2018放射線科専門医試験(一次試験)治療分野 解答・解説

・このnoteは放射線科専門医試験(一次試験)のうち、放射線治療分野のみに関して解答・解説しています。診断分野・核医学分野に関しては解説していませんのでご注意ください(問題番号1-4、86-105)


・主として放射線科専門医試験(一次試験)を受験する診断科の先生を対象としています。診断科の先生にとって放射線治療は馴染みのない分野であり、正直面倒なところでしょう。
・放射線治療医の立場から、ただ知識を暗記するのではなく論理的思考により答えを導き出せるよう解説しております。ただしどうしようもない選択肢もありますが…
・個人が調べた範囲の解答案ですので、誤植や間違いはご容赦ください。なお適宜アップデートしていく予定です

・ご自身で調べるより、noteを購入していただいた方が費用対効果は高いはずです。

1
3Gy、全身被爆に関わらず、照射後すぐに出現する副作用で最もポピュラーなのは悪心嘔吐です。骨転移の照射でも照射範囲がちょっと広ければ、初回治療日の夜に気分が悪くなるとおっしゃる患者さんはたくさんいます。したがって正解はaです。詳細はwikipediaをご覧ください。
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%80%A5%E6%80%A7%E6%94%BE%E5%B0%84%E7%B7%9A%E7%97%87%E5%80%99%E7%BE%A4

2
これも覚えなければいけないのは辛いですよね。治療計画ガイドライン2016の最後のページを見るしかありません。答えはbです。

3
亜致死損傷に関しては下記をご覧ください
http://www.020329.com/x-ray/bougo/contents/chapter3/3-1-ref15.html

この問題は単なる放射線生物学の知識を問うたものではなく、臨床に即した問題です。小細胞肺癌では加速分割照射といって1日2回、45Gy/30回の治療が標準ですが、午前中に2回やれば良いわけではありません。脊髄の亜致死障害からの回復は6時間でも不完全なため、1日のうちで 6時間以上開けて、具体的には午前一番と午後最後にやるのが標準的となっています。

4
寡分割照射とは1回線量を上げて照射回数を減らした治療です。乳癌の術後照射などではトレンドになっていますね。寡分割照射において腫瘍への治療効果が大きく、正常組織への障害が少なければ少ないほど薦められる腫瘍(選択肢)となります。
Biological effective dose(BED)= nd(1 + d/[a/b])(ただしn:分割回数 d: 1回線量)の式を参考にします。
腫瘍のBEDをBED(T)、正常組織のBEDをBED(N)とします。式を変形すると
BED(T)/ BED(N) = (1+d/腫瘍のa/b)/(1+d/正常組織のa/b)となります。したがってこの比を大きくするためには、腫瘍のa/b<正常組織のa/bとなる選択肢を選べば良いことになります。ゆえに答えはbです。

多分この問題は難しいので、暗記するよりは式で導き出す必要がありそうです。一応のところJASTROの記事にも下記のような記載があります。

「晩期反応のα/β値<腫瘍のα/β値であれば,週 5回通常分割照射が寡分割照射よりもNTCPが小さくTCPが大きいため,通常分割照射が癌治療に向いているとされる」https://www.jastro.or.jp/medicalpersonnel/journal/94.pdf

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