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老樹抄


ならの実大運動会

羅漢寺手前の小学校では「ならの実大運動会」。イーハトーヴの童話にでも出てきそうな名称で楽しい。らかんたちがいつもより小さく見えたのは、童心に帰っていたのだろうか。

この運動会を毎年見守ってきた樹齢150年のエノキの寿命がとうとう尽きたらしい。春にわずかな新芽を着けていたが、それも枯れ果てた。高学年の120メートル走のゴールは、エノキのちょうど手前。エナガの群れが翔けてきて、遊んでいた。 
                 ——Twitter 2013.9.21より

 



秋の影を抱く

小学校の榎の具合を見に行った。
雲一片ない空に、葉一枚ない木。
紅葉の季節まで保たなかったようである。
校庭に落ちた樹影をカメラに収めた。

                 ——ブログ 2013.10.30より





詩 老樹抄

大きな榎の
小さな呼吸
それもいつしか消えたか
枝は折れ
葉は尽き
空がすかすか
ついこの間までは
一クラスほどの人数なら
緑陰にすっぽり収まった

 ○

樹高十五米
幹周三米半
一八七六年
付近の寺子屋をまとめて
ここに小学校が出来た時
榎はすでに立っていた

 ○

九月
校庭で
ならの実大運動会が開かれた
高学年の生徒たちは
百二十米走で
栴檀や水楢のコーナーを回って
榎のゴールに駈けてゆく

 ○

人間は小さくて
動き回り騒ぎ回り
泣き笑いの激しいものだ
榎はそう思ってきたろうか
毎年秋に実をつけるように
春には新芽を出し
新しいこどもたちを抱えて

 ○

年老いた木は
半ば眠り、半ば夢み
空の鱗雲を繁らせている



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