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Vulvodynia / Praenuntius Infiniti (2021)〜ブルデスサイドから最先端の音への挑戦〜


南アフリカ出身ブルータルデスメタルバンド、2年振り通算5枚目のフルアルバム。

ついにというか、やっとというか、Unique Leader Recordsに移籍しての新作。

南アフリカデスメタルとして異例の大人気を博するVulvodynia。
ここ日本でも知名度はそれなりに高いはず。

ボーカルのDuncan Bentleyは各所でフィーチャーしまくったりサイドプロジェクトやったり大忙し。グロウルやガテラルはもちろん、下水道ボイスやら吐き捨て系やら、ハーコーちっくな咆哮やらかなりのバリエーション持ってる。そういう意味ではIngestedのJasonとかを彷彿とさせられる。

サウンド的には残忍なデスメタルリフにゴボゴボしたボーカルを被せてスラムパートを搭載したりブレイクダウンしたり、ブルデスバンドだけど結構デスコア的であったりする。やけにサウンドプロダクションが良いってのがデスコア感を強めてる気がするけど。

めちゃくちゃテクニカルとかそういう音ではなくて、陰湿なメロディーだったり残忍なリフをじっとりと聴かせて、奈落の底に突き落としていくようなそういう気持ちの悪い音楽。

ただ明らかに凡百のブルデスバンドと比べると音が立体的で曲も印象に残るものが多い。テクニカルなプレイは出来るけど、それよりもシンプルにブルデスの残虐性を体感出来る様に工夫している感じがする。

前作はそういったシンプルさが際立った故に、ブルデスサイドからのデスコアへの回答みたいな作品になってた。

で、今作。めっちゃテクニカルになってるやん。

完全に前言撤回である。

相変わらず陰湿なメロディーやブルデス由来の残忍な刻みは顕在だけど、Unique Leaderに移籍したのが影響したのか、本作は過去最高にピロってる。不協和音的なフレーズや気が触れたようなソロが増えて一層不気味さが増した。
あと明らかにメロディーが増えた。キャッチーだけどブルータルという、Vulvodyniaならではの魅力を底上げしたような感じで、かなり正当に進化していると思う。これはもうシーン的にも無視出来ないだろうね。

#1「Intro」はいつも通り不気味なイントロ。

#2「The Shadowy Descent of Gaia」はギャリギャリと唸るギターや刻みやらをごちゃ混ぜにしてブルデスに仕上げたナンバー。地味にこのバンド3人もギターいるからね。相変わらずブルデスにしてはクリアな音だけど、なんとも表現し難い残忍な雰囲気は顕在。この界隈でこれだけの個性を出せるってのはかなりすごいことなんだよな。

#3「Eternal Wasteland of Galaxies」はコロコロと転がるリフに早口グロウルでまくし立て、鬱々としたメロディーを絡めながらスラミングしていく。本作は前作までのグロ系ブルデスから、少しスペーシーな空気になったかも。シリアルキラーからエイリアンになった感じ。なんだそれ?でもキラーチューン。

#4「Praenuntius Ascends」は元Pathologyが2人も客演しちゃってるネタ曲。Jon HuberとMatti WayとDuncan Bentleyってもう何がなんだか分からない。不協和音をガチャガチャと混ぜながらもちゃんとスラミングデスメタルはやってるね。

#5「Banquet of Enigmatic Horrors, Pt. 1:Terror」は前作でもあった組曲タイプのナンバー。普通にイントロのメロディーが良くてちょっと笑っちゃう。相変わらずギョンギョンするVulvodyniaのあの音が曲を支配していく。この音作りだけで猛烈な個性になってるんだよな。最後のテクニカルかつスペーシーなソロも良いね。

#6は「Pt. 2: Agony」で、これも印象的なメロディーからフェードインする。ギョンギョンギョギョギョンッっていういつもの刻みから人間離れした早口グロウルを見せるのはArchspireのOliver。こんな大御所が客演してるのほんとやばいね。このバンドの横のつながりってどうなってるのまじで。

#7「Whispers Of Calamity」はスペーシーなインスト曲で流れるように#8「The Seven Judges」に繋げていく。ダウナーなメロディーから超絶エピックなスラムを見せてその後に爆走。テクニカルなギターがばんばん組み込まれていく。

#9「Ravenous Revolution」はギョギョギョギョズンズンズンズンと気持ちよさそうに刻みつつ高音ギターやほのかに被せるシンセがスペーシーな空気を倍増。スラムパートではDuncanの七色の声が入り乱れる。

#10「A Cosmic Betrayal」は本作の傾向を顕著に表したナンバー。前作のようなシンプルなブルデスコアにノイジーなギターやバウンスパートを取り入れてピーピーギャーギャーと喚く。で、時折Rings of Saturnのようなピロギターが曲を彩る。前までもこういう手法はやってたけど、本作が1番顕著なんじゃないかな。

#11「The War Within」はやや不安定なグルーヴをまとったデスコアナンバー。Korpseの新譜ではノイジー系のギターが多すぎてやや疲れてしまったんだけど、取り入れ方はこのバンドのが上手いな。Heart of CowardのJamieが歌うことでいきなりメタルコアっぽくなったと思ったらハイパーテクニカルモードに突入してまじでこの曲面白い。1番好きかも。

#12「Forging the Deity Crusher」はDisentombのJordanがフィーチャー。この曲はテクデスばりにテクニカルな音像が続く。要するにこのバンド、ブルデスもスラミングデスもテクデスもデスコアも飲み込んで、最先端の音をやりたいんだなって。少なくともその実践は今のところ上手くいってると思う。

#13「Funeral Ov the Gods」は残虐な刻みがメインのブルデスナンバー。と思ったらブラックメタルみたいな爆走を見せる。やはりこのバンド、意図的にこういうアングラ界隈のサブジャンルを全部飲み込もうとしてる。Duncanってこんな悲痛なハイピッチ使えるんだ。何種類出せるんだろうな。

#14「Deicidal Finality」はクリーンなイントロからスペーシーで壮大なスラムへ展開というよく分からないコンセプト。ボーカルもヤケクソ気味で面白い。気味の悪いメロディーを纏いながら(壮大に)ラストへと向かっていく。

うーん。このバンドはやはり凄いかもしれないなあ。ブルデス、スラミングデスサイドから、最先端の音を鳴らしてやりたいっていう気概を感じるね。

プロモーション次第だと思うけど、俄然注目度はこれからも上がっていくことでしょう。

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