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Walking Dead On Broadway / Dead Era (2018)〜数多のサブジャンルを吸収した壮大なデスコア〜


ドイツ出身デスコアバンド、2年振り通算3枚目のフルアルバム、ラスト作。

2020年に解散を発表。奇しくも同年、元ボーカリストだったRobert Hornが自殺により亡くなっています。

ドイツのデスコアといえば彼ら!そのくらい思い入れが強いバンドでもある。当時彼らのデビューアルバムは何故かやけに流通が悪く、手に入れるのに苦労した思い出が。

Robert脱退後、バンドはNils Richberをリクルートして活動を続ける。解散したため、結果的に彼がボーカルを務めたのは本作のみになってしまったけど、トータルタイム50分超えの濃密なデスコアアルバムを最後にリリースしてくれた。

サウンド的にはオーソドックスなデスコア。ただ、ドイツ特有の叙情的なギターも随所に取り入れられ、どこかメタルコアのような情感を持ったサウンド。加えて、オーケストレーションを大々的に取り入れることによってシンフォニック要素も増大しており、過去1番でスケールのデカい作品に仕上がっている。

お世辞抜きにRobert Hornはボーカリストとして素晴らしく、WDOBの個性に繋がっていた部分はあったんだけど、新ボーカルNilsもこのアルバムでかなり健闘してくれたと思う。それ故に解散は本当惜しまれる。

いつか再結成とかしてくれたらいいな。

インスト#1「Dead Era」からリードトラック#2「Red Alert」へ。これまずリフがカッコいい。デスコアというよりメタルコア的な熱量があるんだよね。ボーカルは早口にまくし立てるグロウルやハイピッチを惜しみなく披露。コーラスパートでは情感のあるリードが壮大さに拍車をかけていて素晴らしい。ジャーマンメタルコアならぬジャーマンデスコア。

#3「Hostage to the Empire」も名曲。壮大なシンフォから幕を開け、ガツガツと刻み込む爆走へ。そこからさらにBPMを上げて突っ走る。メタルコア的なコーラスパートが導入されるが、もちろんスクリーム。中盤からはシンフォニック要素が目立ち、雪崩れ込むようにブレイクダウンパートへと落とし込んでいく。展開に無駄が無くただひたすらかっこいい。シンフォとの融合を見事に果たしていて、シンフォニックデスコアとしての完成度が高い。

#4「Our Labour, Our Idol, Our Pride」は序盤から緊張感のある刻みを差し込んでいく。ごく僅かにエレクトロな要素が入るが基本はかなり硬派なデスコアだ。プリミティブなブレイクダウンもゴツくて良いね。

#5「Punish the Poor」はWhitechapelの『Mark of the Blade』期を彷彿とさせられるグルーヴィーなデスコア。ほんのりとフヨフヨシンセで味付けされたコーラスが導入されている。この浮遊感と分かりやすいコーラスはBorn of Osirisっぽさもあるな。

#6「Gospel of the Kingdom」はアグレッシブなデスメタルリフの応酬。ディープなグロウルとミドルスクリーム、ハイピッチをスムーズに繋げていくNilsのパフォーマンスが良い。気付いたらメタルコアっぽいフレーズを入れるようになってるのも面白い。ジャーマンメタルコアとデスコアの合いの子。

#7「Song of Courage」は序盤から疾走。グルーヴとシンフォをまといながら突っ走る。壮大なアレンジで残忍さより荘厳な空気が強い曲。ただ後半は一気にシリアスな空気になっていく。コーラスは相変わらず美しいね。

#8「The Fire Never Lies」はブラストで攻撃性を強め、早口グロウルでまくし立てるWhitechapelリスペクトな曲。攻撃的なドラムに合わせてギターもアグレッシブ。フラッシーなリードギターも曲の良いアクセントになってる。

#9「Anti-Partisan」は序盤はアグレッシブなデスコアなんだけど、中盤に今作でも随一のオーケストレーションが大々的に導入されて、メロウなギターソロが導入されるドラマチックな曲。こういうスケールのデカい曲をどんどん作りたかったんだろうなあ。

#10「Standstill」はピアノから幕を開け、アコースティックなギターが登場。徐々に美しいメロディーを奏でていき、打ち込みなんかで味付けしながら壮大なシンフォを見せつけていくインスト。

#11「Dead End Utopia」では一気に空気が変わってチルいアレンジと壮大なコーラスで幕を開けるBMTHっぽい序盤。急に加速して爆走パートへと突入。そして再びメランコリーなコーラス。これはもはやデスコアではないね。その割に激しめのブレイクダウンを搭載するなどツボはしっかり抑えてる。

#12「Your God is a Tyrant」は初期を彷彿とさせるハンマーリフをメインに据えたデスコアナンバー。前曲の雰囲気はどこにいったのか本作の中でも相当アグレッシブなデスコアを聴かせる。

#13「Benevolent Warfare」は印象的なイントロからWDOBらしいリフ回しで進行。この曲も全体的にシンフォ要素をまとって荘厳な雰囲気。メタルコアなコーラスとデスコア然としたブレイクダウンが上手く合わさってる。聖歌隊なんかも顔を出してラストソングらしい壮大さ。

メタルコア的な情感、シンフォ要素、デスコアを上手くまとめ上げた作品で、ドイツらしさもありつつ数多のサブジャンルを吸収してみせた傑作。

★★★★★





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