チャゲアスの『On Your Mark』が、韓国に行ったら今でも色んな所でそこそこ有名だった話。-1-

前回、「チャゲアスの『僕はこの瞳で嘘をつく』が韓国に行ったら、180度違うことになってた話。」を書かせていただいたところ、「おもしろい!」という反応を思っていた以上にいただきました。ありがとうございます。

恐れ多くも、CHAGE&ASKA(以下、チャゲアス)界隈で有名な方々がツイッターをいいね&RTしてくださいまして、なんと、そのつながりから新たに「韓国版の『On Your Mark』をやってほしい!」というリクエストが。。。せっかく良いきっかけをいただきましたので、再び調子に乗って書かせていただくことにしました。

そこそこ有名!?色んな所って!??

タイトルを見て「チャゲアスに失礼やろ!」と思った方、ごめんなさい。
でもあくまでも韓国国内での話ですよ。近いとは言えども韓国は言葉も文化も違う外国。そんな場所で「『On Your Mark』がそこそこ有名」というのは、それはそれで褒め言葉だと個人的には思って使っておりますよ。
(↑ そもそも、チャゲアスに愛がある人間が書いてますので、そこは心配しないでだいじょぶです、笑。)

続いて気になってくるのは、「色んな所とはどこぞや!?」ですね。
結論から先に言いますと、韓国には『On Your Mark』が2種類存在します!

それは、
 1.スタジオジブリの短編作品としての『On Your Mark』
 2.大ヒットドラマのOSTとして使われていたカバー曲『In My Dream』
の2つ。
これらがどのように派生しているかは本文に書かせていただきますね。

この件、ちょっと長くなりそうですので、2回に分けての投稿として、
まずは
1.スタジオジブリの短編作品としての『On Your Mark』
についてまとめさせていただきます。

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※おことわり※
書いてみたら、今回はチャゲアス濃度2%くらいの、チャゲアス色が薄い内容になってしまいました!!爆
チャゲアスのカバー曲以外の情報はいらぬという方は、本記事はすっ飛ばしていただいて、「チャゲアスの『On Your Mark』が、韓国に行ったら今でも色んな所でそこそこ有名だった話。-2-」だけをご覧ください
韓国ドラマや韓国文化に興味ある方、よろしかったらご覧くださいね、笑。

それでは早速、今回のリサーチ結果をご報告させていただきます♪

韓国における日本のアニメ、どれほどの人気?

チャゲアスからはだいぶ距離がありますが、ここから話したほうが理解が深まると思いますので少しだけ我慢して読んでください、笑。

日本のアニメが今や全世界で受容され高い評価を得ているということは、周知の事実だと思います。実は、お隣韓国でも同様で、韓国では1960年代から日本のアニメがテレビで放送が開始され、当時から高い人気を得ていたようです。

日本のアニメが1960年代からテレビで放送!!!????
特にチャゲアスファンの皆様であれば、なんとなく違和感を感じられるはずです。そうです、2000年のチャゲアス韓国公演が「日本文化開放に合わせた公演」だったのに、「アニメだけ60年代から放送ってあり得ますか」ということですね。

60年代から日本のアニメが放送できたカラクリ

実は文化開放前、韓国において日本の大衆文化は、「表向きには禁止」としつつも「アングラではバリバリ消費」という構造が根付いていました。

北海道大学大学院メディア・コミュニケーション研究院准教授でいらっしゃる金成玟(きむ・そんみん)さんの博士論文『禁止と欲望―60-80年代開発独裁期韓国における日本大衆文化の越境―』(2013年/博士学位論文)『韓国「反日フェイク」の病理学』(小学館新書)の著者でノンフィクションライターの崔硯栄(ちぇ・そぎょん)さんのインタビュー内容を参考に、まとめさせていただきました。

韓国で日本のアニメが放送され始めたのは、1967年10月の「黄金バット」が最初でした。以降、1970年代のテレビ普及拡大期(1968年12万台→1978年500万台)に伴い、子どもたちの関心もマンガからテレビに移行、テレビアニメ人気に拍車がかかりました。

そして1970年代、1980年代。この時期には既に放送されているアニメに占める日本のアニメの比率は圧倒的で、金准教授の調べたところによると、年によってばらつきがあるものの、1975年から1986年の期間では61~82%程度もあったそうです。

ところが、これらのアニメは日本製ではなく、すべてアメリカ製もしくは韓国製のアニメと紹介されていたそう。なんと驚くことに、韓国製とされた作品については、日本色を消すために作品の背景や主人公の名前はもちろん、作者やスタッフのクレジットなどの日本人の名前も全て韓国人の名前にしていたとのこと・・・・それはそれで大変な作業だったでしょうね・・・汗

ざっくりですが、これが日本文化開放前でも韓国国内に日本のアニメが堂々と流通していたカラクリです。

1980年代に入るとようやく、アニメの多くが日本製であることも語られはじめられたものの、それでも日本のアニメは、子どもたちからきわめて高い人気を集めていたそう。
とにかくここで言いたいのは、文化開放はされていなかったけれども特にアニメに関しては、日本製に慣れきっていたということです!(←何とかまとめようとしている)

不思議な感覚!日本のアニメ主題歌を韓国語で!?

