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週刊ゲーム漂流記:第4回『択愛』

メジャーマイナー・プラットフォーム・有料無料・新旧問わず、面白いビデオゲームなら何でも紹介していこうというコンセプトの「週刊ゲーム漂流記」。
第4回は、相手を想う心が試される恋愛ノベルアドベンチャー『択愛』

『択愛』は、中国・広東のデベロッパー「AkabaStudio」によって制作された恋愛ノベルアドベンチャーだ。日本語に対応しており、翻訳はかなり自然な出来となっている。

主人公は、ゲームクリエイターである ごく普通の青年。彼は、テーマに沿って制限時間内にゲームを開発するイベント、所謂ゲームジャムに参加していた。女性とチームメイトになれると聞いて淡い期待を抱いていた彼だったが、自分のチームは男ばかり。ゲームの開発自体は進捗しているものの、何となく満たされずにいた。
そんな中、休憩を取っていると、隣のチームとして参加していた女性が目に映る。隣のチームも自分たちと同じく休憩に入っていたが、彼女だけはノートに向かって、一心不乱に文字や絵を書いていた。彼はそんな彼女をこっそりと眺めていたが、やがて話しかけるなら今しかないと決心し、思い切って彼女に話しかけることにした。

こうして彼は彼女と出会い、物語は始まった。

第一印象はとても大切だ。彼女の気持ちになって、どのような話題を振るのがベストか考えてみよう。

ゲームジャムでの彼女との出会いを起点に、知り合いになり、デートに誘い、告白して、恋人同士になり、同棲生活を経て、最後に彼女とのその後の関係が綴られる内容となっている本作。各シーンで適切な選択をし、彼女に信頼され愛されていけば、結末はきっと良いものになるだろう。しかし、彼女の気持ちを汲み取れず選択を誤ってしまえば、その結末は悲しいものになってしまう。

1周のプレイ時間は約10分ほど。優しいタッチで描かれたキャラクターと、ピアノを基調としたBGMによって、二人の恋愛は穏やかに進行していく。
また、シーンによってはミニゲームが開始され、それらは最高結果を出すことが望ましいのだが、一度でも最高結果を出せば2周目以降はスキップできるようになっている。決して難しいミニゲームではないのだが、周回プレイを考慮したそのささやかな心配りに、じんわりとした温かさを感じずにはいられない。

本作の面白いところは、この手のゲームに慣れているプレイヤーほど、初見プレイで良い結果に到達できないという部分だろう。(ゲーム内での)恋愛経験豊富な私が自信満々で初見ベストエンドを目指した結果、見事に破局したことからもそれが伺える。断じて女性の気持ちを理解できなかったわけではない。

己の恋愛力が試される。君は彼女を幸せにできるか?

チャットで仕事の愚痴を聞いてあげたり、デート前はグルメサイトで評価の高い店をリサーチしたり、良い雰囲気の時はリードしてあげなきゃいけないし、恋人同士になることで見えてくる悪い部分にも真摯に対応しなきゃならない。何度繰り返しても破局する。ようやく分かってきてそこそこに落ち着くという感じ。彼女の最高の笑顔は、未だに見れていない。恋愛って、大変だ。

けれど、『択愛』のゲームプレイを通して、人生において重要なシーンでは、真剣に考えて選択することが大切なのだと感じた。本当にその選択をするのがベストなのだろうか、安易な選択に流されて、実はもっと良い選択があることに気づいていないのではないか、と。それは、ゲームだろうが現実だろうが、同じことだ。

本作は、Steamにて早期アクセス配信されている。本来の設計としては、複数の独立したストーリーから構成されるゲームとなっていて、今はまだ一つしか実装されていない状態だが、今後1,2年掛けてアイデアの続く限りストーリーを追加していく構想のようだ。定価でも200円ほどで購入できるし、ユーザーからのフィードバックを積極的に受けて、より良い作品に仕上げていきたいとデベロッパーは熱意を持って語っている。

この機会に、「気軽に出来るが成就はし難い」という、まさに現実の恋愛そのもののような本作を体験してみてはいかがだろうか。いや、決して私が恋愛下手なわけではない。

購入は上記からどうぞ。

ココイチでカレー食べます。