新卒研修

スタートアップで新卒研修を始めてみたときの話

前回始めます宣言した本noteですが、今回2回目にして新卒研修というスタートアップの課題の中でもある種ニッチなただ悩む人はすごく深く悩むであろう課題について取り上げます。

新卒採用を行うスタートアップが必ずぶち当たる悩み

Rettyで新卒採用を3年程担当していましたが、17年度入社にこれまで最多の7名の新卒を社員7〜80名時に受け入れることになり、そこで初めて新卒研修を行いました。当然これまでの前例はなく、メンターや育成経験が豊富な社員も少なく、手探り状態。昔自分が受けた研修を思い出しながら、HRのパートナー企業さんに壁打ちしてもらいながら作っていきました。「昨年と同じでいいよ」がないのは辛いですよね。また研修専任担当とか夢のまた夢で、研修のために必要な工数を用意しにくいのも大変です。

毎年1〜3月くらいは「新卒1期生が入社するんだけど、初めて受け入れた時研修とかどうしたの?」という質問をよく受けます。初めて研修をやった時のことを思うと、やはりどこも悩みどころなのかなと思い、今回取り上げました。自分自身、新卒研修の担当は壁打ち約含め3年くらい。引き続き試行錯誤ではありますが、大事にしていることを書いていきます。

この記事はこんな方におすすめ

・初めて新卒を受け入れる会社の経営者・人事・育成担当者
・初めて新卒のメンターや研修を担当する先輩社員
・毎年新卒を受け入れているが、会社の規模的にまだ大規模な研修・育成体制がない会社の経営者・人事・育成担当者

恐らく、新卒研修のPJは各社準備にまさに大忙しな時期だと思います。もう設計は終わっているかと思うので、手法の一助になれば。

また別途スタートアップに入る新卒の方向けの記事も書きたいなとぼんやり考えています。

①そもそも新卒に何を期待するのか

伸び盛りのスタートアップで働いているなら、優秀で実績のある中途社員が多数在籍していることでしょう。それでも新卒を採用したいとなったのであれば並々ならぬ想いがあったはずです。

・まっさらだからこそ組織の中心として、会社を背負っていってほしい
・オールラウンドに活躍してくれる人材として育てたい
・新卒の爆発力への期待

彼ら彼女たちにどうなって欲しいための研修なのか。ここを経営陣・マネージャーやメンター陣・研修チームで擦り合わせることが最初のステップです。

昨今の学生はインターン経験が豊富だったり、起業したことがあったりという学生も多いですが、インターンへの教育は各社まちまちだったり、起業経験があってもビジネスマナーを教えてもらった機会がなくところどころ抜けていたりするので、研修という形でスタートアップで戦うための最低限の武器を渡してあげましょう。

②組織として絶対に植え付けたい哲学は何か

何事も最初が肝心。新卒研修の一発目でも社長挨拶でも何でも良いのですが、一番大事なことをバシッと伝えておく。研修で何やかんや色々なことを教えても、人間誰しもそうですが、全てを覚えられるわけではありません。これだけはという重要な哲学やカルチャー、スタンスはシンプルなメッセージで最初に伝え、その後反芻することが重要です。

出典 チャンスは突き抜けた者に集中する。

伝説の新人 20代でチャンスをつかみ突き抜ける人の10の違い という本の帯にある絵です。新卒で入った会社の社長が好きな絵で、全社会議の度に見せられていました。Rettyも同様で「まず成果を上げること、成果を出した人にはどんどん成長の機会が得られる環境にしたい」という意思がある組織であるため、これを研修の冒頭でシンプルに伝えました。インターン経験のある(自分の新卒時代と比べてもぐんと)優秀な1年目たちだったので、「インターン時代よりもより成果が求められるし、自分で食ってかないといけない」というマインドにチェンジして欲しいという意図もありました。

当時のメッセージは刺さっていたのかどうなのかと気にかかっていたところ、ちょうどタイムリーに当時の新卒が呟いていたので良かったのかなと(仕込んでません)。

その他RettyではRetty Wayという数年来アップデートし続けている行動規範がありますが、それについて理解し、自分で言語化してもらう時間も取るようにしています。

③最低限のビジネスマナーやスキルをインストール

・名刺交換
・メールの署名や送り方
・タクシーやエレベーターの乗り方
・会食マナー
・契約書やNDAについて

上記はビジネスマナー系の書籍やWebサイトを参考にインストールしておく必要があります。Rettyでは銀行出身者や総務のメンバーなど得意なメンバーに講師を依頼し、1時間程度の講義を何本か行っていました。会食マナーに関しては、新卒の会社で受けた会食ロープレという人事相手に会食を実践するロープレ研修がユニークでした。

営業系のメンバーであれば徹底的にやるべきですが、エンジニアメンバー中心であれば最低限のレベルで良いでしょう。ただこれができないまま大人になると困るので、この機会にインストールしておくことが重要です。とは言え定着は難しいので、何度も口酸っぱく周りが注意してあげましょう。

かく言う自分も「研修めちゃだるそうに受けてたよね」と同期に何年か後言われたことがありますが、スタートアップに入りたいような鼻息の荒い若手の中にはマナーのインストールを嫌がる人もいることでしょう。その場合はアソビュー山野さんのツイートを見てもらうと良さそうです。

ロジカルシンキングやGTDのようなタスク管理も教えますが、言ってすぐに理解が追いつくわけではないので、この辺りはあくまで業務の課題感の中で、都度研修していく方が有効です。

