2015放射線科専門医試験(一次試験)治療分野 解答・解説

2015放射線科専門医試験(一次試験)治療分野解答解説

・このnoteは放射線科専門医試験(一次試験)のうち、放射線治療分野のみに関して解答・解説しています。診断分野・核医学分野に関しては解説していませんのでご注意ください(問題番号3、5-8、86-105)

・主として放射線科専門医試験(一次試験)を受験する診断科の先生を対象としています。診断科の先生にとって放射線治療は馴染みのない分野であり、正直面倒なところでしょう。
・放射線治療医の立場から、ただ知識を暗記するのではなく論理的思考により答えを導き出せるよう解説しております。ただしどうしようもない選択肢もありますが…
・個人が調べた範囲の解答案ですので、誤植や間違いはご容赦ください。なお適宜アップデートしていく予定です

・ご自身で調べるより、noteを購入していただいた方が費用対効果は高いはずです。

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答えはa, cです。
ブラッグピークとは何か。診断科の先生は深く知る必要はありません。

https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%96%E3%83%A9%E3%83%83%E3%82%B0%E6%9B%B2%E7%B7%9A
詳しくはwikipediaを参照ください。

ブラッグピーク最大の利点は、曲線を見れば分かる通り周囲組織に障害を与えることなく放射線治療ができる点です。このブラッグピークこそが一般的にはX線治療よりも陽子線や炭素線治療の方が副作用少なく治療できると言われる所以です。

よく患者さんなど勘違いしているのですが、炭素線や陽子線の方が病気が治りやすいかというとそういうわけでもありません。そもそも臨床試験がまだまだ不十分です。

またブラッグピークがあるからといって臨床的に数ミリ単位、ピンポイントで照射できるわけではありません。それ以上に体内の臓器の変動が大きかったりします。ですから前立腺癌や膵癌など、周囲に重要臓器がある場合はどうしても腸管などに制約を受けます。
したがっていまのところ最も良い適応は、小児腫瘍でしょうか。周囲の被曝を抑えることができるのは確実なので、二次発がんの予防や正常臓器の保護には大いにメリットがあるのです。

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b: ◯
全身照射って実際にやっています。主に骨髄移植前の患者さんに対して、1:白血病細胞の根絶、2移植後GVHD予防のための免疫抑制を目的にやられています。線量は12Gy/6frが標準です。

さて問題はちょっと難しくて、その線量を問うています。イメージではなかなか解けないでしょう。急性被曝では4Gyくらい被曝すると半数が亡くなるようです。そんな事実を証明するような事件がありましたので、詳細は東海村の事故の項目を参照ください。一度読めば忘れないでしょう。

https://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%9D%B1%E6%B5%B7%E6%9D%91JCO%E8%87%A8%E7%95%8C%E4%BA%8B%E6%95%85

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a: ◯
RBE=relative biological effect、生物学的効果比です。簡単にいうと放射線の強さです。臨床的にはX線を1として、陽子線は1.1、炭素線は3くらいといわれています。ただしいろいろと議論がわってまだ100%分かっているわけではありません。

臨床的にRBEが最も高いのは上述の通り炭素線となります。したがって肉腫など放射線治療抵抗性の腫瘍には良い適応と考えられています。

7
b: ◯
LQモデルの式Biological effective dose(BED)= nd(1 + d/[a/b])を覚えましょう。
基本は腫瘍のa/b=10、正常細胞a/b=3となります。式をみて分かる通りa/bが低い=放射線治療が効きやすい=感受性のある腫瘍となります。この中で放射線が一番効きやすそうな腫瘍はどれでしょうか。当然放射線だけで根治が狙える腫瘍です。答えはbです。
前立腺癌はa/b=1.5くらい、乳がんは3-4くらい、他は10くらいです。しかしがんばって覚える必要は必ずしもないでしょう。

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