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Between the Buried and Me / Colors Ⅱ

1. Monochrome
2. The Double Helix Of Extinction
3. Revolution In Limbo
4. Fix The Error
5. Never Seen / Future Shock
6. Stare Into The Abyss
7. Prehistory
8. Bad Habits
9. The Future Is Behind Us
10. Turbulent
11. Sfumato
12. Human Is Hell (Another One With Love)

ノースカロライナ出身のプログレッシブメタルバンド、3年振り通算8枚目のフルアルバム。
とはいえ前作「Automata Ⅰ Ⅱ」はミニアルバム形式の連作だったり、「The Parallax」もEPの布石がありました。彼らにとって作品がアルバムかどうかなんて殆ど意味のない形容のように思えます。

本作の前編にあたる、2007年リリースの「Colors」によって、Between the Buried and Me(以下BTBAM)は確固たるスタイルを確立しました。
デスメタル、メタルコア、マス、フュージョン、プログレといった要素を巧みに取り入れ、長尺でも決してダレることのないドラマ性を持った楽曲は、世界中のファンを虜に。
彼ら自身もこのアルバムを機に自身達のスタイルを確立したとインタビューで答えていました。

とはいえ、「Colors」以前の作品が優れていなかったかというとそういうわけではなくて、初期衝動的なカオスを叩きつける様を感じ取ることが出来るので、ファンなら聴いておいて損は無いと思います。

元々このバンドはとてもストイックな気質を持っていて、恐らく過去作品においても、持ち得る全ての力を具現化すべく取り組んできたはずです。そして例に漏れず評価を塗り替えてきました

よりプログレッシブメタル寄りとなった「Coma Ecliptic」によってようやく賛否が割れたような気がしますが、それでもなお人気は衰えていません。

そんなストイックマン達、ここにきて自分達のハードルを最大限にぶち上げて、傑作とされる「Colors」の続編を制作するっていうんだから、末恐ろしいものです。

そして結論から言えば、「Colors Ⅱ」は間違いなく素晴らしい作品でしょう。ただ、「Colors」の焼き直しのような感覚は全くありません。

ハードコア、メタルコア、デスメタル、マスコアのごった煮目線から圧倒的な構築美に寄せていったのが「Colors」なら、
以降の作品で突き詰めたプログレッシブな自分達を経て、改めて過去にアプローチを試みようとしたのが本作「Colors Ⅱ」の位置付けなのかと思います。

要するにここに至るまでに培ってきたものが違うので、続編とは言っても質感は異なるんですよね。(多少のオマージュはある)

なので“あの時のBTBAM”を求めているのなら、本作は違いますよということだけは言えます。

過去への向き合い方もさすがだなあと思わせるのは、「Alaska」以前の作品のリミックス、リマスターを経て本作が制作されたこと。

「Colors」以降に自分達のスタイルを確立したと言っていた彼らが、それ以前にやってきたことを改めて整理する。

“荒いけど、間違ったことはやってこなかったよね”

という控えめなリスペクトと、さらに成長した自分達の力を最大限注ぐ、そんな強い意志が感じられます。

むしろ最近のBTBAMから聴いた諸君達は、「Colors」よりこっちのがしっくりくるんじゃないかと思います。

とっ散らかっているのに何故か成立していたあの頃から、計算され尽くした努力の結晶へ、それが本作なわけです。

#1「Monochrome」からいかにも皮肉っぽくて好きです。
“Colors=色彩”を“Monochrome=白黒”で始めていく。
儚げなピアノ讃美歌から雪崩れ込むようにザクザクとしたメタルコアへ突入する様は確かにあの時の香りをかすかに感じさせてくれます。
歌詞も明らかに当時のリスナーを意識したような言い回しです。

“俺達はこうなった。お前達はどう評価する?”

そんな挑戦状のように聴こえてきます。

#2「The Double Helix of Extinction」は冒頭からノイジーに唸るギター、その後にシンプルにザクザクと刻んで爆走パートへと繋げていきます。ブヨブヨとしたシンセを絡めたバースを挟んで再び暴走。コロコロと顔色を変えながらも、最近のBTBAMの中ではかなりアグレッシブな曲だと思います。これは過去作ファンもぶち上がるよ。

#3「Revolution in Limbo」は、#2の爆走を受け継ぎつつ、メロい歌モノを挟んで不思議な浮遊感で空間を満たします。このバンドのメンバー達は皆凄いんですが、Tommy Rogersの歌唱力、表現力が作品毎に確実にレベルアップしていくのは恐ろしい限りです。
新旧の魅力をバランス良く組み上げた良曲。

#4「Fix The Error」はシングルカットされた曲。パンキッシュな雰囲気とちょっと投げやりに歌うTommy、ドラムも好き放題やっています。これをシングルにする勇気に乾杯。

#5「Never Seen / Future Shock」は最近のBTBAMらしいプログレッシブメタル色が強めの大曲。こういう曲ではやはりTommyの歌唱力強化が顕著に影響してきますね。目まぐるしく展開していく様は確かに「Colors」の雰囲気に寄せてるのかもしれないですが、明らかにプログレ要素が強いです。後半のチルいアンサンブルからクライマックスに向かっていく流れも良いですね。

#6「Stare into The Abyss」で小休止といったところでしょうか。清涼感のあるメロディーにスペーシーなシンセを絡め、ゆったりとした歌唱。と思いきや、最後に極悪メタルコアへと変貌します。

#7「Prehistory」はポップセンスの光る前半から、ディズニーランドのようなSEを挟み込んでふざけ倒す曲。こういうコミカルな側面も彼らならでは。ある意味BTBAMだから許せるのであって、前半の怒涛展開が無ければこういう曲って何も活きてこないですよね。

#8「Bad Habits」は明らかにセルフオマージュですね。過去ファンをニヤつかせながらも散らかった感じはしません。バンドとして脂が乗り切ったBTBAMだからこそといった感じでしょうか。

#9「The Future is Behind Us」もプログレメタル感の強い曲で、コミカルなアンサンブルでユラユラと蠢き、清涼感さえ感じさせる歌メロの後はまたおふざけ展開。後半にスリリングな刻みとグロウルを覗かせてしっかりとメリハリを付けてます。ふざけてるんだか真剣なんだか。

#10「Turbulent」はチープ&スペーシーなシンセのリフレインにギターが乗っかり、ドラムのアクセントでタイトに引き締めながら徐々にスケールを広げていくこれまた面白い曲。
おそらく#6〜#10までかなり実験的な要素を詰め込んで遊んでますね。

スペーシーなインタールード#11「Sfumato」を挟んでラストの#12「Human Is Hell」。
過去ファンの誰もが「White Walls」を意識せざるを得ないでしょうが、しっかり“らしさ”を香らせつつも非常に小慣れた印象の曲で、展開の起伏が計算され尽くしています。このへんはやはりバンドの円熟を感じさせる要素でしょうか。

期待を全く裏切ることなく、非常に優れた作品を投じてきましたね。後半の流れを良しとするかどうかで評価は分かれそうな気がしますが、個人的には新旧のファンを納得させる要素を持っていると思います。

バンドとしての円熟を感じさせられながらも、そんなバンドが敢えて自分達のハードルを再定義し、挑戦し続けるというその姿勢には脱帽せざるを得ません。

これまで多くの作品でキャリアを塗り替えつつ、ついに自身達の傑作である「Colors」とも向き合ったBTBAM。

その姿は明らかに新しい“色彩たち”を纏った堂々たる貫禄を放っています。

★★★★★











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