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[西洋の古い物語]「メイブロッサム王女」第4回

こんにちは。
いつもお読み下さり、ありがとうございます。

お散歩をしていたら、草むらに水仙が咲いていました。
この前来たときには気づかなかったのですが、あちらこちらに少しずつかたまって咲いていました。
このところ、暖かくなったりまだ寒かったりですが、水仙は少し寒いぐらいのほうが好きなのでしょうか。それともやっぱり暖かいと嬉しいのでしょうか。

「メイブロッサム王女」第4回です。
前回は、ファンファロネード大使に一目惚れしたメイブロッサム王女が、彼と二人で離れ小島へと駆け落ちするお話でした。今回は、二人がいないとわかったお城での大騒ぎや、その後の捜索のお話になります。
今回もご一緒にお読みくださいましたら幸いです。

「メイブロッサム王女」第4回

 そのうちに夜が明け始め、王様も王妃様も廷臣たちも皆が目覚めて目をこすり始め、そろそろ婚礼の前祝いを終える頃合いだと思いました。王妃様は素敵に見えるように、ネッカチーフを持って来て、とおっしゃいました。すると、あちらこちらで皆が慌てふためき、至る所を探し回り、衣装だんすからかまどの中まであらゆる所を覗きこみました。王妃様ご自身も屋根裏部屋から地下室まで探し回りましたが、ネッカチーフはどこにも見つかりませんでした。

 その頃には王様もご自分の短剣が無いことに気づきました。そして再び大捜索が始まりました。100年間も鍵が失われたままの箱や櫃を開いてみたりもしました。そこには珍しい物がたくさん見つかりましたが、短剣はありませんでした。王様は髭を、王妃様は髪を引きむしりました。何故なら、ネッカチーフと短剣はこの王国で最も価値の高い物だったからです。

 捜索が望み薄であるとわかると、王様は「まあよい。他に何か無くなる前に急いで結婚式をやってしまおう」とおっしゃり、「王女はどこか」とお尋ねになりました。
すると王女様の乳母が前に進み出て言いました。
「王様、かれこれ二時間も王女様をお探ししているのですが、どこにも見つからないのです。」

 王妃様はもうこれ以上耐えることができませんでした。恐ろしい悲鳴を上げると気を失っておしまいになり、2樽ものオーデコロンを注がれてやっと正気に戻られたのでした。王妃様が正気を取り戻すと、皆は大きな恐れと混乱の中、王女様を探しているところでした。しかし、王女様の姿は見えませんでしたので、王様は小姓に言いました。
「ファンファロネード大使殿をお探しするのだ。きっとどこかの隅でおやすみになっているだろう。そしてこの悲報をお伝えせよ。」
そこで小姓はあちらこちら探し回りましたが、王女様や短剣やネッカチーフ同様、ファンファロネードも見つかりませんでした。

 王様は顧問官たちと衛兵たちを召し集め、王妃様に伴われて大広間にお出ましになりました。前もって演説を準備する時間がありませんでしたので、王様は三時間の静粛を命じ、三時間が経ちますとこのように話されました。

「身分の高い者も低い者も、聴け、皆なの者。我が愛娘メイブロッサムが行方不明じゃ。拐かされたのか、ただいなくなったのか、私にはわからぬ。王妃のネッカチーフと私の短剣も紛失中じゃ。どちらも同じ重さの黄金に匹敵する価値の物なのだが。それから、最悪なことに、大使のファンファロネード殿がどこにも見当たらぬのじゃ。大使から何の知らせもなければ、ご主君である王が我々のところに探しに来られて、我々が彼を細切れに切り刻んだと告発するのではないかと心配じゃ。おそらくそれもしのげよう、金があればな。しかし、婚礼の出費でもう一銭もないのじゃ。そこで、我が親愛なる臣下たちよ、助言してほしい。娘とファンファロネードとその他の品々を取戻すにはどうすればよいかを。」

