漂泊
若山牧水は、旅の歌人。
幾山河越えさり行かば寂しさの終てなむ国ぞ今日も旅ゆく
白鳥はかなしからずや空の青海のあをにも染まずただよふ
小学生の頃、国語辞典の付録でこの二首に出会った。高校の修学旅行で買った短冊は、自室の壁に掛けてあった。しらとりは、当時白鳥のことだと思い込んでいた。
それがどうも鴎のことらしいと分かっても、この二首をセットで愛吟し、白鳥もまた幾山河を越えさり来るのだと知る者にとっては、空の青にも海の青にも染まらないしらとりは、やはり白鳥であってもいい。
それでこんな短冊を取り出した。胡瓜のスワンと漂泊のふうらを合わせたかったのである。しらとりではなく、みどりではないかというのはさておいて。
胡瓜のスワンは文鎮にしても絶妙の形。もし永久保存出来るならば、白紙の海に浮かび、イマジネーションの山河を一緒に漂泊してくれることだろう。
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