見出し画像

Crop予測市場レポート第3回:Hypermind

こんにちはCropです。未来予測コンテストサービス「PredictionGeeks」を運営・開発しています。

今回は海外の予測市場サービスの中からHypermindを取り上げてみました。集合知・予測市場業界のリーディングカンパニーのうちの一つである彼らのサービスはどのようなものでしょうか?

ポイント

1.2000年から活動していて最先端研究も行っている予測市場界のリーディングカンパニー

2.社会への関心が高まる!参加無料、賞金つきの公開予測市場を運営

3.より良い知性には多様性が必要!

1.Hypermindとは?

フランスに拠点をおくHypermindは2000年より活動しており、研究分野でもIARPAのプロジェクトに参加しており集合知業界のリーディングカンパニーとして知られています。

Hypermindは以下の4つの事業をしています。

クラウドの社内予測市場サービス
集合知プロジェクトなどのコンサルティングサービス
公開予測市場サービス
集合知に関する研究

歴史を辿ると2000年に「NewsFutures」という名前で公開予測市場サービスとしてスタートしてその後、ニュースメディアと提携したマーケットを作ったり、社内予測市場サービスを販売しました。そして、2010年にThe New England Consulting Group社と提携をして社名を「Lumenogic」に変更し集合知を利用したコンサルティング事業を拡大します。そして2019年に今の「Hypermind」に社名を変更しました。

今回はその中でも私たちが実際に参加することのできる公開予測市場サービスをメインに紹介したいと思います。

2.公開予測市場

公開予測市場は特別な場合(コンテスト作成企業の関係者)を除いて誰でも参加できる予測市場となっています。僕も実際に参加しています!
こちらから参加申請できます。

ルール

・参加時にプレイマネー100,000を受け取りそれを使って取引。
・参加者は上限2000人。
・予測者の下位15%、2週間全く取引がない人、規約違反行為者は参加待ちの人と入れ替えになる。
・ダブルオークション方式。

コンテストとマーケット

・コンテストごとに賞金がついており、それに紐づいたマーケットの取引の成績に基づいたスコアで賞金が分配される仕組みになっています。守秘義務があるため、具体的なコンテスト名とマーケット内容は言えないのですが、イメージとして以下の例をあげておきます。

コンテスト:地球環境 賞金100,000万円
マーケット
・2020年のCo2排出量は2019年より多くなるか?
・オーストラリアの森林火災の被害面積はどれくらいになるか?
・ペッドボトルのリサイクル率が85%を超えるか?


ユニークな点

プライベートバンクが社内で出たアイデアの最終絞り込みのための評価のコンテストをHypermindで開催したことがある。

社内の会議で新しいサービス、新しい製品、顧客との新しいタイプのやり取りについて20のアイデアが生まれました。しかし、良いアイデアなのか?全ての良いアイデアを出し切ったか?疑念が残っていました。そこでそのプライベートバンクは公開予測市場で200人に対してマーケットを開きました。その結果、悪いアイデアをすぐに排除して良いアイデアを特定し、さらに社内にはなかった素晴らしいアイデアを手に入れることに成功しました。このように社内だけではバイアスが強く残る上に、知識量が限られている場合であっても公開予測市場を使うことでより良い意思決定をすることができます。

そのマーケットに関連するニュースが流れるフィードがある。

参加した人が自分でニュースを探しに行く手間が省けるのは嬉しいですね。
気になるニュースを見て、そのまますぐ取引という流れを作ることができます。

3.参加してみての感想

筆者は実際にこの予測市場サービスを使ってみたのですが、特に以下の点が気になりました。

1.今まで関心のなかったニュースを気にするようになった。

今までは大統領選があることは知っていても、各州の予備選挙などまでは気にしていませんでした。しかし予測トピックとして取り上げられているため、サービス内のニュースを読んでみたりいつもならタイトルでスルーするような記事に目を通したりするようになりました。例えば選挙の予測なら今まで以上に選挙のニュースをしっかり読むようになりました。予測市場には参加者に情報の獲得を促す効果があると言われていますがまさにそれを実感した形となりました。

2.自分の総資産がいくらなのかチェックするためについついログインしてしまう。

Hypermindではホーム画面に自分の保有しているシェアが時価で換算された総資産が表示されます。そのため本当の株トレーダーのように、相場が動くと自分の総資産も変動するのでそれをチェックするのが習慣付きました。結果としてマーケットに参加したその日だけではなく、毎日関連するニュースであったり、その問題に気を配るようになりました。

4.その他の事業について

クラウド社内予測市場

こちらは従業員、顧客、取引先などの人が参加できる予測市場プラットフォームの提供になります。顧客例としてアメリカ空軍などが挙げられています。2000人ものエンジニアからのアイデアを収集しランク付けをしたとあります。マネジメント層だけではなく若いメンバーからも収集することで素晴らしいアイデアが生まれたようです。

集合知プロジェクトなどのコンサルティングサービス

どの集団も必ず集合知を持っています。しかし、それを有効に活用できている集団は少ないと思います。そこでHypermindは活用したい企業に対して、一からの計画、目標設定、発売前のコミュニケーションキャンペーン、ユーザーインターフェースの設計、データフィルタリングと分析などを支援しています。顧客例としてフランスのメディアグループが挙げられています。
顧客の要求に応えるためにコールセンターの業務時間の変更をしようとしたところ従業員と経営陣で意見が食い違い行き詰まっていました。そこで、従業員が匿名でアイデアを提案、議論、どのアイデアが受け入れられるか予測できる環境を作りました。その結果、すぐに問題は解消されたそうです。

R&D

スタンフォード大学らと提携して、集合知に関する研究を行っています。
Intelligence Advanced Research Projects Activity(IARPA)の地政学リスク予測コンテストであったり、人とコンピューターの予測能力を最適に組み合わせる方法を研究するために開催された、Hybrid Forecasting Competition(HFC)に参加しています。

5.まとめ

Hypermindのmissionのページにはこんなことが書かれています。

We hold this truth to be self-evident that intelligence is always collective, that all truly intelligent systems, be they artificial or cerebral, consolidate the input of many.
We know that all opinions count and deserve to be heard, that the worst enemy of intelligence isn’t crowds but conformity; that wisdom’s best friend isn’t isolation but diversity.
We believe that intelligence in the 21st century will not be artificial only, that a single human brain is still the most powerful computer in the world, and that there’s no known limit to what can be achieved by a properly-organized multitude of minds.
We call that “supercollective intelligence”. Since 2000, we are on a mission to empower large organizations, companies, and governments with it.
Because the world won’t get better until we get smarter, together.

私たちの知性はまだまだ本当の力を出していないのかもしれません。
彼らは世界をより良くするためには私たちが共に賢くなる必要があると訴えています。個人レベルでは認知バイアス、集団レベルではSNSで拡散するフェイクニュースや、フィルターバブル、エコーチェンバー現象など孤立が原因で愚かになってしまうことは多々あります。そのため知性をより良いものにするためには、全ての意見を重要視して耳を傾ける多様性のスタンスが必要であるとあります。

群衆の中に眠るSupercollective Intelligenceを目覚めさせてくれるHypermindの今後に期待しましょう!

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?