 これは王様がなさったと知られている中で最も雄弁な演説でした。皆が演説を褒め称えました。それから、首相がお答えを申し上げました。
「王様、王様がかくもお悩みなのを拝見いたしまして、私ども一同も非常にお気の毒に存じております。私どもは王様のお悩みの原因を取り除くために、この世で価値のあるものは全て差し上げたく思います。しかし、この件はまたしてもあの妖精カラボスのしわざのように思われます。王女様のお可哀想な20年間はまだすっかり終ってはおりません。それに、実際、本当のことを申し上げますと、ファンファロネード殿と王女様がお互いに大いに惹かれあっておいでらしいことに私は気付きました。おそらくはこのことがお二人の失踪の謎に何らかの手掛かりを与えてくれるのではないでしょうか。」

 ここで王妃様は彼をさえぎって、おっしゃいました。「口をお慎みあそばせ。メイブロッサム王女は大使などに恋することを考えるには育ちが良すぎましてよ。」

 この時、乳母が進み出て跪き、彼女たちが塔に針の穴をあけたことや、大使をご覧になった王女様が「彼と結婚するわ、他の人じゃダメよ」と宣言なさった次第を打ち明けました。すると王妃様はたいへんなご立腹で、乳母と養育係と王女付きの侍女たちを凄まじく叱責なさいましたので、彼女たちは縮み上がってガタガタ震えました。

 しかし、コックトハット提督は王妃様を遮って叫びました。
「ろくでなしのファンファロネードを追いましょう。間違いなく、奴は王女様と駆け落ちしたのです。」
すると皆は拍手喝采し、口々に叫びました。「何が何でも奴の後を追いましょう。」
そして、ある者は海に漕ぎ出し、ある者は王国から王国へと太鼓を叩き喇叭を吹き鳴らしながら探し回り、どこでも人々が集まると大声で叫びました。
「ファンファロネードがどこにメイブロッサム王女様を隠したか言うだけでよいのだ。美しい人形、いろいろな甘いお菓子、小さなハサミ、金色のローブ、それにサテンの帽子がいただけるぞ。」
しかし、どこでも答はこうでした。
「もっと遠くへお行きなさい。私たちはお二人を見てはおりません。」

 海路をとった者たちはもっと幸運でした。と言うのも、しばらく航海しております夜になり、大きな炎のように燃える明かりが前方にあるのに気づいたのです。それが何なのかわかりませんでしたので最初は近寄れないでおりましたが、しばらくするとそれはスクォラル島の上にじっととどまりました。なぜなら、皆様はもうおわかりの通り、その光はあの石榴石の輝きでしたので。王女様とファンファロネードは島に上陸しますと、金貨百枚を例の舟乗りに与え、彼が二人をどこに連れていったかを誰にも決して言わないと厳粛に約束させました。ところが船乗りは舟を漕いで島を離れるや、艦隊の真っ只中に漕ぎ入れてしまいました。彼が逃げ出すよりも早く提督は彼を見つけてボートを差し向けました。

 船乗りは体中を調べられ、例の金貨がポケットから見つかりました。それは全部とても新しい金貨で、王女様の結婚を記念して鋳造されたものでしたので、提督はこの舟乗りが王女様の逃避行を手助けしたのでお礼を支払われたにちがいないと確信しました。しかし、船乗りはいかなる問いにも答えようとせず、耳も聞こえず口もきけないふりをしていました。

 そこで提督は言いました。「ほう!耳も聞こえず口もきけないのか。こいつを帆柱に縛り付けて鞭で打ちのめせ。九尾の猫の味を味合わせてやるのだ。耳と口を直すのにこれ以上の良い方法は知らぬからな。」
(※「九尾の猫」とは結び目を作った九本の紐を結びつけた鞭のことで、昔、懲罰に用いられたそうです。痛そうですね。)

 提督が真剣であるのを見ると、年老いた舟乗りは彼がスクォラル島に上陸させた騎士と貴婦人について知っていることを全て話しました。提督にはそれは王女様とファンファロネードに違いないとわかりました。そこで彼は艦隊に島を包囲するよう命令を発しました。
          
このお話の原文は以下の物語集に収録されています。

今回もお読み下さり、ありがとうございました。
「メイブロッサム王女」はもう少し続きます。
最後までお付き合いいただけましたら幸いです。

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