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Thy Art Is Murder / The Adversary (2010)〜オージーデスコア秘宝の原点〜

オーストラリア出身デスコアバンドのデビューアルバム。
現ボーカルChris "CJ" McMahonが加入して、Skull and Bones Recordsからリリースされた本作。

デスコアレジェンドと呼べるThy Art Is Murderの原点になってる作品なんだけど、元々のプレス数の少なさ、そして今現在の爆発的な人気に伴い、価格が異常に高騰。Discogでは軒並み数万円で取引されるまさに幻のアルバム。

確か同時期に2ndアルバムをリリースしたThe Red Shoreとともにツアーを回っていた。しかもDespised Iconを引き連れて。ヤバすぎるメンツ。

彼らが本格的に注目されるのは次作『Hate』からなんだけど、この作品も素晴らしい出来栄え。

この頃から既にCJのグロウルは凄かったんだなあ。チャラさを感じさせない脳筋グロウルはたまらなく良いよね。

#1「Unholy Sermons」は不気味なSEのイントロで#2「Soldiers Of Immoratality」がリードトラック。プリミティブなデスメタルリフによる爆走からスタートする曲で、早速CJの脳筋グロウルが炸裂。冷徹でチャラさを感じない。刻み一辺倒にならずテクニカルに小気味良いリフを連発していくから聞いていてとても心地よい。チャぐい刻みや音質面ではやはり荒さがあるけど、リリースが2010年ということを考えればかなり高水準。

#3「Laceration Penetration」はチャグい刻みによるイントロから爆走へ。イントロのシンプルさに反してテクいリフやフラッシーなリードがさらっと導入されていく。もう今は聴くことがなくなってしまったCJの下水道ボイスが聴ける。

#4「Furnace Of Hate」はツインギターによるトリッキーなプレイと手数足数で攻めるLee Stantonの突進力が上手いこと融合。唐突にビートダウンして再び爆走。この頃から緩急の付け方は巧みでもったいぶったわざとらしさを感じない。当時はオラついたブレイクダウンが主流だったことを考えるとかなり硬派だよな。

#5「Flesh Oracle」はアルバムの中でもかなり好きな曲。爆発的なドラムとツインギターによるデスメタルリフのハモりがたまらなくかっこいい。ファウンダーギタリストSean Delanderのセンスの良さはもう初期からだったんだな。なお歌詞についてはブルデスにありがちなグロ系。

タイトルトラック#6「The Adversary」は残虐性の高いリフでゴリゴリと攻める。このスムーズでありながら残虐性があるという、ある種矛盾している攻撃性がザイの大きな魅力でもあるよね。これはLee Stantonの正確無比なドラミングと、アイデアを小出しにしないその他サウンドの潔さが大きく関係していると思う。まあ後任のJesse Beahlerもとんでもないドラマーだけど。

#7「Decrepit Purification」はハイピッチとグロウルをダブルでレコーディングする、00年代っぽいデスコアスタイル。地味にこの曲のリフがかっこいい。曲全体も圧倒的なスピード感があって最高。後半のシュレッドもいいね。かなり好き。デスコアのお手本みたいなスタイル。

#8「The False Prophet」はコロコロと転がるようなリフが印象的な曲で、その後もアグレッションを保ち続けたままひたすら爆走する。陰湿なメロディー要素とかって『Holy War』あたりから積極的に使うようになったから、今作はそれが無い分本当に脳筋デスコアって感じ。

#9「Engineering The Antichrist」はテクデスっぽい音作りで今作の中では1番テクニカル。メロディーらしきものが入るけど、本当に一瞬だけ。ボーカルも下水道ボイスを炸裂させてめちゃくちゃブルータル。最近の作品では絶対聞けない種類の曲。でも何故か後半やけにメロい。

インスト#10「Requiem」を挟んでラストトラック#11「Cowards Throne」へ。大げさなイントロからスラミングブルデスのごときブルドーザーパートへ。不安定に唸るギターからいつも通りの爆走スタイル。でも要所のテンポダウンがスラミングデスメタルなんだよね。

いや、非常にかっこいいですよ。やっぱり次作の『Hate』から人気が炸裂して、Nuclear Blastの目に止まるのも納得できる。

大体この手のバンドって有名になってある程度枚数出すと、初期作のリダックス盤とか出すんだけどね。ザイは全くその気が無いみたい。

そのせいでこの作品とEPはマニアの間で今も変わらずよだれ必須のアイテムになっている。

★★★★☆




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