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The Red Chord / Fed Through The Teeth Machine (2009)〜デスコアの始祖であり異端児〜

01. Demoralizer
02. Hour Of Rats
03. Hymns And Crippled Anthems
04. Embarrassment Legacy
05. Tales Of Martyrs And Disappearing Acts
06. Floating Through The Vein
07. Ingest The Ash
08. One Robot To Another
09. Mouthful Of Precious Stones
10. The Ugliest Truth
11. Face Area Solution
12. Sleepless Nights In The Compound

マサチューセッツ州出身、グラインドコアバンドの通算4作目。

メタルコア、デスコア、マスコア、カオティックハードコア等々、ジャンルの細分化が著しい昨今、1999年から活動しているにも関わらず、彼らを表現するジャンルでピンと来るものは少ない。

冒頭ではグラインドコアと表現させてもらったが、これも正直ハマっていない感がある。The Red Chordはデビューした当初からかなりの異端児だった。

ConvergeやThe Dillinger Escape Planなんかと比べるとデスメタル要素が強いし、かといって他のデスコア勢と同じかと言われればそうでもない。
恐らく1番近い形容はBetween the buried and Meの初期作品から構築美を取り除き、ぶっ飛んだ展開に絞った、そんな感じだろうか。

そんなバンドが、何気に2nd以降しっかりと日本盤化されていたという事実は驚きだ。

日本ではぶっちゃけウケそうにない感じなんだけど、実はBetween the Buried and Meとともに来日を果たしている(それ以前にも来日経験あり)。今思えばやばすぎるメンツだよな。行けなかったことが悔やまれる。

彼らを知ったのは2ndアルバムの『Clients』(2005)から。とは言っても実際聴いたのは2007年くらい、デスコアムーブメントが来つつあったあの頃だ。

最初聴いた時は正直“なんじゃこりゃ”状態だった記憶がある。バカテク楽器隊が縦横無尽に駆け巡り、ぶっ飛んだ展開の連続でカオスに突き落とす。

当時キッズだった俺はこの“得体の知れない何か”をまともに聴き倒す耳は残念ながら持ち合わせてなかったと思う。
当時はポストハードコアもメタルコアもデスコアも隆盛期で、分かりやすくかっけえバンド達がひしめいてたからね。

ただ、ある程度時間を置いて聴いてみると、彼らなりのエクストリームな音像が少しずつ楽しめるようになった。人間ってのは恐ろしいもんで、慣れるとなんでも聴けちゃうんだよ。

そんな中でも、事実上ラストアルバムになった本作はかなり分かりやすい作品だと思う。シーンのことを意識したかは定かではないけど、ビートダウンが幾分か分かりやすくなった。

国内盤のライナーを見ると、本作では意図的に多少の分かりやすさとメロディーを取り入れたことがインタビュー内容から明らかになる。

ただそれでも曲展開は異常な激しさに満ち満ちていて、相変わらず狂気が渦巻くバカテク変態野郎どもだ。

#1「Demoralizer」は不穏なイントロからブラストで一気に爆走、テンポチェンジを繰り返しながらGuyが吠えまくる。彼は決して巧いタイプのボーカルではないけど、気迫で押し切るパワー系なのでよくマッチしてると思う。

#2「Hour Of Rats」もいきなりブラスト、カオティックなギターに合わせて走りまくる。中盤には結構メロウなリードが差し込まれたり確かに新基軸を感じる曲だ。だが全体的にテンポが著しく早いので気付いたらもう別のことやってるんだよな。

#3「Hymns And Crippled Anthems」は複雑怪奇なギターが相変わらず暴れ回ってるけど、時折フックのある分かりやすいフレーズを挟んでくれる。後半のノイズにまみれた気怠いカオスはNorma Jeanっぽいね。

続く#4「Embarrassment Legacy」はテンポチェンジがスムーズで比較的分かりやすい曲。グルーヴィーなパートと爆走が淀みなくミックス出来たことで作品全体の持つ雰囲気は分かりやすくなったよね。まあ彼らにしては、っていうことだけどね。

#5「Tales Of Martyrs And Disappearing Acts」はデスメタリックなリフと疾走感で見せてグルーヴィーな落としでサクッと終わる短尺曲。

#6「Floating Through The Vein」はアルバムでもお気に入りの曲で、緩急をものすごい速さで切り替えるリズム隊、フックのあるギターもさらっと主張してくるこれぞThe Red Chordって感じ。

#7「Ingest The Ash」は掻き鳴らすギターとブリブリのベースラインが絡むオサレなナンバー、かと思いきやブラックメタルみたいな絶叫が唐突に差し込まれてもう意味不明。

#8「One Robot To Another」も序盤からフルスロットルで吠える吠える。グロウルを見せたかと思えばテンポチェンジ、そんでまた爆走。

#9「Mouthful Of Precious Stones」は彼らにしては珍しくミドルテンポでザクザク刻む分かりやすい曲。#4とかこの曲ぐらいじゃないかな普通についていける曲って。音作りも立体的で、圧倒的なカオスの中にも構成や展開を意識して4分くらいの楽曲にすることも出来るんだな。後半はもはやメロディーが良い。

#10「The Ugliest Truth」では爆走こそするものの、スラッシーなギターソロをちょこっと挟むあたりがセンスの良さを感じるね。

#11「Face Area Solution」は2分と短いトラックなんだけど、速→遅、速→遅というシフトチェンジを凝縮してお届け。

ラストソング#12「Sleepless Nights In The Compound」は5分弱のカオティックメタルコアナンバー。

デスコアの始祖とも呼べる彼らだけど、やってることはカオスをぶちまける変態バカテクデスメタル+ハードコアって感じで、シーンの中でもやっぱり異端児すぎる。

ただ本作は彼らの中でもギリギリ分かりやすい部類に入ってるアルバムだと思うので、聴くならまずはこのアルバムからのが良い気がする。

★★★★☆


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