テレビを観なくなって1年近く経つ。

テレビ観ないからって、本を沢山読んで知的、
とかそうゆう話しじゃない。

テレビの代わりに観る様になったのはYouTubeだし、好きな人、気になる事を検索して観たいと思う動画をひたすら観る。
それはテレビを観ていた時と同じ様に、垂れ流しの様に観るともなく観ている時もあれば、ドラマを観る様に噛り付いて観る時もある。

ただ、決定的に違うのは、YouTubeから流れてくるのは、私が観たい聴きたい価値観だけだという事。私がわざわざ検索して探した価値観だ。

テレビの全部を否定するつもりはない。
楽しく観ていたものももちろんあったし、勉強になるものも沢山あった。
ザノンフィクションはいつも私の心を揺さぶったし、小藪のブラックユーモアに笑った。
だけどそれはほんの一部だ。
ほとんどの、しかも視聴率の良いテレビ番組ほど、有害だと思う。
ただ一つの偏った価値観を、まるで正しい価値観かの様に思い込ませるという点において。
常識、世の中のルール、道徳心。法律でさえ、何人かの価値観で勝手に作ったものだ。
テレビは、誰かの価値観を私に押し付ける。

可愛い女性タレントは不要に明るく目障りで、でも可愛い。
私の深刻さを笑うかの様な、まるで中身のないくだらない真昼のやりとりは、更に私を落ち込ませる。
深刻そうなコメンテーターの意見は、全然的を得てない様に思えるし、
きっと同じ様な境遇に居る被害者を絶望させるだろう。

日常的に流れるテレビの会話には愛などない。あるのは稀だ。愛のない会話を聴かされ続ける事がどれほどのストレスになるか私たちはなかなか気がつかない。それは命さえ脅かす危険なストレスだ。

テレビがないとシンとして何か寂しい。
だけどテレビによって私たちは更に寂しくなる。
自分とは全く関係のない、テレビに出ているから有名なだけの男や女の会話を、なぜ疲れて帰ってゆっくりご飯を食べてる大切な時間に、聴かなければならないのだろう。

自分の事も満足に労われてない。家族の哀しみや友人を襲った不幸に心を痛める。そうやって私たちは毎日を必死で生きている。
それなのに眠る前のニュースでは遠く離れた地での不幸を報せる。

自分以外の事がどうでもいい訳じゃない。
私たちには、知らなければいけない事件があるだろう。
でもそれは果たして、毎日一日の終わり聴かなければならない事だろうか。

意思を持って報道するなら別だけど、なんでもかんでもただ報告するべきじゃないと思う。そして観るべきじゃない。

大切な人には好きな番組だけを観て欲しい。

無意識に観ていた番組が、本当は嫌いな事に気がついて欲しい。

私たちは、そんなくだらない番組を観なくていい、共感しなくてもいい。

誰もが知っている人気者の言う事が正しい訳なんかない。絶対に。
私たちは既にテレビに違和感を感じている。ん？って思う瞬間がある。
その違和感は宝物で私たち自身だ。

でも私たちはなかなかテレビを消さない。
だってそこにあるから。
まるで家の主役かの様に家の1番いい場所にある。
テレビを基準に部屋の配置を考える。なぜ？他人しか写し出さないのに。

画質はどんどん良くなり、際限なく大きくなり高価になる。当然の様により良いものに買い替える事を繰り返す。そうして家の中でどんどん存在感を増したテレビを私たちは消す事が出来ない。

お正月には、お母さんやおばちゃんが作った御節や誰かが買ってきてくれた料理を、久しぶりに集まった家族や家族の様な大切な人達と囲む。料理はいつもより少し豪華で、私たちはいつもより少しだけ丁寧に心を込めて会話しようとする。ぎこちなく、恥ずかしそうに。
テレビでは、私たちが食べている御節とは比べものにならないくらい豪華で一流のご馳走を食べるタレントを映す。

感想は聴くまでもなく、お母さんの御節よりきっと美味しいのだろう。

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