MMOS01

 初めての出会いは、7年くらい前になる。通勤に使っている近鉄小俣(おばた)駅は無人駅だが、時々駅員がいたりもする。その駅員とフランクに話し合ってる客、なのかわからないが分厚いメガネをかけた男性がいた。なぜ目をひいたかというと、なんだかテロテロのタンクトップというかランニングシャツを着て、下は、なんとボンタン。ボンタンってわからない世代の人もいるだろうが、学生服のズボンの一種なんだが、学校が規定しているようなサイズバランスを誤差の範囲を超えて、モモの部分が太めに、裾のあたりが細く仕立ててあるもので、変型学生服とも呼ばれるものだ。そんな出立ちの40歳手前くらいの人物だったからだ。髪の毛も濃ゆく、ちゃんと刈ってあるがボサボサ、まあ、朝なので寝起きなんだろう。そこにも軽い違和感。会社に行く雰囲気でなく、急いでいない、駅員と親しげに話している。毎日に近く見かける。夜の仕事の人?警備員とか?それでも毎日朝?みたいな違和感。
 そして、その後さらにギョッとする光景に。俺とは反対方向のホームに立ち、電車に乗る風でもなく、時刻表を眺めながら、無人駅だから整理券自動発券機があるんだが、その前にフラッと立ち、シャカシャカと、なんと何枚も整理券を取ったのだ。乗らないのに。そう。ほんとに乗らない。その後、ホームから立ち去りどこかへ、家とおもうが、そっちの方へ歩いて行く。いつも。周りの人も声をかけない。俺は声かけようとその男の前に立ったことがあるが、なんだかメガネの奥の目が、どこか見てるようで見てないような虚まではいかないが、只者ではない感じがあり、しかも、その目が俺の目に合ったので、声を発することができなかった。MMOS (Mr. Mysterious in Obata Station)。俺はその後5年ほどウォッチし続けることになる。(つづく)

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?