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50人未満事業者もストレスチェックを|「ちょっと言わせて」

世界的な競争は激しくなるばかりで、日本の労働力人口が減っていくのも確実な情勢です。それでも企業が成長しないと、国はもとより国民一人ひとりの生活も怪しくなります。だからみんなで頑張りましょう――働き方改革が必要になった背景をざっくり眺めればこんなところではないでしょうか。

企業の手かせ足かせをできるだけ外して動き回りやすくする一方、そこにいる働き手たちがやりがいを持って働けるようにすると同時に心身を病まないようにする、この二律背反的な命題を成し遂げていかねばなりませんから、安全衛生を担う方々の責任はますます大きくなったと自覚すべきです。

もしも企業トップの方がこのメルマガをお読みであるならば、是非ともふさわしい権限を担当者に与えていただきたいとも思います。

人手不足ですから、すでに言われている高齢者対策が大事なのは間違いありません。年齢とともに体力も落ちるのですから必要な安全対策があって然るべきです。
それはそれとして、精神障害や脳・心臓疾患の労災請求件数がここ何年も右肩上がりで増えている情勢でもあり、メンタルヘルスの重要性に今一度目を向けたいところです。「仕事」を直接的な理由としたケースばかりではありませんが、近年減少傾向が指摘される自殺は、依然2万840人(平成30年)にも及んでいる現実があります。

職業生活を通じ、精神障害や脳・心臓疾患につながるような強い不安や悩み、ストレスを抱える人が国の調査によると約6割もいます。
仕事の質や量、仕事の失敗・責任の発生、セクハラ・パワハラを含む対人関係などを理由に挙げる人が多いようです。
精神障害に限定した場合、製造業や卸売・小売業、医療・福祉などで労災認定されるケースが多く、雇用者100万人当たりで見た発生率の高い業種を上から並べると、「漁業」「情報通信業」「運輸・郵便業」という具合いです。
恥ずかしながら初めて知ったのですが、仲間が魚網に巻き込まれてしまう災害を目の当たりにして心の障害(PTSD=心的外傷後ストレス障害)を患ってしまうケースが漁業では多いのだそうです。

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複雑化する一方の社会で心を病まずにいられる働き手は少なくなっていくと思われますので、担当者であればできるだけ早いうちから国の制度を知っておくべきです。
厚生労働省のホームページを開けばとにかくいろいろ出ていますが、まずは予防を目的とした「ストレスチェック」の仕組みについて理解を深めていただきたいと思います。
働き手にとっては自らの(心の)状態を知り、セルフケアを行うきっかけにすることができる点が、事業者にとっては働き手のメンタル不調を未然に防げるばかりでなく、集団分析という過程を経ることで職場の問題点を把握し、改善につなげられる点がメリットとされています。
この制度を利用した労働者のおよそ6割がストレス軽減に有用だったと回答し、生産ラインのパフォーマンスが上がったとする研究結果もあります。

問題は、労働者数が50人に満たない場合、その実施義務がないこと。
だから「やらぬ」と決め込んだりせず、働き手の確保や生産性向上という意味でやってみる価値は高いと思われす。

「どうせ費用も高いんだろ?」と勘ぐるムキもあろうかとは思いますが、職場環境の改善にかかる費用が1人当たり7660円なのに対し、ストレスチェックを実施後、生産性が向上して得られる利益が1人当たり1万5200円という研究結果があります。
かける費用に対しおよそ2倍の効果が得られるということです。制度を訝るより前に、まずは知ることから始めてみてはいかがでしょうか。

安全スタッフ編集長 福本晃士

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