見出し画像

Within the Ruins / Black Heart(2020)〜超絶技巧派集団、新ボーカルを迎えた意欲作〜

マサチューセッツ出身プログレッシブメタルコア〜デスコアバンド、3年振り通算6枚目のフルアルバム。

多弦テクニカルギタリストJoe Cocchi率いる技巧派の新作。とは言っても2年前だけど。

音楽性は少しずつ変化しているものの、ベースとなるのはJoeの超絶テクニカルなピロピロギターで攻め立てるアグレッシブなプログレメタルコア。
ゲームミュージックのようにピロピロテロテロと弾きまくるギター、随所にDjent的な刻みやグルーヴを織り交ぜてメリハリを付けるスタイルはデビュー当初から変わらず。

前作『Halfway Human』でクリーンボーカルの導入が始まったけど、元々デスコアにしては音が軽いし、ギターメロディーもそこら中に散りばめられているので、気にはならないかな。メロディーの一端をいくらかクリーンボーカルが引き受けた程度。

スペーシーなシュレッドはRings of Saturnのような空気感があるけど、あそこまでデスコアしてはいないので意外と懐の広さはあるよね。

いずれにせよこのスタイルはWithin the Ruinsの専売特許みたいなところがあって、猛烈な個性がある。似たようなバンドもパッとは思いつかない。そういうのってシーンにおいてはかなり重要で、容易にパクられないスタイルは大きな強みだと思う。

ちなみに今作は元Silence the MessengerのSteve Tinnonがボーカルとして加わってます。ミドルのスクリームに加えてハイピッチを結構多用するタイプ。個人的には長いことボーカルを務めていたTimが好きだったんだけど、健康面での問題で仕方なく脱退という感じ。素敵なセカンドライフがあることを祈ってるZE。

で、今作のお話。基本的には前作の流れを踏襲していて、クリーンがチョロっと入る。相変わらずアホみたいにテクニカルなギターは健在で、ここまでピロってるともはや別の楽器なんじゃないかと思うほど。変拍子や転調を巧みに操りながら、やかましく展開していく。
ただ、前作より全体的に音がクリアになって、荒さみたいなものが無くなった。良い意味では洗練されたんだけど、裏を返せばアグレッションの減退に繋がってる部分がある。そこにクリーンの導入があるから、さらにマイルドになった印象。まあベースとなる部分は一緒なんで、好みの問題だな。

#1「Domination」はスペーシーなギターメロから一気に爆走をかましていく。で、お決まりのガガッガガガッっとした刻みからテクニカルパートへと移行。完全な通常運行。新機軸のクリーンがぼんやりと取り入れられるもののほんのアクセント。後半のリードは色彩豊かで良い感じ。

#2「Deliverance」はDjentグルーヴなイントロからテクニカルなメロディーに爆走を乗せ、やかましく転調を繰り返す。新ボーカルSteveもハイピッチを多用しながらアグレッシヴに叫び倒す。ノリの良さとテクニカルな側面を両立した良い曲。

#3「Black Heart」はテクニカルなシュレッドにキョルッキョルッwwっと素っ頓狂なサウンドが入り混じる。この奇怪な爆走こそWithin the Ruinsの最大の魅力であり個性。クリーンの導入があるけど、可もなく不可もなくといった感じで今後の伸び代に期待かな。曲自体はかなりアグレッシブなんだけど、攻撃性の減退に繋がってしまっているのが少し残念。

#4「Open Wounds」はかなりアッパーな曲で、トリッキーなプレイに終始叩きまくりのドラミングが音圧を上げてる。ギターのピロ具合とバランスを取るためにリズム隊がかなり健闘している。個人的にはこういう曲をもう少し作ってほしいよね。

#6「Eighty Sixed」はボーカル無しのインスト曲。彼ら定番の“Ataxiaシリーズ”以外でもインスト突っ込んできたね。これが今までのWithin the Ruins感が強く、グルーヴとテクニカルギターのせめぎ合いを感じられてすごい良い。ピロってるだけじゃなくギターがメロディーも上手く作り出せてる。なんでこれボーカル無いんだ。

#7「Devil in Me」は唸るグルーヴとミドルスクリームをメインに据え、高音ギターは控えめの重心が低い曲。かと思いきやサビメロ導入。でも中盤のギターソロはかなりスリリングだし、そこからの爆走や歌い回しもアグレッシブ。この曲は新しい路線を上手くまとめられたんじゃないかな。クリーンのメロウな甘さをそれ以外の攻撃性でしっかり補ってる。

#8「Hollow」は前曲の流れを汲み重心が低め。相変わらずテクニカルではあるんだけど、低音弦のパートが多いため必然的に攻撃性は高まる。しかもグルーヴパートっぽさが無くドラムはほとんど叩きっぱなし。ここまでアグレッションを高めれば当然ブレイクダウンも映えてくる。めっちゃ良いじゃん。

#9「Outsider」はクサめのイントロからギョルンギョルンのグルーヴと変拍子で攻める。ここまではいつも通りだけど、クリーンがさらっと導入される。今作では1番メロディーが良いし、これは少し可能性感じるね。

#10「RCKLSS」は今までに無かったドラマチックな曲。新ボーカルSteveの表現力も良いし、音数で攻めるWIthin the Ruinsが意図的にシンプルにしてる。ギターソロも本作の中では1番好き。まあそれ以外のパートがシンプルな分、ソロが映えて聴こえるってのはあるかもだけど。

#11「Ataxia Ⅴ」はシリーズ恒例のインストナンバー。Joe Cocchiのアイデアを詰め込みまくった曲で、いつも通りのテクニカルギターやオリエンタルな演奏まで楽しめる。こういう奇をてらうキワどいやつを普通の楽曲にしても良い気がするけどね。

個人的には前作のが良かったかな。やっぱりアグレッションの減退が結構きつくて、その点Timのボーカルはかなり貢献していたんだなと改めて実感。まあミックスとかにもよるのかもしれないけど、もう少し激烈感が欲しくなっちゃうかな。

★★★★☆


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?