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Romi-Unie Confitureの第3ステージへ

ここ数週間、かなり頭もスケジュールも忙しいのですが、今年はイレギュラーなことばかり。いろんな立場の人がそれぞれ大変な2020年になりました。romi-unieにとってもかなりインパクトの大きい1年になったと思いますし、まだまだ混乱は続いています。のんき風情を装っていますが、経営者としての立場としては、決断に次ぐ決断を迫られる予測不能な環境への対応、そしてわけのわからない助成金・補助金の申請の書類の山に埋もれる日々はストレスフルで、大変な日々でした。でも、前にもっと大変なことがあったなぁと思い出して、それを乗り越えたことを自分の心の支えにしてきました。


それは、オープンして11年めの2015年のことでした。
まぁ、いろいろとあり、Romi-Unie Confitureをスタートしたお店の大家さんが代わり、愛着のある店舗の場所を出なければいけない状況になりました。

正直なところ、場所にはすごく執着していたのですが、ある瞬間に、怒りのあまり、ふっとその執着心が消えました。でもそうは言っても、その前から移転場所を1年くらいゆったり探していましたが、そうそう移転場所が見つかるはずがないと思っていましたので、怒っている気持ちや押し寄せる不安とか、この状況を解決する策を練らなくちゃという焦りや、天や神様への祈りなどなどいろんな気持ちをかかえながら、もうその日の午後は心の赴くままに歩いていたんです。
途中で物件を見たり、地元の不動産屋さんに相談したり、入ったことのない家族経営の不動産屋さんの扉を開けた光景が今でも時々目に浮かびます。

フランス映画のさえない主人公の1シーンみたいな感じ。不動産屋さんの年季のいったおじいさんが『なんだい、お姉ちゃん?』みたいに、あからさまに話を聞いてくれそうにない。『どのくらいの広さがいいの?』いろいろとその前に計画を立てていたので、私はその時のお店の3倍ほどの広さを言ってみることに『50坪くらい・・・?』。そのおじいさんには、一笑されました。『ないない!そんな広い物件、鎌倉には出ないんだから!(寝言言ってるやつに付き合う時間はないから帰れ!)』 あー心の声が聞こえてしまった。もう泣きたい気分はMAXで、映画ならば間違いなく外はどしゃぶりの雨なのである。実際はふつうの曇り空の夕暮れ時、あてどなく歩いたら、そこから3分とかからない、いつもは通らない道(正直5年以上は通っていない道だった)を歩いていた私の視界に飛び込んできた『テナント募集 50坪』の文字。その時の私の第一声は『ちょ、おじさん、あるじゃん!』でした。

すぐにその看板に書いてある不動産の電話番号に電話、鍵の開け方をその場で教えてもらいながら、何もない状態のいわゆるスケルトンの店舗物件に入りました。『あぁ、ここだ!』と思いました。そして、どこからかその場にいた妖精なのかニームなのか、まっくろくろすけなのか、わからないけど、目に見えないものの声も『そう!ココだ、ココだよ!ココにおいでよ!』と私に一斉に言ってる気がしました。そうしてできたのが、今のお店です。いろんな夢を詰め込める広さがあって、それまで大家さんトラブルに巻き込まれながら半年ほど構想を練ってきた計画があったので、いろんな頭に浮かぶお店の景色を形にするのは、割とスムーズにできたと思います。

クレープ小屋も、そんな私の夢のひとつでした。クレープ小屋で、ジャムの量り売りもしながら、クレープを焼いて・・・。店頭で、様々な人達がクレープを食べている光景は、本当に幸せを絵にかいたようでうれしかったし、私はとても幸せで満足でした。
すごくいい空間だったし、クレープもシンプルで理想的だったし、実際とっても美味しかった。

でもこの時代の転換期に、クレープ小屋は終わりにすることにしました。お客様からも、とても惜しまれましたが、人通りのない鎌倉のゴールデンウィーク(romi-unieもゴールデンウィークは休業でした)を体験したショックは、心に大きな穴が開きました。

