見出し画像

使用者の年休指定義務で「ブラック的回避行為」|迷想日誌

改正労働基準法の今年4月施行を契機に、年次有給休暇の使用者の時季指定義務化にかかわる企業の「不適切」行為が広まりかけているようです(労働新聞8月12日1面・下記リンク参照)。

厚労省では、その後、専用のリーフレットを作成・配布して社会問題化するのを抑え込もうとしています。

「不適切」な行為とは、改正労基法で年休5日分の時季指定を使用者に罰則付きで義務化しましたが、一部企業に特別休暇や所定休日を労働日に変更する動きが出始めていることです(夏休みなどの特別休暇に時季指定する行為含む)。

要するに、罰則対象となる5日分の時季指定を行う一方で、その分今まで付与していた休日を削減するというものです。

しかし、労働基準監督署はこれを正面から阻止することができません。従いまして、働き方改革の趣旨に反するとして周知指導する以外に打つべき手がありません。
時季指定義務を履行すれば、労基法違反には問われないからです。休日の労働日への変更は、労働条件の不利益変更となる可能性がありますが、労基署の判定外のことです。

実は、この問題は今年の通常国会で何度か議論の対象となり、厚労省では慌ててリーフレットを作成して警戒を始めました。
実際に、労基署などへ訴え出る労働者がめだってきているようです。

通常国会では、国民民主党の議員が「会社が一方的に通告し、週休も含めて年間休日を5日間減らすという通達が回っている会社がある。…条件を呑めないなら辞めろといわれて泣く泣く働いているケースが多い」と指摘しています。
これに対して、根本厚労相は「改正の趣旨に照らして望ましくない」と言葉を返すのが精一杯です。

今回の使用者による年休時季指定義務化については、あまりマスコミが報じないなか、「労働新聞」などではすべての企業に広く影響が生じる大改正と訴えてきました。
企業によっては、今までほとんど年休を取得していない労働者に5日分強制付与となるのはかなり辛いようです。

ただ、こうした短絡的企業はたとえ刑罰の適用を受けなくても、ブラック企業にリスト入りし、社会的制裁を受けかねません。
実際に年休時季指定するのはこれからの企業が多いと思いますが、決して休日削減など考えないようお願いします。

労働新聞編集長 箱田 尊文

【関連ニュース】

――――――――――――――――――――

〈労働新聞・安全スタッフ電子版のご案内〉
労働にまつわる最新の情報など、充実したコンテンツを配信中の『労働新聞・安全スタッフ電子版』は、下記よりご覧ください。

――――――――――――――――――――

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?