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10分で即完売。数万人のお客さまと商品を共創した、猫耳キャップの目薬が生まれ、届くまで

ロート製薬のnoteがリスタートした今年、最後のしめくくりとして、どのテーマを扱うか、チームで議論しました。

いろんな出来事があり、とても悩みましたが、お客様と「共創」し、圧倒的に高い熱量で受け入れていただくことができた「猫耳目薬」について、お伝えさせてください。

毎年2月22日は「猫の日」。去年の2月、ロートの目薬に、3Dプリンタで自作した猫耳キャップをかぶせたアイディアを公式Twitterで投稿しました。すると、想像以上に多くの反響をいただくことに。

当初は、猫がお好きな方を中心に楽しんでいただけたらいいな、という企画でしたが、フォロワーの皆さんから「商品化をしてほしい!」という言葉がたくさん届きました。

本来、効果や効能が求められる医薬品では、容器であっても製剤など中身の安定性を守るため、そう簡単にチャレンジすることはできません。ですが、お客様の熱量を受け取ったメンバーが立ち上がります。

そして、発表から1年後の2021年2月。ふたたび訪れた猫の日に正式な商品化をみなさんにお知らせすることができ、喜びの声をたくさんいただくことができました。

10月13日の発売日をむかえ、ロートオンラインショップでは10分で即完売。数量限定での発売だったため、すべてのお客様にお応えできなかった心苦しさも残るものの、ロート史上初の試みとして、これからも語り継がれるであろう、お客様と共に商品をつくりあげた経験となりました。

このnoteでは『猫耳目薬』の企画が生まれてから発売するまで、メンバーがどのような気持ちで共創プロジェクトに携わっていたのか、企画開発を行ったチームにインタビューしました。特に、ものづくりやマーケティングに関心のある方、みなさんに読んでいただきたいです。

なお、今回は社内で呼び合うあだ名「ロートネーム」でお届けします。

3Dプリンタで作成した手塗りの試作品に大反響

はじまりは2年前の秋ごろ。公式Twitterをより多くの方に知ってもらうため、トレンドをつかみながらもロートらしい発信をしていこうと、ロートのSNSチームのメンバーは翌年2月の「猫の日」に焦点を当てた企画を検討していました。

アイデアを形にすべく、プロジェクトに参加した、容器のデザインや設計を行う、容器包材開発グループのハマーにその頃の話を聞きました。

ハマー(容器開発担当)「当時、ロートの目薬『Cキューブ』は丸い形なので手が滑って空けにくく『より可愛くて開けやすい容器を作れないか?』という話が出てきており、動物の耳をつけたキャップの試作を3Dプリンタを用いて作成したのがはじまりでした。

耳の引っかかりで商品のユーザビリティも上がればいいなと思っていたので、猫の日の企画を通してカタチにできた楽しさがありましたね。」

ーーーいかにかわいく、いろいろな猫を表現するか。 そのために耳の傾きの違う3つの形を制作。3Dプリンターの樹脂色は単色なので、出来上がったキャップは当時手塗りで着彩していました。

手塗りで彩色された試作品。左からロシアンブルー、三毛猫、茶トラ

そして、2020年2月22日をむかえます。週末の投稿にもかかわらず、みるみるうちに1万RTを超え、大きな反響をいただきました。当初、SNS発信チームにいた、にえちゃんは、そのすごさを肌で感じたそうです。

にえちゃん(SNS担当)「シンプルに『すごいヒットしてる!』という実感が始めからありましたね。フォロワーの声が直接届き、商品化してほしいというコメントの多さも含めて、こうなった以上、皆さんを巻きこんで形にしたいよね、とチーム内で話をしていました。」

双方向のコミュニケーションを元に商品化へ


ーーーSNSでの強い追い風を受け、プロジェクトは商品化、そして販売に向けて動き出します。はじめはEC限定で販売する方針でしたが、Twitterの投稿を見た大手小売店のバイヤーさんから「ぜひうちでも扱いたい!」という話をありがたくもいただき、議論の末、生産数量も増やし、多くの方へ届ける方向にシフトしました。

そして、ただ商品化をするだけではなく、猫耳総選挙と題して投票制にするなど、お客様と一緒に"共創"で盛り上げていくことを考えて進めていくことになりました。企画を推進した、アイケアの広告戦略を検討している、にしまいが振り返ります。

にしまい(マーケ担当)「徹底的にこだわったのは"顧客起点"を重視して全ての意思決定を進めていくことです。

今までもお客様のお声を大事にしながらも最終的には企業からの発信として新商品の提案をしていましたが、お客様とプロセスも共有して一緒に形にしていけたことは、私たちとしても初めての取組みでした。工場での生産の様子もSNSで公開して反響をいただけました。

この話をする上で欠かせない『猫耳総選挙』という企画にたどりついたのは、猫好きの同僚にヒアリングをしていた時の『うちの猫に似たのがほしい!』という言葉。"うちの猫"という言葉がキーになるなと考え、お客様の飼い猫のベストショットを募集し、総選挙を行うことで、猫耳目薬のモデルの猫をみんなで決めようという参加型にしました。SNSが当たり前の今だからこそできる双方向のコミュニケーションですね。」

ハマー(容器開発担当)「こちらが提案する新商品に対して、ここまでオープンに多くの方からコメントいただけることはなかったので、この企画では多くの方からの熱量をダイレクトに感じられたことがよかったですね。

