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週刊ゲーム漂流記:第6回『君に う』

メジャーマイナー・プラットフォーム・有料無料・新旧問わず、面白いビデオゲームなら何でも紹介していこうというコンセプトの「週刊ゲーム漂流記」。
第6回は、夢と記憶をめぐるパズルゲーム『君に う』

ゲームボーイ風のビジュアルと可愛らしいキャラクターが目を引く『君に う』は、mt.sajiさんによって製作された短編パズルゲーム。

最近頭が痛くてよく寝ている女の子「やまもと」は、夢のなかで「彼女」との記憶を繰り返し見ていた。お互いのことが大好きな二人。でも少し鈍感なやまもとは、「彼女」の本当の気持ちに気づいてあげられない。
はたして、二人は幸せになれるのだろうか。

ぼーっとしてる「やまもと」と、引っ込み思案な「彼女」。ゲームを進めていくと、二人の関係性に大きな変化が生まれる。

やまもとの見る夢が、パズルのステージとなっている本作。夢ではやまもとの対となる位置に「彼女」が存在し、やまもとが動くと「彼女」も一定の法則で連動して動くようになっている。二人を上手く動かして、中心にある「壁」を挟んで向かい合った状態まで誘導すると、「壁」を消すことができ、そして「彼女」がやまもとに抱き着いてステージクリアとなる。
また、ステージのどこかには「思い出」が落ちていて、それらを収集すると専用の部屋にコレクションされていく。

飾られていく「思い出」たち。調べると簡単な説明を読めるが、それらはやまもとではなく「彼女」の視点から語られている。

全20ステージで構成されており、条件を満たすことでトゥルーエンドに到達できる。パズルとしての難度は総じて低いので、収集要素をコンプしても30分ほどで終わるだろう。しかし、本作はパズルを解いていく楽しさよりも、やまもとと「彼女」の物語を見せていくことに重きをおいている。例えば、右クリックかXを押すことで「彼女」を切り替えて連動を反転させられるようになるのだが、それは裏表が激しいという「彼女」の性格を反映している。また、終盤のとあるギミックやそれ以降のレベルデザインも、二人の関係性が明確に変わったことを表現していたりと、パズルをストーリーテリングの一部として機能させているのだ。
他にも、BGMの音量設定がデフォルトで0になっている辺りが、個人的にポイントだったりする。トゥルーエンド後に、手動でBGMを解禁するその一手間がたまらなく好きだ。

本作は、開発中の別作品の素材を流用して2日で作り上げたものだという。
その半時間足らずで遊び尽くせる短い内容のなかに、小さなこだわりが込められている。そこには、ハッとさせられるような表現や、心の揺れる展開が待ち受けていて、ゲームが終わる頃には、きっとささやかな幸福感に満たされていることだろう。

ゲームプレイは上記からどうぞ。DL版はこちら。

ココイチでカレー食べます。