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ピアノ再開一年のまとめ

昨年の9月17日に、25年ぶりにピアノを再開した。再開一年の記念として、再開してからのあゆみとピアノと私との関係について改めて振り返ってみたい。


4歳で始めたピアノをやめてから

ピアノは4歳から18歳まで先生について習い、そのあともときどき弾いていた。大学時代はビッグバンドのサークルに入ってジャズとかフュージョンを弾いていた。が、社会人になってからはまったくピアノに触ることもなくなってしまった。

実家ではずっとアップライトピアノを弾いていて、レッスンのときだけグランドピアノを弾いた。私がついていたのは個人教室の先生で、やさしい先生だった。年に一回発表会があった。最後の発表会となった高校3年のときにお別れの気持ちを込めて『別れの曲』を弾いた。

大学進学で上京したときも、ピアノのことを最初に考えた。引っ越してすぐに電子ピアノを購入。指が鈍らないように、毎日練習した。が、日々の忙しさにかまけているうちにいつしかピアノを弾かなくなった。電子ピアノはずっと部屋に置いてあったのだが、何年も埃をかぶっていた。

ピアノは弾かないでいると全然弾けなくなる。私はすぐに簡単な曲すら弾けなくなってしまった。ピアノというものを失ってしまったことが、私は悲しかった。誰かがピアノを弾いていると、「ああ、この曲を昔の私はすらすら弾けたのに」などと思う。けれどももう、指は動かない。仕方のないことなんだ、と思った。ピアノは私にとってもう過去なんだ。

それでも、電子ピアノを処分することはできなかった。引っ越しのたびに、場所をとる電子ピアノを運んだ。昔一緒に暮らしていたパートナーが、「弾かないなら処分すればいいんじゃない?場所とるし」と言った。確かに、弾かないピアノなんてガラクタだ。今後ピアノを弾くことがないんだったら、もう処分したほうがいい。引っ越しも毎回大変だし。けれども、どうしても処分することができなかった。ピアノに対する未練は何年も何年も燻り続けていた。そのくせ電子ピアノは埃をかぶり、その上にはさまざまな書類が乱雑に重ねられ、単なる物置と化してしまっていた。

25年ぶりのピアノ再開

昨年、時間ができたこともあり、ふとピアノの周りを片付けてみる気になった。ピアノを綺麗にすると、自然と「弾いてみよう」という気持ちになった。

恐る恐る指を走らせる。もちろん指は動かない。まずは指の練習、ハノンだ。弾いているうちに、楽しくなってきた。この調子で、昔よく弾いていたショパンのノクターン!と楽譜を取り出すも、あまりの難しさにクラクラした。昔の私はこんなに難しい曲を弾いていたのか。もちろんノクターンは全然弾けなかった。

その日からピアノを再開した。一日一時間弾いた。ハノンを30分、ノクターンは難しいからショパンのワルツを30分。

一ヶ月もするとワルツがいくらか弾けるようになり、自信をつけた私は「今後一年間で昔弾けた曲を弾けるようになろう」という目標を立てた。昔弾けた曲のなかには『幻想即興曲』や『愛の夢第三番』などの難曲もある。一日一時間の練習では足りない。私は30分のハノンのほか、楽曲の練習を一時間とることにした。

またこの曲を弾けてうれしい

そして、昔弾いていた曲を一曲一曲弾き直していった。楽譜は当時のものがある。どれも古く、ヨレヨレになった楽譜だ。ドビュッシー『アラベスク第一番』、シューベルト『即興曲90-2』が弾けるようになったときはうれしかった。昔好きでよく弾いていた曲は、指も覚えているようだ。もちろん思うようには動かないのだが、「またこの曲を弾けてうれしい」と指が喜んでいるように思えた。

ハノン一冊を半年くらいかけて終わらせ、そのあとは練習のはじめに音階やアルペジオだけやるようにした。そのほかツェルニーやバッハも基礎練に取り入れた。楽曲は、昔弾いていた曲以外にもシューベルト『即興曲90-4』やドビュッシー『月の光』など初めて弾く曲にもチャレンジ。そして少しずつ、昔弾いていた難しい曲にも着手しはじめた。ラフマニノフ『鐘』、ショパン『幻想即興曲』、リスト『愛の夢第三番』、ベートーヴェン『月光第三楽章』・・・。ピアノを再開したばかりのころは、「何年か後に弾けるようになればいいな」という思いだった。けれど今は、すぐに弾けるようになりたい。そのため毎日二時間近く練習した。

