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陰謀論はなぜ面白いのか

この5年ほどにおいて「陰謀論」という言葉は急速に認知され、日常生活においても耳にすることが多くなった。
では、この5年ほどが歴史的に見て懐疑的な事に満ち満ちいたのかといえば、そうではない。

最初に明確にしておきたいのはUFOやアトランティス大陸のような「都市伝説」と「陰謀論」は違うこと。
都市伝説は真偽不明なものへ自由な考察を交わすものであるが、陰謀論は提示されている情報が巨大な勢力により歪曲されたものであると疑うものにある。

国内でも陰謀論は急速な発展を見せ、もはや陰謀論を根拠に形成された集団まで現れた。なぜ、陰謀論はそこまで人を惹きつけるのだろうか。

障子に指と井戸端会議

陰謀論の流行とネットを結びつける論調はよく見られる。ネットから陰謀論が生まれたとする人もいるが、それには同意できない。現状への無根拠な懐疑はテクノロジーが無くても発生する具体的な事例では豊川信用金庫取り付け騒ぎが挙げられる。女子高生の噂話から伝言ゲームが始まり、豊川信用金庫が破綻するという大騒ぎが起こってしまった。実際にはそのような事実は無かったが預金者は窓口へと押し寄せた。

実際にあったことと信じがたい話だが、1970年代とそれほど昔の話でもない。SNSなどのネット機構は噂話が広まるのを助けるだけで不可欠なわけではない。

では、なぜ陰謀論は巻き起こるのか。
世の中はツッコミどころだらけだからだ。

政府予算の使途不明金が11兆だとか、PS5が未だに店頭に並ばないだとか、おおよそ信じられないことは毎日起こる。
私たちはなんとなく、政治家や大企業は「しっかりしているもの」と信じている。犯罪が起きたら警察は助けてくれるはず、裁判時は必ず倫理的に正しい選択をしてくれるはず、政治家は国益を優先してくれるはず、というように一定の権力を持つ人間に信頼を寄せるのが、平和な民主主義国家の庶民の姿だ。

権力の監視機構としてメディアがあるのだから、庶民はメディアが暴く権力の横暴を追っていればいいはずだ。

🙃

しかし、そうも言ってられないほどにツッコミどころが多すぎる。元R130のほんこんさんが政治を斬ってしまう気持ちもわかる。

大半の人はこうした情けない権力の姿に呆れるだけなのだが、一部の人たちは呆れる気持ちを合理化させたいと考える。その一部の人たちの想いにあるのは
「なんで、こんなことになったんだろう」


どんな事象でも誰かが動いた結果としてそうなったはず。原因はなんなんだろうと。

原因を知りたいと考え、調べ始めても真実は複雑なことが多い。シンプルであっても専門的な知識を必要とすることが前提となっている場合もある。一般庶民はなかなか真相を辿れないし、真実の意味するところを理解できない。


そういった困惑した人々に、実は逆転の方法がある。

物語ですよ。

辻褄の合いそうな都合のいい、ご機嫌なお話を創作してしまうこと。
陰謀論に奔る人たちの心理状態はこうして形成される。


選民思想と大舞台

理解できそうにない難問に自分だけの別解を作ってしまう。テストで困ったおちゃらけ学生と同じノリで陰謀論は始まる。ここで試してみれば

「政府の使途不明金は某国への軍事提供を進めるアメリカから資金提供の圧力があり、裏で送られた」

「補助金ご送金問題は町役場の体制を追求するために仕掛けられたものである」

「卑弥呼はスペイン人、旧大航海時代に酔っ払って日本へ流れ着き独自文明を形成した」

みたいな?なんかありそ〜な話をテキトーに作ることができる。
専門とする研究者さん達であれば論理的に客観的資料を用いて否定できるこんな戯言。

でも、共有するメンバーを絞れば影響力を持つ。
専門的な知識を持たず、裏付けをとるほどのリテラシーもない人間の間で話が共有されれば「裏の真実」として持て囃される。こうして小集団に陰謀論は入り込む。

端的に言ってしまえば自分で考え切るだけの努力をしない人に陰謀論は刺さるのだ。適切な知識量も持たない彼らにとって権威を牽制する手段は陰謀論しかないわけだ。

当然、訳のわからぬ陰謀論を吹いてるわけだから周りから否定される。間違いを認められるほど度量もないので彼らは陰謀論コミュニティ以外の人間を排他する。
客観的に見れば排他されているのは彼らなのだが、彼らの主観では「自分達の気づきを理解できない者達」を排他したことになる。自らで作り上げたコミュニティを情報強者とする選民思想ができあがるのだ。

発信内容が過激なら敵も増えやすい。論理的な指摘をする人も増える。しかし、それすらも彼らには「政府によって我々の活動は妨害されている」となる。ここまでいけば救いようはない。はい、南無阿弥陀。


陰謀論は信じている人間が提唱するばかりではない。信じ込む人間を商業的に利用する輩もいる。これは信仰的な集団には共通することかもしれない。

私の主観だが、陰謀論に傾倒してしまう人はコンプレックス意識が高い。人より劣っていることを恐れるが、着実に努力することもできないので一発逆転の陰謀論を身にまとってしまう。

都市伝説を話すのは楽しいし、想像力を掻き立てて現実のものとリンクさせていくとワクワクする。しかし、架空のストーリーや信頼性の低い資料でやたらに何かを攻撃してはいけない。人は組織を陰謀論に巻き込むのは明確な攻撃である。やってはいけない。


以上が個人的な陰謀論に対する見解である。特に根拠もないのでこれも陰謀論!
下山事件の真相、教えますよ。おわり。

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