④成長ロードマップを描いてもらう

出典 大谷翔平も実践した目標達成シート「マンダラチャート」

なぜスタートアップに入社するのかの理由の一つとして「圧倒的に成長したい」、「将来やりたいことを実現するため」という理由を掲げる人が多いでしょう。だからこそ彼らに仕事に集中してもらうためには、「今の業務が将来の目標に繋がっている実感を持つこと」は重要です。

大谷選手も実践していたというマンダラチャートを、Rettyでは毎年若手メンバーに作ってもらっています。スタートアップは先が読めないところもありますが、2〜3年後くらいまでの目標を立てられると良いでしょう。

⑤プロダクトや組織へのエンゲージメントを高める

ジャイアンツ愛なる言葉を某監督は大事にしていますが、それと同じでどれだけ優秀でも組織や事業への想いや愛着心がなければ良い仕事はできません。新卒はこれまでの仕事バックボーンがないが故にエンゲージメントが強ければどこまでも仕事にのめり込んでくれます

またバックボーンがないとは書きましたが、今のご時世インターン経験が多いもしくはスタートアップに同世代の友人が多い若手は割とどこにでもおり、エンゲージメントが低いと簡単に転職されるリスクがあります。若手に定着してもらうためにも重要な観点です。

Rettyでは会社やプロダクトのことを深く知る機会を研修期間中に用意しています。どれも何かしらスライドか研修中書いてもらう日報でアウトプットしてもらいます。

・創業者と創業の地、歴代オフィスを訪れる
・過去取材記事を読む
・各チームマネージャーのプレゼンを聞く
・ヘビーユーザーさんの話を聞いてみる
・お店選びに関するユーザーインタビューをする

どれも選考期間に社員づてに聞いたことはあるとは思いますが、改めて自分で感じて、考えてアウトプットすることが血肉に繋がります。あとは会社のドメインもあり、研修時期に先輩社員とご飯に行くことを奨励しています。

⑥同期意識を植え付ける〜同期は一生モノ〜

よく言われることですが、これは本当に大事。自分同期たちとは今ではてんでバラバラですが、ちょくちょく情報交換をしたり、飲みに行ったりして刺激をもらっていますし、同期の結婚もめちゃくちゃ嬉しいです。出来損ないの新卒時代に共に辛酸を嘗め、乗り越えてきた仲間は掛け替えのない財産です。

レクリエーションとして、滝行をしたり、裏入社式と題してちょっとした開発PJを回してもらったりという機会を作りました。とは言っても、結局仲良くなるかどうかは本人たち次第。研修チームができることと言えば、幹事キャラを育てるくらいかもしれません。

⑦期間の目安とその後のOJT

Rettyでは以上のような研修を2週間〜1ヶ月で行うようにしています。これが新卒8〜16名/全社員100名規模で、人事を含めた研修チーム(人事中心に2〜3名の工数の4割程度)や講師役(準備含め6時間×4〜6名)の取れる工数の限界でしょう。そもそも数名規模の立ち上げ間もないスタートアップでは、足元業務にフル稼働する必要があるため、研修をやるべきではないでしょう。

マナー研修辺りは外部に委託することもできますが、個人的には新卒を受け入れることに慣れていない会社は簡単に外部委託すべきでないと考えています。人数が少ない会社では、社全体として若手を育てようという雰囲気作りが重要なので、新卒がオンボーディングする瞬間から皆で育てていくという意識を持って迎え入れるべきです。育成への当事者意識を持たせるためにも、社内メンバーでの研修実施が大事です。

その後のプログラムとしてはエンジニアと営業は基本実戦投入ですが、企画職で営業インターン未経験であれば、営業の現場に2〜3ヶ月配属するようにしています。Rettyでバリューを出してもらうために、①飲食店さんのインサイトを把握できる②成果を出す習慣をつけるようになる必要があるからです。企画職は特に依存関係も多く、個人の成果が見えにくいこともあり、初期配属としては営業チームでの育成をお願いしています。

研修終了後は1対1でメンターをつけ、2週に1回〜月に1回程度は最低1on1をして、日々の仕事の進捗確認やフィードバックをしてあげます。研修以上にここの運用が肝です。メンター陣容に余裕があるミドルベンチャーさんだと、新卒エンジニアに対しては技術メンターと仕事マインドメンターの2パターンつけるらしいです(羨ましい)。

色々書きましたが、基本的にはスタートアップに来たからには最短で研修を終わらせて実戦で成長すべきですし、そうでなければ何のためにスタートアップに来たのかわかりません。長々と研修について書いてきましたが、重要なのは現場での最短距離での成長と最高の成果。そのために最適な研修を実施しましょう。

いかがでしたでしょうか

一発目からHRの中でも新卒研修という風変わりなテーマでしたが、いかがでしたでしょうか。新卒研修のベストプラクティスは解がないものなので、これをきっかけにディスカッションの機会を持ってもらえれば嬉しいです。

今回のように、このnoteではStartup Hack noteとして、サービスグロース、プロダクトマネージャー、HR、カルチャー作りなどなど、領域にこだわらず、100名前後の1→10スタートアップで使える実践的なTIPSを中心に、失敗話や成功エピソードなどを発信していきます。こういう話を聞きたいなどあればTwitter @roki_n_ までDMかこの記事をツイートする形で教えてください!

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