お客様の来ないお店に立つというのはすごくすごく寂しいものです。ヒマなお店、楽でいいじゃん。そういうんじゃないんです。儲からないから?(グサッ。心無い言葉がメンタルを削ります) クレープの鉄板を熱しながら、日に数人のお客様を待つのが仕事だなんて、つらすぎる・・・。そこに立つのは私じゃないけど、スタッフだって同じです。
それまでもお店のつくりでちょっと無駄に感じていたスペースなど、思っていた販売にならないジレンマを感じていたことも、いつか解消したいと思っていました。
感染症の不安に包まれる世界、時代、これからの展開に迫られ日々・・・。今までのことに執着していないで、私たちには他にも新しい役割があるんじゃないかと思わされることがたくさんやってきました。
商売の正解がわからない状況がいつまで続くのかわからないし、スタッフのみんなの能力をどうしたら仕事として成立させるのか、仕事を考えるのは経営者の大事な仕事だと思っています。
いろいろな困難に思える日々の中で、5年前のあの日出会って、私達に与えられたこの場所を、新しいステージに展開させる時期がやってきたも・・・と感じ始めました。

何か新しい未来に踏み出す力もほしくなりました。そして6月には、クレープ小屋を改装する計画を立て始めたのです。その頃は、会社の助成金などの苦手な書類仕事にも追われていたので、業者の人と打ち合わせを重ねたり、スタッフに説明したりするのも、日々仕事としては溢れまくっていましたが、今でしょ!という心の声に従う他ありません。
きっと飲食のお店やお菓子屋さんは、世界中、切実な決断につぐ決断の連続に直面していると思うし、この感じは、前の物件トラブルを乗り越えた自分ならがんばれる!と信じたいという気持ちがあります。

そんなわけで、10月5日から改装工事が始まりました。最終的な工事は入口を一部直す1月末までかかります。10月末までは仮囲いを作り、中の改装をしながら営業をしていますが、意外とお客様は不自由を感じていないみたいで(笑)、雨の日も台風の日も、楽しそうにお買い物をしてくださる様子を見るととてもうれしくなります。私、お菓子やジャムをおすすめするのが大好きな仕事なので、お店のことを考えたりしながら、最近はよくお店に出ています。お店の改装の様子もだんだん出来上がっていくのを見るのは楽しいんです。

さて、改装している新しいスペースでは、スコーンはもちろんですが、タルトとかフランとか、romi-unieらしい、鎌倉や湘南のご近所の方々の暮らしに、うまくフィットできるような気軽なおやつになるお菓子を作りたいと思っています。
romi-unieのいずみちゃんと一緒に、編成した新しいスタッフとチームを作り、試作を重ねているところです。せっかくご近所さんであれば、ジャムの量り売りももっと利用してもらって・・・と思っています。量り売りのジャムの種類もできるだけ増やしていきたいです。
それと、Web Shopで好評なスコーンの冷凍生地も続けていきたいと思っています。正直なところ、これから続けていくのにも製造に無理をしながらスコーン生地に取り組んでいることもあるので、製造場所の改装は続けていくのには必要なことでした。
実は、スコーン冷凍生地は、店舗の休業で焼けなかった材料を無駄にしないように販売したのがスタートでしたが、すごく好評で、Web Shopでもずっと続けています。

このスコーン生地の販売、私が仕事の基本にしている『お菓子づくりの楽しさを広げる』ということにすごく直結しています。
スコーンの焼き立ては、焼くだけという行為なのに、焼いている間の香りや焼き立てのお菓子を食べる・・・という、お菓子作りの楽しさを体験してもらえるすごくいいものでした。
自分でも冷凍庫にスコーン生地があるのはうれしいし、だから、これは続けていきたいなと思っているんです。スコーンは、ジャムをぬって食べれば満足だからプレーンが一番!と今でも思っていますが(笑)、でも季節によってマロンのスコーンにマロンのジャムで追いマロンをする贅沢や、紅茶の香りのスコーンにフルーツのジャムで味わいを広げる喜びもありますよね。これからは、季節のスコーンもちゃんと展開したいと思います。

新しい場所ができてから、少しずつ形を作りたいと思っていますので、華々しくリニューアル!バーン!みたいな感じにはまだまだなりませんが、これからがRomi-Unie Confitureの第3ステージだと思っています。まだまだ成長期です!

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