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The Color Morale / Desolate Divine(2016)〜叙情系ポストハードコアの秀作〜

イリノイ出身ポストハードコア〜メタルコアバンドの通算5枚目のフルアルバム。この作品を機に活動休止を発表したけど、どうやら最近動き出してるみたいだね。

2009年デビューと聞くと、どうしても00年代後半にかけて猛烈に盛り上がった蟹コアならぬクラブコア的な音を想像するんだけど、このバンドは当時異色だったように思う。

叙情系のメタルコア、For The Fallen DreamsやThe Ghost Insideといったメロディックハードコアを軸に、清涼感のあるクリーンと厳ついグロウルっていうありそうでなかったスタイルを提示したバンドで、前作にあたる『Hold On Pain Ends』はビルボード28位まで上り詰めたんだよね。

ボーカリストGarret Rappはグロウルや感情を振り絞るようなスクリーム、エモい歌唱までこなす表現力の高さが売りで、しばしば他のバンドの客演も務めていたと思う。

3rd『Know Hope』以降はGarretの歌唱によりフォーカスした作品をリリースするようになって、その一つの到達点がこの『Desolate Divine』。

地声混じりのスクリームは喉に相当負担がかかっていたのか本作ではほとんど封印してて、初期のグロウルとクリーンという組み合わせに戻ってるのが大きな違い。

なので作風的には前作や前々作を踏襲しつつも、歌唱スタイルは初期に近い。どっちも好きだけど個人的には今の方が好きかな。グロウルとハイトーンの落差はやっぱ聴いていて気持ちが良い。

エレクトロ要素もふんだんに用いるんだけど、独特の哀愁を帯びていて、チャラさみたいなものは感じない。そこがこのバンドの大きな魅力だよね。

#1「Lonesome Soul」は野太いベースラインとキラキラしたギターに合わせてグロウルとクリーンを交互に聴かせてサビメロへと繋げる王道ナンバー。このクリーンの哀愁感がやべえのよな。

#2「Clip Paper Wings」はチルいエレクトロなイントロからミドルテンポでゆったり聴かせる曲。中盤からはグロウルも顔を覗かせる。電子音によるメロディーがキモになってる曲ではあるんだけど、後半はしっかりバンドサウンドが主張するのもよいね。

#3「Walls」は叙情的なフレーズやバンドサウンドをメインにGarretが歌い上げる。要所をグロウルで引き締める感じは1stとかに近いね。でもメロディーセンスは今のが格段に上。後半のブレイクダウンとかかなりスリリング。

その勢いのままバウンシーなグルーヴを聴かせる#4「Trail Of Blood」。クリーンがメインの楽曲だけど、独特の哀愁を感じる素晴らしい曲。

雰囲気を変えて安らかな空気の漂う#7「Version Of Me」。と思いきや、1分ほどで凶悪なグロウルを聴かせ、ピアノが絡みつくコーラスへと移行。この曲もメロディーが最高に良いね。

#8「Home Bittersweet Home」は徐々にグルーヴを効かせていき、しっとりとした歌唱をメインにしつつ要所でグロウル。後半のスポークンパートを挟んでシンガロングに繋げていくスタイルは叙情系っぽいね。

#9「Misery Hates Company」はアップテンポなバースからエモメロ全開のコーラスに繋げる甘酸っぱい曲。中盤ではややテクニカルなパートも垣間見えて、分離の良いプログレッシブなポストハードコアサウンドが楽しめる。

#10「Perfect Strangers」はオーケストレーションや打ち込みを導入、次第にカラッとしたギターや太めのベースラインが主張し始め、アンセミックな歌メロに突入。この曲最高に良いね。

#11「Broken Vessel」はクリーンがメインの楽曲ながら楽器隊はかなりテクニカル。メロディーがシンプルな分バンドサウンドで盛り上げてくれるバランスの良さ。

#12「Fauxtographic Memory」は壮大なオーケストレーションのイントロからアッパーな展開へ。初期の頃ならグロウルだったろうけど、本作はあくまでクリーンの歌唱をメインに据えてるね。彼らの特徴でもあるけど、序盤のバースからコーラスを一回挟むとサウンドも少しずつ変化させるんだよね。単調になりがちな部分を楽器隊のアレンジで飽きさせない工夫が感じられる。

#13「Keep Me In My Body」は叙情的なフレーズと本作最高のメロディーを聴かせるキラーチューン。ラストにこれを持ってきたか。

前作までの地声混じりのスクリームは鳴りを潜め、要所でグロウルを挟むスタイルへと回帰、その上でバンドサウンドはエレクトロ要素やオーケストレーションに負けないよう様々な工夫を感じる。真っ当に進化した結果、初期2作へのリスペクトと新しいサウンドの融合を見事に果たした快作。

これで活動休止はもったいないわ。

★★★★★



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