どのような作品があったかと言うと、古くは「鉄腕アトム」、「マジンガーZ」、「タイガーマスク」から「キャンディキャンディ」、「魔法使いサリー」など日本でも懐かしのアニメとされているもの、「ミンキーモモ」などもあったそうです。

この人気っぷりがいかなるものかと言いますと。最近はあまり見かけませんが、ちょっと前は、日本のテレビでもよく「懐かしのアニメ特集」などが特番などで放送されていましたよね?家族で見てお母さんたちが「ああ、懐かしいわね~」とか言いながら主題歌を歌っちゃう番組。もう20年くらい前になりますが、そういった類の番組を70年代生まれのコリアンの兄さん姉さんたちと見ていた(←当然日本でですよ!)ことがあったのですが、兄さん姉さんたちが全く同じメロディを韓国語で歌ってるんです。

日本製アニメ主題歌の定着っぷりを語るのにうってつけの動画がこちら。

大手生命保険会社である「教保生命」が2004年に放送したTVCMです。「마음에 힘이 되는 시 하나 노래 하나篇 / 心に力を与える詩ひとつ、歌ひとつ篇」というタイトルがついていますが、主人公の妻が夫を元気づけるシーンで「キャンディ・キャンディ」の主題歌を歌っています

そばかすなんて 気にしないわ

외로워도 슬퍼도 나는 안울어
寂しくても悲しくても 私は泣かない

「キャンディ・キャンディ」は1977年放送開始だったそうです。主題歌の冒頭だけを聞いても、ターゲットとする人たちならば誰もが知っているからこそ使われているということの証。韓国ドラマなどでも、聞いたことがあるようなアニソンを歌っているシーン、ありませんかね。とにかく、それくらい定着しているものなのです。

ジブリ作品はやっぱり韓国でも大人気!

ようやくジブリまでたどり着きましたが、まだまだ先は長いです。
ここでもう一度言います。チャゲアスだけ知りたい人は今すぐ離脱しちゃってください!笑

さて、ジブリの話に戻りまして。こちらも全世界で大人気ですので、なんとなく想像つくと思いますが、韓国もほぼ同様です。

表向きには日本のアニメ映画が解禁されたのは第3次解放2000年6月27日以降。おそらくジブリ作品は2000年12月30日公開の「風の谷のナウシカ」が第1号(観客動員数情報見つからず)、その次が「となりのトトロ」の2001年7月28日公開となっています。実は、「となりのトトロ」は観客動員数約25万人で韓国では興行に失敗したと言われています。というのも、日本で公開された1988年から韓国で公開されるまでの約13年間で、裏で海賊版(コピー品)が出回ってしまっていたために、観たい人は既に観ちゃってたから!笑。敗因がおかしなことになってますね。ただその後2016年にデジタルリマスター版を劇場公開したところ、それでも16万人くらいに見られているそうなので、コアなジブリファンや見たいと思っている人がいるのは間違いないですね。

※参考までに韓国映画市場の規模を感じていただくために言うと、韓国で公開された韓国国内外の映画作品全体の歴代1位は「バトル・オーシャン 海上決戦(原題:명량)」で観客動員数は17,613,682人。そのほかの有名なところで行くと、「アナ雪2」が13,747,792人で6位「グエムル」が13,019,740人で9位といった規模になります。 1700万人が見る映画、、、人口が約5200万人ということを考えると3.1人にひとりが見てるってどんな規模だよ
出典: 韓国映画振興委員会(KOFIC)の映画関連統計サイト「KOBIS」

※さらに参考。Wikiによると日本では「アナ雪2」の観客動員数は1460万人とほぼ同数ですが、人口を鑑みると「韓国の人口約5200万人」、対して「日本の人口1億2500万人」なので、母数を合わせると見に行っている人のボリュームは日本の2倍くらいのイメージですね。すごすぎる。

宮崎駿監督についても、韓国最大のポータルサイト「NEVER」にて、直接管理されている「NAVER 人物検索」のページ、そして「NAVER 知識百科」というページにしっかり記されています。有志のユーザーが編集するようなものではないので、ここに載っているということは、それなりに必要とされている情報、ということだと思っていただいていいと思います。

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もちろん、ジブリの『On Your Mark』作品に関しても同様に「NAVER 知識百科」で解説されてますよ♪

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あ。
韓国でのジブリの話が出たのでどうしても言いたいことが!!!!
『千と千尋の神隠し』の韓国語タイトル、紹介させてください!!!!