そのころには電子ピアノじゃ飽き足りなくなってきて、月に一度くらいの割合でスタジオに通い、グランドピアノで弾くようになった。弾けるようになった曲は収録し、インスタやnoteにアップした。聴いてくれた人の反応があるとうれしかった。

駅ピアノのチャレンジが分岐点に

今思うと、今年3月ころに上野の駅ピアノにチャレンジしたときが分岐点だった。私は駅ピアノで『幻想即興曲』を弾いたが、全然弾けなかった。家の電子ピアノではそこそこ弾けていたのに。電子ピアノじゃダメだ、と強く思った。日常的に本物のピアノで練習できる環境にしなければならない。

都内で賃貸で、レンタルピアノ付きの部屋はないか探した。賃貸だからピアノを買う気はなかった(買う気があったところで買えやしない)。いろいろ探したところ、都内の賃貸でピアノが置けて、防音設備が整っていて24時間演奏可能、という部屋を見つけた。家賃は嘘のように高い。が、全然空室はない。ダメ元でウェイティング登録をした。

それまで住んでいたところから近い部屋に空室が出たと通知がきたとき、すかさず申し込んだ。それでも自分がまさか本当にその部屋に引っ越すことになるとは夢にも思ってもいなかった。が、嘘のように審査に通り、引っ越しが現実的になった。引っ越すにはものすごくお金がかかる。そして私にはそんな経済力はない。それでも生ピアノを弾きたい。毎日生ピアノを弾きたい、その想いだけで、半ば無理矢理引っ越しを実行してしまった。

6月に私はピアノのある部屋に引っ越した。今は24時間いつでも生ピアノが弾ける環境を思う存分楽しんでいる。思い切って引っ越してよかったと本当に思っている。

再開一年で弾けるようになった曲

この一年で弾けるようになった曲をまとめてみた。暗譜で弾けるようになった曲を、弾けるようになった順に記載している。

ショパン『小犬のワルツ』
ショパン『ワルツ嬰ハ短調』
ドビュッシー『アラベスク第一番』
シューベルト『即興曲90-2』
ラフマニノフ『鐘』
ドビュッシー『月の光』
シューベルト『即興曲90-4』
ショパン『幻想即興曲』
リスト『愛の夢第三番』
ドビュッシー『パスピエ』
ベートーヴェン『月光第三楽章』
ブラームス『カプリッチョ76-2』
ドビュッシー『プレリュード』

これらの曲の一部は収録済みで、以下のマガジンに動画や音源のリンクがある。

今後の目標

ピアノを再開して一年は、「昔弾けた曲を弾けるようになる」ことが目標だった。そしてそれは達成できた。

今は、初めて弾く曲を練習している。あと半年を目処に今練習中のスクリャービン『エチュード8-12』とショパン『革命』を形にしたいと思っている。

そのあとは、ルビンシュタイン『天使の夢』を弾きたいと考えている。ルビンシュタインもそうだが、今後は弾いたことのない作曲家に挑戦したい。ラヴェエルとかシベリウスとかアルベニスとか。ラヴェルの『水の戯れ』は憧れだけど、さすがに無理だろう。アルベニスの『イベリア』も憧れだけど、何か弾けそうな曲はあるかしら。次に何を弾くかを考えているときが一番楽しいかも。

また、私は再開後はずっと独学でやっているので、そろそろまた先生につくということも考えている。先生についたほうがより早くより的確に弾けるようになるはずだ。ただ、一人でやっている気楽さに慣れすぎて、このままでも十分楽しいな、とも思っている。

ピアノライフは楽しいばかりではない。弾けない、練習がしんどい、と思うこともしょっちゅうだ。それでも私はこれからもピアノを続ける。私はピアノを一度失い、取り戻した。取り戻したそれを手放す気は、さらさらないからだ。

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