飛梅

和が好きだ。
綺麗な言葉で綺麗な日本の風景を描きたかった。
別にそれ以外に伝えたいことなどはなかった。

こんにちは。
インターネット音楽マンの朧(https://twitter.com/ron_obo)です。
現在8/29ともはや暦の上では秋ですが、急に気が向いたので今年の2/10にYoutubeとniconicoにupした『飛梅』という曲についての雑記をやろうと思います。すでに途中までしたためていた文章があり、死なせるのももったいないで…。

■書き始めたきっかけ


実は2022年2月ごろ書いた曲だった。
梅の花は早いものだと1月に咲くものから、3月や4月に咲くものまで品種によって開花時期に幅があり、桜ほど時期が限定的ではない。
ただ、多くは2月の上旬~中旬ごろに開花を迎え、2月~3月上旬に見ごろを迎える。
自分は、梅の花が好きだ。
花の1つ1つが小ぶりで、群生していても桜ほど派手に咲き誇らない。
見た目の圧巻さで言うと桜に軍配が上がるだろう。
かくいう自分も桜は好きだが、梅はむしろその慎ましやかさや淑やかさが良さだと思う。
あと花が小ぶりなぶんあの印象的な枝にも目が行く。いいよね、梅の枝。枝込みで梅だなあという感じ。

そんな大好きな花である梅を讃えた曲、なくない?と思い書き始めたのがきっかけだった。

■作編曲について

珍しくメロディーとサビ歌詞の「あけぼのに薫るは梅」と、ストリングスの編曲が同時に下りてきた曲だった。やらなければならない他の作業をしながら。しかしそうなったらこうしちゃいられない。目の前の作業は全く手につかない。傍から見れば上の空だったと思うが自分の頭の中はフル回転していた。その日中に歌詞と、サビのおおよそのメロディは脳内で書き終えていたと思う。

ヨルシカ - 春泥棒

こんな綺麗な曲かけたらいいな~と思ったのはまずこれのおかげかも。
こんなに綺麗な桜の曲があるんだな~と思った。リズム隊が大きく空けたスペースに、綺麗な声とメロディーで奏でられる「はらり」という響きのなんと美しいことだろう。
そんなことが梅の曲でできたらいいなと思った。きっかけの曲かもしれない。

さくらのうた / 福田洋介

吹奏楽では有名な曲。
この曲の主題の部分のゆったり壮大な感じをイメージしてサビ裏のストリングスを書いた気がする。全体の雰囲気、叙情的で春先の冷たい空気感とかもこういう感じで出せたらいいな~と思いながら。

そしてもう一つ自分に大きな影響を与えた曲があるが、なにせ公式記録的な演奏がない。
また訳あって伏せたいので伏せさせてもらう。

■歌詞について

タイトル通り、そして歌詞を見てもわかる通り、菅原道真の「飛梅伝説」のオマージュである。

"東風吹かば匂ひおこせよ梅の花 あるじなしとて春な忘れそ"

菅原道真がこよなく愛する梅の花。
彼は都の自邸に梅を植え、愛でていた。その後藤原氏の反感を買い大宰府に左遷となったが、梅の花に別れを告げる時に残したのが上記の歌である。その後主人を慕い、風に乗って大宰府まで辿り着いた梅がその地に花を咲かせたという逸話。
烏滸がましくもぼくが梅目線になり、飛梅伝説をモチーフにその返歌を書いたのが今作の飛梅だった。

上述の通りサビ歌詞の「あけぼのに薫るは梅」は勝手に下りてきたフレーズで、その後は梅を少女に擬人化するような心持ちで詞を書いた。
「東風吹かば~」のほかにも5~10くらいの和歌に対するオマージュが入っている。また「あけぼのに」をいうフレーズを用いたのはお察しの通り枕草子/清少納言の冒頭「春はあけぼの」から連想している。

もうバレてると思うがぼくはめちゃくちゃ古語や日本の文化史が好きである。
全部を紹介しているとキリがないので、あと何を参考にしたか忘れたので、そのうち1つを紹介する。

"散りぬればにほひばかりを梅の花 ありとや袖に春風の吹く"

「散ってしまって袖には香りだけが残っているのに、まだ咲いていると思ってか、花を散らすかのように袖に春風が吹いているよ」
美しいね~。梅は香りに言及する歌がとても多い。そこも桜との違いかもしれない。

ちなみに「散る」というと、その限りではないが桜の花を指すことが多い。
ではほかの花はと言うと、椿は「落ちる」、梅は「こぼれる」。
花が散るさまを表す言葉がそれぞれの花に対し存在している。そんなところが日本語の好きなところだなあ。

■MVについて

「ひとりきりクリスマス」に引き続きイラストはciElo(https://twitter.com/Cielo_paint)様に描いていただいた。

また電話でヒアリングしてもらい、イメージを伝えていった。
割と頭の中に明確にイラストのイメージがあったが、それよりはるかにいいものにしてくれた。
袖にあたる部分に描かれた梅の花弁と葉を数えてみると「五・七・五・七・七」になっていたり、襟の部分には可不ちゃん特有の意匠がくわえられていたりと、細部に遊び心を入れてくれた。そういうのすき。

ちなみにMVの前面を覆う梅は紅梅だが、実は菅原道真の生前(西暦850~900年あたり)は梅といえば白梅で、紅梅が日本に伝来したのは少し後のこと。
また、平安時代の服装というと十二単が思い浮かぶが、平安時代と一口に言ってもかなり長く、初期と末期では約300年もの隔たりがある。それだけあれば時期によってかなり着物の雰囲気も違う。
菅原道真の頃はというと服装にはやや奈良時代の面影があり、十二単が確立されたのは彼の死後50年くらい経ってからである。
など、理想とする図に対し時代考証が微妙に合わなかったのであるが、苦悩の末、MVはイメージビデオなのでまあいいじゃないというわけで強引に梅は紅に、着物は十二単にした。

和風の曲好きなので今後もどこかで作りたい。その時にはイメージだけじゃなく時代考証も重要にしながら、MV作ってみたいな~とか思う。

■総括

特になし

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