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Bonecarver / Evil (2021)〜スラムとテクニカルデスの融合〜

メキシコ出身のデスコアバンド、2021年デビューフル。とは言ってもこのバンド、“人喰いおじいちゃん”ことCannibal Grandpaが改名したんだよね。最近音沙汰無いなと思ってたらそういうことだったのか。

実際にいたシリアルキラーAlbert Fishをテーマに曲作りをしていたバンドだから、やることなくなって改名したんかね。
とはいえしっかりUnique Leaderと契約してちゃっかりステップアップしちゃってるじゃん。
一応設定としてはシリアルキラーの死刑が実行されて改名に至った模様。

サウンド的には少しコミカルなデスコア。ボーカルは結構多彩なスキルを見せてくれる。面白いバンドだなと思ってフィジカル持ってたしこれも買うしかないなあ。

で、改名したけど奇天烈なボーカルやデジタライズされたサウンドはそのまま。前身バンドでは結構壮大にシンフォ要素も入ってたけど、そのへんは控えめになったかな。

その分突発的な爆走やテクニカルなリフが増えて、レーベルカラーがよく反映されたバンドになったと思う。

細やかなデスメタルリフに加えてドラムの突進力も増大してて、緩急の付け方が上手くなった。テクデスっぽい曲もちらほら。

#1「Revolver」は不気味なイントロから悪魔的な咆哮を見せ、テクデスばりの爆走ユニゾンの中、様々な声質でオラつく曲。スラミング要素も残ってるね。

#2「Overtorture」はピッグスクイールに合わせてBPMの高い爆走からミドルグルーヴへと転じる。ノリノリのグルーヴ感はCannibal Grandpaらしいけど、テクニカルデス要素は今までなかったね。全体的に激烈感が増して個人的には良い進化だと思う。コミカルな部分との対比が曲の中で活きるようになってきた。

#3「The Scythe」はちょろっとイントロ垂れ流してすぐ爆走。こんなハイピッチのスクリーム使ってたっけ。下劣ボイスでスラミングパートを彩り再び爆走。メロウなリードが差し込まれてブラックメタル的な爆走を見せる。ボーカルも引きちぎられそうなハイピッチ。なんかあれだね、UKのAcraniaとかそっち系の激烈デスコアになったかもね。ボーカルが相当下劣なんでこの路線はアリ。

#4「Mallevs Maleficarvm」はハイとロウを忙しなく使い分けながらブラスト全開。やっぱ楽器隊全般がすごいテクニカルになってる。これがレーベルの影響なのかは分からないけど。ユーモアが先行していまいち緊張感の無かった過去作品と比べると、エクストリームな音楽としては段違いに良くなってる。まあ前作とかも彼ら特有のコミカルさがあって好きだったんだけどね。

#5「Wormhole」はラフなバッキングからスラムパートへと移行。リズム隊の健闘によって攻撃性は維持されてる。スラミングデスメタルにテクデスを持ってくるのは新しいかもしれないね。

#6「Moon Maniac」は複雑なギターメロディーとブラストが交錯してる。ボーカルは下劣ボイス意外にも真っ当なスクリームをする場面があったりする。派手なシュレッドを聴かせたり要所で工夫は感じる。

#7「Nest of Traitors」はフックのあるテクニカルリフと刻みによるグルーヴがメインのナンバー。テクデス系にリフのフックとか求めるのは難儀な話かもしれんけど、やっぱそっちのが聴いてて楽しいんだよ。ハイピッチとグロウル、ガテラルの行き来がスムーズで良いね。下劣ボイスを最大限に活かしたブレイクダウンも最後に搭載。

#8「Hound Pound」は2分の中で猛烈な爆走を見せるカオティックなナンバー。この曲の攻撃性は凄まじく聴いていて圧巻。アルバム後半にかけて勢い増してきた。

#9「The Blacksmith's Massacre」はノイジーなギターと暴れ回るドラミングからスラミングパートへと落とし込んでいく曲。後半のダウナーな落とし込みもアンビエントな空気があって他の曲とは空気が違う。

#10「Evil」はメランコリックなピアノのイントロからブラックメタル由来の高音メロディーに合わせてパタパタと爆走、細かい刻みをガツガツ入れ込んで再び爆走。一瞬の静寂からさらに爆走。面白い。アルバム後半で一気に勢いを取り戻したな。

中盤で少し中弛みした感じはあるけど、スタイルチェンジは良い方向にいってると思う。

過去作にあったようなユーモアをもう少しブレンド出来たら化けるかもね。

★★★★☆

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