そして、お客様からは手塗りのかわいらしいキャップを期待されていると感じました。少し現実的な話になりますが、最終的にはこれまでと同じく”工場で生産できるか”が大きなハードルです。

最初につくった時には、そこまで考えておらず、量産化しながらそれに負けない"猫ちゃんの表現"をどうすればいいのかと試行錯誤していました。工場のメンバーの協力なくしては実現しなかったですね。」

7,000件の応募があった「猫耳目薬総選挙」

商品が発売されるまでの道のりは月に一度の「#猫耳目薬通信」でSNSを通じて発信。「毎月22日が楽しみ!」「ロートの社員が一丸となってつくっていることが素敵」との声もいただきました。

プロジェクトを中心となって進める4人も、いくつかの拠点に分かれて仕事をしていましたが、企画を進めるためのチャットグループでは、総選挙の期間を通じて熱いやりとりが交わされていました。商品企画を担当するおかりなに、このプロセスについて聞きました。

最終的には3万7千票もの投票があつまった「猫耳目薬」総選挙

おかりな(商品企画担当)「私は、商品化決定してからプロジェクトに参加しました。7,000件もの猫ちゃんの応募があり『ファイナリストをどの8匹に絞ろうか』『猫ちゃんの柄や毛並みの表現はどうできるだろうか』と喧々諤々、4人のチャットグループでコミュニケーションをとっていました。

熱が入った理由のひとつは、メンバーそれぞれに”推し猫ちゃん”がいたからだと思います。投票期間はツイッターの票数をみながらリアルタイムでチャット内で盛り上がっていました(笑)。ヒヤヒヤ、ワクワクしながらも、お客さまのために社内で一致団結して一緒に楽しめたのが本当によかったと感じています。

また、お客様の声に動かされ、目薬を発売した2021年10~12月の売上の1%を、公益社団法人アニマルドネーションという動物保護団体へ寄附をすることも決定しました。その経緯を、マーケ担当のにしまいが振り返ります。

にしまい(マーケティング担当)「小さい声であってもSNSでのお客様の声に全て目を通す中で、助けが必要な猫や動物がいるという声もうかがい、ただ可愛い猫のデザインを借りて商品にして利益を得るということではなく、猫や動物の福祉に還元されるようなの仕組みにしようとなりました。

猫ちゃんにそこまで詳しくなかった私たちが、お客様の声をきっかけに猫や動物社会の現状を考えさせられたプロジェクトでした。また、猫耳目薬の発売後も実際に、Twitter上や社内・取引先の方からの声をいただけてホッとしましたね。」

発売後は即完売、SNSで届いていることを実感

2021年10月13日の発売後、大きな反響がありました。お客様や市場の反応を見ての感想をチームメンバーに聞きました。

にしまい(マーケティング担当)「オンラインショップで販売できる数量が限られたというのもありますが、10分で即完売してしまいました。文字通りの、嬉しい悲鳴です。

セット買いしてくれた人や、購入後に飼い猫と並べてSNSに投稿してくれる人もいらっしゃいました。プロセスエコノミーの文脈で共感を広げ、SNSを通じてコミュニティの熱量をより高めることに繋げられたと思っています。」

ハマー(容器開発担当)「発売日に店頭を見に行くと、すぐに欠品した形跡があり、驚きました。また社内外問わず、まわりの人から『買ったよ!』と自分が関わったものを見せてもらえたのが嬉しかったですね。」

おかりな(商品企画担当)「販売してすぐの気持ちは、『嬉しい』と『ほっとする』両方ありました。ターゲットとさせていただいていた方々から、SNSで反応をいただけるのは嬉しかったですが、実際に店頭でも売れているのか?とハラハラする部分もありました。

その後、店頭を見にいって、多くの人に買ってもらっているんだなあと分かり、ほっとしました。社内一丸となってつくった実感があり、感動もありますね。」

ーーーSNSが当たり前の時代だからこそできた「共創プロジェクト」。今回のインタビューを通じて、その背景にあるのは、ロートの「とりあえずやってみる」「スピーディーな意思疎通」「やりたいことを背中を押してくれる」「楽しいことが大好き」などロートが大切にしてきた文化を最大限発揮するプロジェクトでした。

メーカーとして、悩みや症状を解決するモノの価値を追求しながら、そのモノに出会って使ってくださるお客さまに”喜び”や”驚き”も感じていただけるように、一連の体験にも、よりいっそう価値を生み出していきたい。

もちろん、品質を含めて安心安全は前提に、でもより豊かに過ごしていただくための新たな選択肢として、これまで商品を使ったことがなかったお客様に使ってもらうきっかけをつくるために、試行錯誤をしています。今回のプロジェクトもそのひとつです。

『よろこビックリ』をより感じていただくためのひとつとして、今後もお客様と共に行う商品づくりをやっていきたいと思っています。最終的にはまた新たな価値づくりにつながるとも考えています。


さて、皆さんにとって、今年一年はどんな年でしたか。私たちは、お客様のためにモノづくりやその他さまざまアプローチに挑戦する仲間から、これまで以上に刺激をたくさんもらいました。これも取材があったからだと思います。

読んでくださった皆さんが”ロート流”を少しでも実感していただけていたらうれしいです。また来年もどうぞよろしくお願いいたします。

お読みいただき、ありがとうございました。SNSなどで、感想をお寄せいただけたらうれしいです。すべて読ませていただきます。

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