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38歳、芸大受験してみた。⑫

3月6日、3日間に及ぶ二次試験はまず小論文と和声から始まった。結局一度もレッスンを受けられなかったM先生から言われていたのは、小論文は音楽学の知識を見るものであって、ただ自分の考えをうまく書くだけでは意味がないということ。つまりプロのライターであることは何の助けにもならないと分かってはいたのだが、何しろ音楽学の文献を読んでおく時間は、今年に関しては確保できなかった。そこで私の作戦は、とりあえずどんな課題が出ても…

強引にミュージカルについて書くぞ!

というもの。ミュージカルだって音楽の一部であることに違いはないのだし、知らないことを無理して書くよりよっぽど熱意がアピールできるし、過去問を見る限り課題は例年1行ほどの短いものでしかもわりと抽象的なテーマだったので、強引に結びつけることは可能と踏んでいた。ゆえに、今年に限って1行テーマじゃなく、10行ほどの文章を読んだ上で考えを述べよ方式だったときは、正直焦った。

が、ここで作戦変更する余裕もうまみも見つからなかったため、起承で短く受け、転結で派手にミュージカル話に転じることに。我ながら小論文というよりエッセイだな!というものにはなったが、まあなんとか乗り切れた。試験時間は2時間なのだが焦るあまり1時間ほどで書き終えてしまい、あとは恒例の下書き用紙への落書きタイム。一次試験の反省を踏まえ、回収されても恥ずかしくないような内容にはしておいた。案の定回収されたので、良かった。

昼休みを挟んで、午後は和声。

1時間半で2問なので、下書き用紙から解答用紙に清書する時間も考えると、各30~40分で解きたいところ。練習問題を解きながら不安だったのは、30分で解けることもあれば、30分経ったところで行き止まりに気付いて振り出しに戻ってしまうこともあることだった。本番で後者になったら終わりだと思っていたのだが、そうはならなかったのでとりあえず、今の力は出し切れたという印象。帰り道、ほかの受験生同士の会話からはどうやらそこそこ難しかったことが伝わってきたが、私は難しさに気付くことすらなかった。これまた逆に、良かった。

そして2日目は、ほかの科と合同の基礎能力試験。聴音、楽典、ピアノ、視唱(歌とリズム)の5種を、健康診断の要領で各教室を回りながら受けていく。なにしろ閉口したのが待ち時間が長いことで、大きな待合室から中くらいの待合室、そして小さな待合室があってやっと自分の番なのでまぁ~ダレる。芸大、仕切り悪すぎやろ、という大人ならではの感想を終始抱いていた私である。そんななかで…

尺八一番の方~!

大きな待合室での、これが私的ハイライト。こんな面白い光景を見られただけでも受験した甲斐はあったと思われた。加えてもう一つ楽しかったのが、一次試験のときから気になっていた私よりさらに年配の“同志”に暇を持て余してついに話しかけ、後半は喋りっぱなしだったこと。若者たちにはさぞ迷惑だったことだろうが、この出会いもまた貴重なものとなった。…と、なんだか楽しげな感じで始めてみたが、この日の総合的な印象は実は、「人生で一番の大恥をかいた」。そのあたりの詳細は、また次回。

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