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仕事と友情の交差点-Daryl Hall with Todd Rundgren @東京ガーデンシアター 2023.11.23

私には友達が居ません。

具体的には、中学生の頃には何人かの友達がいたように思いますが、就職してからは主な人間関係が仕事関係の人たちで構成され、それなりに親しくなった相手も「ちょっと深めの知人」に過ぎませんでした。

これらの知人たちは、仕事に関することや将来の展望、上司の不満などを共有する仕事仲間であり、一定の期間は濃密な時間を共有していました。
しかし、職場が変わると自然と疎遠になり、私が内向的な性格で他人と連絡を取ることがないため、自然消滅してしまいます。

このことが無意識のコンプレックスになっているのかもしれません。実際、他人の友情エピソードを読むことが好きで、
「ジョン・レノンとポール・マッカトニーが実はジョンが亡くなる少し前に和解していて、家で仲良く食事する関係に戻っていた」とか
「ミック・ジャガーとキース・リチャーズがお互いの悪口を言い合いながらも、チャーリー・ワッツが亡くなった直後のライブで観衆の前で手をつないでいた」
といった話を聞くと、羨ましさを感じます。


先日、東京ガーデンシアターで行われた「ダリル・ホール with トッド・ラングレン」の公演に参加しました。ホール&オーツの初期のアルバムをトッド・ラングレンがプロデュースしており、関係が深い二人による初の日本公演で、50~60代の落ち着いた観客でほぼ満席でした。

個人的にはトッドもダリルのどちらにも、妥協を許さない職人的イメージを持っていたのですが、バチバチの個性のぶつかり合いというような雰囲気は全く無く、予想を裏切るほどリラックスしており、音楽を楽しんでいる様子が伝わってきました。彼らの友情がにじみ出ており、私ものんびりとした気分で音楽を楽しむことができました。

しかし、その公演中にダリル・ホールがジョン・オーツを訴えるというニュースが入ってきました。ホール&オーツの権利関係を巡る対立のようです。もちろん、大人なので二人が単なる友人ではなくビジネス上のパートナーであることは理解していますが、それでもショックな出来事でした。

特に80年代にホール&オーツが一世を風靡した後でも、ステージ上では「ソウル大好き兄ちゃん達」の雰囲気を残して楽しげに演奏している姿を見てきたので、ダリルがジョンのことを「ただのビジネス・パートナー」と言い放ったことに複雑な気持ちになりました。

二人とも高齢ですので、このタイミングでの決裂では再び音楽活動を共にすることが難しいかもしれません。

ただ、少なくとも二人が友達に戻れればと願ってしまいます。


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