「選抜」ではなく「個々の成長」を。いわきFCが取り組むメディカルとトレーニングの融合 〜SAJ2019メモ(2)

#SAJ2019 での個人的な講義メモです。自分が気になったところ、解釈して記述しているので、講演者の考えとズレているかもしれませんのでご了承ください。

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タイトル:フィジカル✗データ革命〜データ解析・遺伝子解析による怪我の予防とストレングストレーニング
いわきFCチームドクター 齋田良知 氏、いわきFC パフォーマンスコーチ 鈴木拓哉 氏、株式会社ユーフォリア 宮田誠氏

・ユース世代のサッカー選手数は、日本は世界9位。イタリアより多く、ベルギーの3倍、韓国の30倍いる(FIFA Big Count2006より)。育成の効率を考えるべきでは?

齋田ドクターより

・怪我最大のリスクファクターは「受傷歴」1回ケガをすると次のケガの可能性が高まる。だから「治療」ではなくてその前を見る“Prevent first injury.”

・2018年臨床スポーツ医学会で「サッカー選手の疲労度数値化の試み」について発表
・疲労のモニタリング:尿比重(脱水)、長座位前屈(筋疲労)、バーティカルジャンプ(協調運動)、眼調節力(神経疲労)→計測の簡単さや再現性があるかなどを優先して選択、計測記録をタブレットで入力
・5項目全て(バーティカルジャンプは2項目ある)悪ければレッドカード、4項目が悪ければイエローカードとして、トレーニングの負荷を調節する。ネガティブなトレーニングは疲労でしか無く、怪我につながる

・UEFA「ELITE CLUB INJURY STUDY」各チームの怪我の情報が共有されて活用されている。
premier injuries :プレミアリーグのケガの情報が誰でも見られるようになっているサイト。日本だとケガ情報を公開するかはクラブによってまちまち

・アジアでもAFCがカタールの病院とともに同じような取り組みを開始。しかしJリーグのチームは鹿島アントラーズのみ。→いわきFCが新しく加入。レポートが発行され、他のチームと比べてどんな怪我が多いか、どんなことで怪我をしているかなども共有される

・個人差、性差・成長度合いをみて、トレーニングは変える必要がある。性別や身長と違い、検査しないとわからない要素が遺伝子検査:ACTN3遺伝子と選手特性
育成の指導者の評価は、結果ではなく選手の成長であるべき。成功ではなく成長をサポートするためにデータを取っている

鈴木コーチより

・正直、最初の年は全員に同じ負荷をかけていた。結果、ある選手は1年後に筋量が落ちていた。→選手ごとに違う取り組みをしないといけないと考え、2017年5月に遺伝子検査を導入

遺伝子型別トレーニングは、選抜のためではなく、効率的トレーニングのため。強度ボリュームや頻度を分けることによって、全員をResponderにし、個人がそれぞれレベルアップする
・XXの持久系トレーニングでも、パワー系指標(パワークリーンも、バックスクワット、ベンチプレス)が向上した。在籍年数にかかわらず積み上げて効果が出ているので今後も継続する

宮田氏からの質問より

・ストレングスのトレーニングの頻度は? スピードは犠牲にならないのか?→ストレングスは週3回、1時間ぐらい。スピードに関しては、専門のコーチ、トレーニングも入れている

・AFCのケガ統計に、なぜ日本サッカー界は参加しないのか→ケガの統計をとることが、ビジネスにつながる形がない。医学界での報告も自チームとか自院のデータのみ。例えば保険会社と競技団体が連携したりすれば調査が進むかもしれない。また、自分のチームのケガ情報を外に出したくないというクラブもある。

・サッカーくじをやっているのに、選手のケガ情報(出場可能かどうか)がクローズになっているのは、あまり良くないのではないかとも思う。欧州にはtransfer markt という、移籍に関して選手の価値を算出したサイトがあり、そこに選手のケガ歴もオープンになっている。

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齋田ドクターの講演はSPORTS Xでも聞いて非常に興味深かった(ヨーロッパのクラブのメディカル体制など)が、今回は遺伝子検査を中心に個別トレーニングの必要性が中心。これから人口が減る一方の日本で、いわきFCの取り組みが成功して個々に合わせたレベルアップが広がっていけば、日本のスポーツ界全体に大きな影響が出ると思う。

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SAJ2019メモ(1)はこちらから

※SAJ2019のメモはまだ続きます。


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