾走を見せ、儚げな高音ギターとコーラスで涙腺を緩めつつ、中盤からは立体的な音作りが特徴的なブレイク、クリーントーンのギターにスポークンパート、ラストはやはり壮大さすら感じさせるコーラスでフィニッシュ。

#10「Nothing Left to Love」は淡いアンサンブルとクリーンがメインの涙腺崩壊ナンバー。元々メロディーが最高に良いバンドなんで、こういう曲やらせても完璧なのよね。これ、結局のところ#1「Love Me」の歌詞から引用した展開になってて、アルバムを通して描かれた矛盾した感情をラストトラックに引きずってくることで、揺れ動く感情の連鎖を全体的に再現しちゃってるところがやばい。

Counterpartsを初めて聴いてみたいと思った人はこのアルバムから入れば良いと思う。
それぐらい間口が広いのに、琴線に触れるメロディーやコアな部分を全く失ってないのことにはちょっと驚きを隠せない。

★★★★★






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