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龍昌寺震災状況

能登半島地震で被災した輪島市の龍昌寺。そこに住む版画家の江崎満さんからの震災状況を報せる記事がありましたので、それをシェアします。


与呂見の震災状況 江崎満

皆さんにはご心配をかけたことと思います。いまだ停電が続き、ネット環境も繋がらず無事の報告もできませんでした。私は携帯を持っていませんが、今、近くの村まで出かければ私のパソコンも若者たちの携帯の電波を借りてネットにも繋げられるようになったので、今日は40センチの雪を踏んで近くの村まで歩いてきました。そして今、このFBで与呂見の村人たちがみんな元気であること、また、与呂見の震災の状況などを伝えようと思います。
それは元旦の午後4時半を過ぎた頃だった。
お寺の五右衛門風呂に浸かり、いい気分で新年を迎え、風呂から出た瞬間、突然の衝撃、激しい揺れが襲ってきた。慌ててパンツを履き、衣類を纏って外に飛び出した。
暫くすると村人たちも倒壊の恐れのある家から逃れ、寺の庭に集まってきた。連合いも地震の直後咄嗟に家から飛び出し、小楢の木にしがみついていたところ、寺の若者たちが助けに来てくれたらしい。
電気も水も止まり、村から外へと降りる道路も亀裂が入り、1メートル以上の段差ができて車は外に出られない状況となった。
しかし、何はともあれ、村人たちはみんな無事で怪我人もいなかった。その後も余震は続き、家屋に入ることもできず、寺の庭で火を焚き、大鍋でごはんを炊き、持ち寄った食料を火で炙ってみんなして晩飯を食べた。この村のいいところは風呂も暖房も薪を使うので薪が沢山あることだ。そしてその日は村人全員車の中で寝ることとなった。
翌る日、明るくなって家の状態を調べると家財はごちゃごちゃにひっくり返り足の踏み場もなく、外回りは家の土台が基礎からズレて床が下がったり、落ちたり、瓦は全体がずれてあちこち剥がれ落ちていたり。加えて我が家のデッキは倒壊しぺっちゃんこ。どの家も倒壊は免れたものの、ダメージは大きく地震が収まってもその後、住み続けることができるかどうか、甚だ怪しい状態だ。
お寺(龍昌寺)も本堂などあちらこちら壁が剥がれ落ちたり、損傷はひどいものの、流石に構造はしっかりしていて、村人たちは二日目以降、寺の厨での合宿生活となった。飲み水は山の下の貯水タンクから若者たちが歩いて運び上げ、風呂の水は寺の側を流れる小川の雪解け水をバケツリレーで運んで薪で焚き、順番に入った。食事はみんなで持ち寄った食料や援助で届いた食料を料理して厨の薪ストーブを囲んでの食事だ。食器を洗うのも雪解け水。明かりは蝋燭や電池式のランプを使い、寝る場所は本堂や宿坊、厨をシェアした。
そんな生活が始まってあっという間に一週間が過ぎた。いまだに電気も水も止まったままで、復旧の見通しさえ立っていないが、金沢近郊に暮らす村人たちの子供たちが幹線道路の至る所での亀裂や断裂などで普段一時間の道を通行止めや迂回、凄まじい渋滞にもめげず6〜7時間もかけて物資を運んで来てくれ、道路の復旧作業や傷んだ屋根の応急処置、電気がなくても通じる電話を寺に繋いでくれたり、車庫の倒壊で潰れかけたハイエースを救い出してくれたり、その他、暮らしのための作業を手伝ってくれた。彼らは大工や電気工事士、設計士、測量士、介護士、料理のプロたちであり、よく考え、よく動く実に頼れる面々なのである。寺の住職をはじめ、みんなこの村で山猿のように育った子達である。今、逞しく育った彼らの活躍を見て一人前に育ったなあと嬉しく思うのであったが、村の復旧作業はこれからなんである。
復旧の肝は何はともあれ水である。与呂見村の水は所謂の水道ではなく、37年前、横浜から奥能登、龍昌寺の山林に移住し、寺を中心とした小さな村ができた時、みんなで山の伏流水を引いて作った我らの山の水道です。時折、凍ったり、ポンプが故障したりして止まったりもしますが37年間、この村の水を供給してくれ生活を支えてくれた水道です。一般の水道とは一味違う、美味い水であり村自慢の水なのです。
しかし、今回の地震でこの水道が無惨にも破壊してしまいました。村の一番高い山の上に設置した貯水タンクの底が壊れ抜けてしまったのです。
なので最初から水道のシステムを作り直さなけばなりません。おおよそ5トンの貯水タンクも購入しなければならず、その工事費用を考えると頭が痛いのですが、とにかくこれだけは最初に復旧させなくてはなりません。
勿論、お寺の修復も村人たちの家の補修もしなくてはなりません。特に我が龍昌寺は檀家さんのいないすべての人々に開かれたお寺です。若き二代目住職、遼雲さんは自ら田んぼや畑を作りながら、この寺をこれからの時代に希望の持てる暮らしのスタイルをみんなで考える学びの場 にしたいと願っています。この寺は是が非とも修復し、存続させたいし、存続させなければと思っています。
ともあれ、村の復興には相当の資金が必要です。話し合いの結果、与呂見村の復興支援義援金を龍昌寺の口座で一括して受けることにしました。少しでもご支援いただければ助かります。
皆様よろしくお願い申し上げます。

[龍昌寺振り込み口座]
銀行名  ゆうちょ銀行
金融機関コード  9900
店番   079
預金種目  当座
店名  079店(ゼロナナキュウ店)
口座番号 0002706
郵便番号929-2361 石川県輪島市三井町与呂見根-72   龍昌寺




「デクノボーの詩」 PDF

二十年ほど前に、宮沢賢治の「雨ニモマケズ」を版画にした江崎さんの作品を電子本にしたことがあります。T-Timeというソフトを使ったTTZファイルでしたが、OSの進化で現在では読めなくなってしまいました。今回それをPDFに仕立て直してみました。昔の作品ではあるけれど、とてもエネルギッシュな快作です。江崎さんの紹介も兼ねて、ここに掲載します。ぜひご覧になってください。(PDFのページ内表示閲覧はできないようなので、リンクを貼っておきます)

http://rokkaku.que.jp/bunko/library/lib3i/dekunobo.html




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