千と千尋の神隠し
센과 치히로의 행방불명 → 直訳:千と千尋の行方不明

いやいや・・・。「神隠し」は日本古来の特有のものだし、めちゃくちゃ翻訳しずらい単語だということはわかりますよ。でも、「行方不明」の意味も日本語と同じなのだから、フランス語タイトルの『Le Voyage de Chihiro(直訳:千尋の旅)』くらいに翻訳出来たらよかったのにね、と当時、思ってました。
今だったらもうもうちょっとセンスのいい翻訳してくれると思います♪

リサーチ途中で見つけた地方都市のカフェ「On Your Mark」

リサーチ途中で見つけちゃったんですよ。カフェを。
ただ、On Your Markそのものは普通に使われている言葉なので、関係ないかなと思いながら調べてみましたところ・・・・。

なんと、ジブリ大好きオーナーが作った正真正銘の『On Your Mark Café 』でした!!!!(← わかった時の私の感激、感じてもらえますかね。)

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ほら、ここにいるじゃない!!!!!!!

で、せっかくなのでこのお店のオーナーさんに連絡を取ってみました、爆。便利な世の中です。恥ずかしさや恥さえ捨てれば、すぐにSNSで連絡が取れます、笑。

このカフェのこと、ジブリのこと、チャゲアスのこと、聞いてみました!
(以下はInstagramのDMでのやり取りより抜粋しています。)

インタビュー: On Your Mark Café オーナー パクさん

――店内の写真を拝見させていただきました。コアなジブリファンでいらっしゃるのだろうと想像しましたが、数あるジブリ作品の中からお店の名前を「On Your Mark」とされた理由を教えてください。

私は韓国で生まれ育った韓国人ですが、中学生の頃からジブリが大好きでした。宮崎監督と高畑監督の作品が好きです。中でも好きな作品は「紅の豚」、「火垂るの墓」ですが、今回店名を「On Your Mark」にしたのはいくつか理由があります。
「On Your Mark」は、ジブリ唯一のMVであるということ、また、この短い尺にも関わらず宮崎駿監督に独特の感性がとてもよく入っている点もとても好きです。また、私が初めて出店するお店ということもあって、自分自身がスタートラインに立ったという意味も込めて、この名前を付けました。

――韓国のジブリファンの皆さんは、「On Your Mark」をどのように受け止めていますか。パクさんの個人的な感想でも構いません。

ジブリは、韓国の若い世代は誰もが知っています。私は1984年生まれの37歳ですが、いま大学生くらいの若者にもファンはいます。最近は韓国のNetflixでも見られるようにもなりました。正直なところ、ジブリの全盛期は過ぎたようにも思うのですが、それでも日本のアニメ界を代表する、本当に素晴らしいアニメ会社だと思っています。

ただ、ご質問いただいている「On Your Mark」はMVという性質上、韓国の劇場で公開されていないこともあり、本当のジブリマニアでなければ知らない作品でもあります。

――パクさんは「On Your Mark」を知ってから、チャゲアスに興味を持たれましたか?韓国内でチャゲアスはどれくらい知られてますか?

チャゲアスについては、実は「On Your Mark」しかわかりません。90年代に大変な人気を博したデュオということは知っています。宮崎駿監督も大好きな方たちだと聞きました。チャゲアスは、韓国の歌手であるパク・サンミンさんとも交友があるとのことで、韓国内でも話題になったことはあったと思います。

パクさん、ありがとうございました!

こんな通りすがりのチャゲアスファンに、こんなに丁寧に答えていただけるとは・・・。また韓国に遊びに行ける日がきたら、ぜひお店に行ってみたいと思います!(← ソウルから高速バスで3時間くらいかかるんだけどね・・行けるかな。。。)

アニメーションテーマカフェ「On Your Mark」
전라북도 익산시 동서로9길 29, 1층
全羅北道イクサン市ドンソ路9キル 29、1F
https://www.instagram.com/on_your_mark_cafe/

ジブリ人気に乗ってじわじわ知られてます!

わかったことは、まだまだ知っている人は少ないかもしれないですが、チャゲアスの「On Your Mark」はジブリ人気に乗って、韓国でも素敵なMVとしてじわじわ知られているということですね。「On Your Mark」で調べてみると、日本語のできる方が「歌詞が素敵だからぜひ見て!」という内容で韓国語翻訳を付けて紹介してらっしゃる方もいらっしゃるんですよ。

これから先、映像だけでなく、曲のすばらしさも韓国の皆さんに知ってもらえることを祈るばかりです!

-reference-

今回は本当にチャゲアス濃度2%になってしまいました。
長い長い文章、ここまで読んでいただきありがとうございました!

参考にした資料たち、まとめておきますー!

<論文>『禁止と欲望―60-80年代開発独裁期韓国における日本大衆文化の越境―』(2013年/金成玟)




<レポート>韓国におけるコンテンツ市場の実態(2007年 /JETRO)

<レポート>韓国におけるコンテンツ市場の実態(2007年 /JETRO)




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