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Veil of Maya / False Idol (2017)

シカゴ出身プログレッシブメタルコアバンド、2年振り通算6枚目のフルアルバム。っても5年前だけどね。

新ボーカルLukas Magyarが加入して2作目。彼が加入するまではテクニカル系のデスコアサウンドだったけど、歌えて叫べるボーカルを獲得したことで音楽性が変化。

それこそペリのSpencer Soteloとかを思わせる清涼感のあるクリーンを操るLukasは、このバンドをことごとく変えてしまった。これをセルアウトと取るか進化と受け止めるかはリスナー次第だろうね。

ひとつ言えるのは、メロディーにおいては取って付けたような感じはせず、スムーズな構成と確かなキャッチー性を持ってること。実際Lukas加入後のVeil of Mayaは人気にさらに火が付いた。
意図的にメインストリームに押し上げたのは間違いないと思う。

そんな新生Veil of Maya、バンドサウンド以外にもシンセやオーケストレーションをふんだんに用いて、実にモダンな進化を見せている。

クリーンボーカル導入による軟化はやはり顕著。

明瞭なコーラスを引き立たせるための、アグレッシブなパートとして機能してくるはずであるテクニカルな音像が全体を通して弱く聞こえる。

これは単純にフックが無いとかそういう問題じゃなく、Lukasの声質がクリーン以外も優等生的なスクリームで綺麗すぎるところや、コンパクトな曲の中で展開を二転三転させていた頃とは違い、曲全体がコーラス前提の淡白な作りになっているからだろう。

ここまで大胆な変化を経ても、端々にらしさを残せているのはある意味かなり凄いことではあるね。

30秒ほどのインスト#1Lull」からリードトラック#2Fracture」へ。3rdの頃のような性急なリフ回しで暴走する序盤は素晴らしい。すぐさまコーラスへと切り替えると思いきや再びアグレッシブなパートへと持ち込むシニカルな展開も良いね。ゆったりとしたコーラスから煌びやかにラストへと向かっていく。怪しいメロディーをまとったブレイクダウンも面白い。

#3Doublespeak」は新しいVeil of Mayaを象徴するクリーンが主体のプログレッシブメタルコア。Lukasの歌唱は清涼感抜群で、こういったスタイルに抵抗が無ければまさに最適解と呼べるボーカルだ。ここまで大胆なクリーンの導入は、前作の反響を得て確信を持って制作されたと思われる。

#4Overthrow」はコロコロと転がるテクニカルリフと跳ねるドラミングに合わせて疾走。本作でも随一のコーラスはそれ自体にフックがある。
幾分か軽い音作りが特徴だった過去の彼らはそこには無く、攻撃的なパートでは音圧を上げてきている。これはベーシストDanny Hauser、ドラムのSam Applebaumの貢献が大きいだろう。

#5Whistleblower」はカオティックなイントロからバウンシーに展開。妖しいメロディー使いは今作の傾向でもある。その割に整頓された実に分かりやすい曲だ。

#6Echo Chamber」はアンセミックなクリーンから一気に爆走パートへと転じていく攻撃的なナンバー。クリーンパートはあるが全体を通して緊張感がある。Lucasはクリーンだけじゃなく、場面に応じてスクリームも色々と使い分けてる。この表現力の高さはプラスポイントだね。

#7Pool Spray」は結構真っ当にDjentをする曲。爆走は控えめでじっとりとしたグルーヴをメインに据えている。中盤からメロウなパートへと持ち込み煌びやかなクリーンを披露。

#8Graymail」はギュルギュルと唸るギターや転調を駆使して攻撃的に攻める。メロディーはそれなりに取り入れられており、ややパンチに欠けるのも事実だろう。このバランス感をどう評価すべきかとても難しい。

#9Manichee」はPeripheryがアルバム中盤で取り入れるような爽やかなDjentソング。ダラダラ間延びすることなくコンパクトにまとめられているのは良いね。

#10Citadel」も淡いメロディーをまとったプログレッシブ系ポストハードコア。序盤の妖しいメロディー使いから一転、アルバム後半は爽やかな雰囲気。ピアノを大胆に取り入れた新基軸の曲ということになるだろう。

#11Follow Me」は本作でも屈指のブルータリティーを誇るDjentナンバー。ここぞで主張するシンセは少なからず同レーベルのBorn of Osirisからの影響が垣間見える。

#12Tyrant」はブヨブヨのシンセを全体的にまとったプログレッシブメタルコア。呪詛のようなボーカルワークが取り入れられたり実験的なニュアンスが強い。

#13Livestream」は本作の総括的な曲。フックのあるテクニカルリフとバウンス、アンセミックな歌メロやシンセフィーチャーと、新生Veil of Mayaの魅力を余すことなく詰め込んだ曲。


前作に増してさらに攻撃性は減退。あとは「Mikasa」みたいな圧倒的なキラーチューンが不在なのも痛いところだろうか。

この作品以降、バンドは1年に1曲とかそんなペースでポツポツと新曲をリリースしてなんとか繋いでる印象だけど、既にアルバムリリースから5年経過しようとしているので、次作はかなりの勝負作になるだろう。

ただここまでリリースしているシングルはどれも良曲なので、期待はかなりしてるよ。

★★★★☆




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