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Katalepsy / Terra Mortuus Est (2020)〜ブルデスからグルーヴメタルへ〜

ロシア産ブルデスバンド、4年振り通算3枚目のフルアルバム。ボートラを追加収録してリイシューされた『Musick Brings Insure』を1枚目とするなら4枚目のフルアルバムになるかな。

昨年9月、このアルバムまで参加をしていたギタリストDmitryが病気で亡くなってしまっています。R.I.P

初期はゴボゴボゲロゲロのブルデスをやっていたバンドだけど、作品を追う毎にどんどん筋肉質に。昨今はマッシブなグルーヴメタルへと変貌。

今作でもその方向性は継続。ボーカルは下水道ボイスやガテラルといったスタイルをほとんど捨てて、漢気溢れる咆哮がメインになってる。要は筋肉マッチョ系のデスコアバンドになってるのよね。こういう変化を辿るバンドは珍しい。

ただ、ブルデスの持つ残虐性や前作までにあったようなテクニカルな部分はそれなりに引き継いでるので、これはこれでアリ。

#1「Closer Than Flesh」はリズム面こそスラムっぽさはあれど、バキバキのベースラインとマッチョな咆哮でグルーヴィーに進行。ボーカルは少し一本調子になった感じはするけど、その分各パートのテクニカルな部分がスリリングなんだよね。唐突な爆走やテクデスっぽく唸るギター、タイトなリズム隊。

#2「Night of Eden」は縦ノリ感の強いグルーヴをメインに進行。これは完全にデスコアだね。ただブルデス上がりなだけあってサウンドは結構エグい。シンフォニック要素とかは皆無でギターのノイズやバキバキのベースとかを駆使しながらテクい側面をアピールする感じ。このへんの姿勢は硬派で良いと思う。

#3「Those Who Rot the Souls」はスラミングデスメタルのグルーヴ特化バージョン。端々にブルデス要素は感じるけど、ボーカルの咆哮が思いっきりハードコア。むさ苦しい咆哮と縦ノリでバウンスしながら、意外にも緻密な音作りを見せる楽器陣のギャップが面白い。ブルデスバンドがハードコアに寄るとこんな感じになるんだろうなあ。ラストはスラムパートや下水道ボイスも少しだけ披露してくれる。

#4「The God of Grave」はテクニカルなリフと爆走がメインのナンバー。よく聴いてるとすごいテクい。シンプルにハードコアっぽさを出しながら、バックではテクニカルな感じ、このギャップがいい。

#5「Terra Mortuus Est」は一層ハードコア色を強めて漢クサい咆哮オンリーなんだけど、楽器隊は完全にテクニカルデスメタル。確かな演奏技術があるけど敢えてシンプルに見せていくスタイル。その中でもこの曲は各パートがゴリゴリに頑張ってるので聴いていて最高に気持ちが良い。

#6「Kings Of The Underground」はノリノリのハードコアソング。後半で“おっ”と思うソロが入るけど本当に一瞬だけ。ほとんどグルーヴで押し切る。

#7「Deep Down Madness」は超絶テクニカルなイントロからそのままテクデスに突入。相変わらずボーカルは一本調子な咆哮がメインだけどその分楽器隊がトリッキー。

#8「No Rest No Peace」は本作のグルーヴメタル+テクニカルデスっていう変わったサウンドメイクを象徴するナンバー。端々にテクいフレーズや爆走を入れつつも非常に分かりやすいサウンド。ボーカルも下劣な声質をそこそこ披露してくれる。

#9「From the Dark Past(They Come)」はかなりグチャッとしたテクニカルデスメタル。耳をつん裂くようなノイズや下水道ボイスを駆使しながらブルータルに攻める。目紛しく展開が変わっていく。

#10「Neonomicon Ⅲ」は初っ端から汚い声でヴィーヴィーと叫んで初期を彷彿とさせる下劣さ!オラついたスラムも見せるし爆走もするし良いね。でも楽器隊はやっぱりテクニカル。後半は壮大に展開していくね。

#11「Land Of Million Crosses」はからっとしたギターにウィスパーボイスでひそひそ、そこからは実にドラマチックに展開していく長尺曲。

ちょっとどの層を狙ってるのかは分からないけど、
確かな演奏技術を持った集団ということは間違いないんだよね。

前作より更にブルデス感は薄れたので評価が難しい。個人的にはなかなかいないタイプのバンドなので好きだよ。

てかなんで2019年のシングル「Beast of Nod」を収録してくれなかったんだろう。ボートラ扱いとかでもいいから入れてほしかったなあ。

★★★★★



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