雑すぎた短編「もう一度母と呼んで」

 あなたが亡くなってから何年経ったでしょうか――
 私には一瞬にも、百年にも感じられます。

 あれは初夏、忘れもしません。じめじめとした梅雨が過ぎ去り、燦燦とした太陽が鬱陶しくも頼もしく照り輝く季節でした。

 あなたは夏休み、自由研究の課題に昆虫採集を選びました。あなたはまるで精兵のような顔つきで、アゲハ蝶を捕まえるぞ、と意気込んでいました。しかし同時に、隠しきれぬ可愛らしい高揚感にも包まれていました。母親である私にはすぐわかりました。

 麦茶の入ったよく冷えたペットボトル、あなたの好物が詰まったお弁当、そして採集用のカゴとアミを持たせました。私は、意気揚々と家を出るあなたを微笑ましく思いながら、姿が見えなくなるまで見送りました。

 それが、生きたあなたを見た最期でした。あなたは翌日、遺体で発見されました。

つづく?

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