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38歳、芸大受験してみた。⑨

私は家で仕事ができない。原稿を書く際は常に常に、わざわざ出かけてでもカフェに行く。自分でも予想外だったのは勉強でもそうだったことで、月曜の勉強デーはいつもカフェにいたし、仕事を納めた後の去年の今頃は、年末年始も営業している近所のカフェを探して毎日そこにいた。音楽の勉強をするにあたって別の音楽が流れているのはどう考えても邪魔だったがまぁ、それでも家よりははかどった。

そんなこんなで、センター試験当日。

この日のことはとにかく、疲弊したことしかほぼ覚えていない。午前中に倫理、午後に国語と英語。1日中頭を働かせていなければいけないのはもちろんだが、何しろ待ち時間が多いのに閉口した。昼休みはそこそこ長いため外に出ることができ、幸い私の受験地は土地勘のある青山学院大学だったのでカフェでリフレッシュすることができたが、それ以外のちょこちょこした時間は部屋で潰すしかなく、そして席では携帯を出してはいけないので持て余す。

周りを見渡すと皆、直前チェック用のテキストを持ってきて眺めていて、そういえば自分も現役の時はそんなのを作っていたなぁ…と遠い目。ただボケッとするしかない待ち時間をやり過ごし、試験が始まっても油断はならない。現役時代は必ずやっていた「見直し」という作業を行う体力が37歳の私にはなかったため、ひと通り解き終わったら終了時刻まで、またただただボケッとしているしかないのだ。全て終わって帰宅したときには、マンションのロビーに座り込んだまましばらく動けず、部屋に上るのにかなりの時間を要するほど疲れ切っていた。

しかし、まだ作業は残っている。

昔は確か、答えは翌日の新聞で見た気がするのだが、今時はその日の夜にはもうネット上に公開される。私は深夜、最後の力を振り絞って自己採点をおこなった。というのも、実はこの時点ではまだ、今年受験するかどうか決めかねていたからだ。何しろ10月から勉強を始めたばかりで、例のファイルはまだパンパンになっておらず、これは三年計画だな…という気になっていた状況。1年目はとりあえずセンターだけにする、というのもひとつの手だった。

迷ったときは、得意の他力本願。センターの最終目標は当初から決めていた通り9割で、1年目でそこまで到達するのは難しいかもしれないが、8割にも届いていなかったら今年はセンターだけにしておこう。あまりに疲れすぎて、こんなことを翌年もやるのは無理だという切実な思いもあったが、そんなことだけを理由に次に進んでもさらなる徒労を生むだけだ。さて、何割取れたかと言いますと…

び、微妙としか言えない、その2。

これは後から送られてきた正式な点数なので、疲弊中におこなった自己採点とは若干異なるが、どちらにしろ8割と9割のちょうど間の約85パーセントで、私の結論は持ち越されることとなった。だがとりあえず、数ヶ月前の模試と比べたら─英語はなぜか(恐らく疲弊のため)落ちてしまい、古文は変わらなかったとはいえ─倫理と漢文に関しては劇的な進歩ではなかろうか。年末年始を勉強に捧げたことはまぁ、無駄ではなかったのだと思われた。

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