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38歳、藝大受験してみた。⑪

音楽の勉強というのは語学に似ていて、短期集中でどうにかなるものではなく、徐々に体に馴染ませていくものだ。よって、以下に紹介する私のラストスパートにおける勉強法は決してお勧めできるものではないのだが、この連載は参考書の類いではなくあくまで記録目的のものなので、思い出せる限り詳細に記してみる。

まず、和声と聴音。

2回目にして最後のT先生の和声レッスンの際、受験問題に似た課題をいくつかいただいていた。それが1月中旬くらいのことなので、本当なら1日1問ずつ解き、さらに言えばその間違いを指摘してもらう時間も設けるのが正しい。だが私はほぼ最後の1週間で1日5問ずつくらいを、合っているのか確認する術もないままひたすら解いていった。作曲家からしたらとんでもないやり方だろうが、和声をまだパズルと捉えていた頃の話なので怒らないでほしい。

聴音も、受験を決めた頃に買った一冊の問題集を少しずつ進めてはいたのだが、結局のところ後半3分の1くらいはこの最後の1週間でやることになった。誰でもできる易しい問題から始まって進むほどに難しくなっていくので、この時期にやった問題は自分には不可能と判断せざるを得ないものばかり。赤本を見たら、入試問題は前半が簡単で後半が難しいようだったので、今年はとりあえず前半だけがんばろうという逃げの結論に。

そして、楽典とピアノ。

楽典はすべての基本と思い、この時点までに基礎的なところは当たり終えていた。そこでいよいよ赤本の問題に挑戦してみたところ、1時間で8割は解きたいところ、カンニングしながら3時間かけても5割しか解けない危機的状況…。仕方ない、これも今年は5割を目標に、過去問を何度も解いてスピードアップすることだけ心がけようと決意した。3年分見たが傾向は変わっていないようだったので、いわゆる捨て問題を決め、時間さえかければできる問題のための時間をできるだけ残そうという作戦だ。

ピアノだけは順調…というともちろん語弊があるが、年明けから課題曲を毎日弾いていたのだがら、ほかに比べればマシだったことはお分かりいただけるだろう。ちなみに課題曲とは、ベートーヴェンのソナタ。ほかにもいくつかあり選ぶことはできるのだが、どれも同じかそれ以上に難しく、そして実技ができなくても入れそうな印象を与えがちな楽理科だけほかの科(もちろんピアノ科は除く)よりむしろ難しいことは、声を大にして言っておきたい。

でなんと、まだある。

歌とリズムの初見唱は、ピアノのW先生にちょっとだけ見てもらい、練習問題も分けていただいていたものの、急に練習してどうなるものとも思えずほぼ対策放棄。最も重要な小論文は、結局M先生の授業は一度も受けられぬまま、鉛筆で字を書く練習をかねて、赤本に載っていた課題に対して考えたことをつらつら書いてみたのみ。そんな状態で3月6日、いよいよ本番を迎えた。こう書いてみて改めて、楽理科マジやること多すぎだよと思うなど。

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