建築家との敷地選びが不動産価値を最大化する。OZONE×創造系不動産コラボレーション

「どんな敷地を選ぶのか、その敷地のどこに魅力を感じたのか。そういうところに施主の価値観が強く現れるんだと思います」

最新作である「街の家」で、創造系不動産と協働して土地探しから住宅の設計に携わった建築家ユニット増田・大坪の増田信吾さん。これまでは敷地が決まってから設計の相談を受けていたため、敷地を選ぶ段階から施主とコミュニケーションができたことは新鮮だったと言います。

「施主がなぜこの土地を選んだかというと、この場所のもつ2面性が理由でした。商店街の中心にある場所なので通り側はとても活気がある。一方で間口が3メートル、奥行きが15メートルと細長い敷地なので奥に行くととても静かで親密な雰囲気があるんです。その両方を兼ね備えていたことが、ご夫婦おふたりの希望に合って、すんなり決まりました」

「街の家」立面イメージ。創造系不動産HPより

旦那さんは街と連続した人とのつながりを、奥さんはよりプライベートで開放的な、空とのつながりを、それぞれ住宅に対するイメージとしてもっていたそう。この場所であればその両方を叶える住宅を設計できる、と感じたのは建築家である増田さんのセンスによるものでしょう。

「これまでは土地が決まってから設計の依頼を受けて、そこに建てる建築のデザインを考えてきました。でも施主にとっての家づくりはもっと前段階からはじまっています。建築家も設計の前段階から関わっていくことで、発想も広がっていくし結果的にできる建築も違うものになるはずです」

そう語る増田さんの口調が、創造系不動産とのコラボレーションが成功だったことを裏付けています。「街の家」は玄関を4.5メートル上空にもち上げ、1階を街と地続きの外部空間とする構成。ここでは商店街の人に期間限定のお店を出してもらったり、一緒にイベントを開催したりといったことを考えているそうです。最上階は商店街を上から見下ろす高さになるため、遠くまで見渡すことのできる開放的な空間になっています。ご夫婦ふたりの相反する要望が見事に実現された住宅です。

この日はリビングデザインセンターOZONE創造系不動産による業務提携に関連したプレスイベント。しかし提携についてのプレス発表ではなく、建築家・藤原徹平さんがファシリテーター、創造系不動産代表の高橋寿太郎さんがコメンテーターを務め、増田信吾さんと中川エリカさんという注目の若手建築家を招いてのトークイベントで会はスタートしました。増田さんと中川さんが、「土地選び」の観点から近作について語ることで、建築家が不動産会社とコラボレーションすることでどんな価値が生まれるのかを考えてみようという趣向です。

「桃山ハウスの敷地は、古い擁壁が連なるところにありました。施主は半分崩れた擁壁がそのまま放置されているような大らかさが気に入ったそうです」

中川さんが設計した静岡県熱海市の「桃山ハウス」の場合は、施主から相談があったときにはすでに敷地は決まっていました。それでも施主がなぜこの敷地を選んだのか、その理由を掘り下げていくことで、施主が大切にしている価値観が見えてきたと言います。

「東京との二拠点居住のために熱海に住宅を建て、ゆくゆくはここに定住することを考えているそうです。施主は都心のマンションのような精度が高く失敗の許されない緊張感のある建物とは異なるものを求めていました。この場所にはこれから新たに作ろうと思っても作れないものがたくさんあり、そうしたものを新しい家にも取り込むことを希望していました。古いものと新しいものをいかに混在させていくかを考えて、敷地自体を建築にするというアイディアにつながっていきました。この住宅では塀や庭の樹木など、人間がコントロールできないものも建物の材料としてとらえています」

「桃山ハウス」模型。erika nakagawa office HPより

「桃山ハウス」の場合は、特徴的な敷地だったことからなぜその場所を選んだのか、入念なヒアリングが行われたのだと思います。結果的に施主にとって重要な価値観をすくい取ることができ、そこからインスピレーションを得て設計の方針が固まりました。増田さんとは異なるアプローチではあるものの、「土地選び」に建築家がコミットすることによって建築の価値を高めることに成功した事例のひとつといえるでしょう。藤原さんが「土地も家も選び放題の時代」と話すように、条件が決まれば自動的に土地も決まってしまった時代とは異なり、土地を選択するための根拠が必要になってきます。建築家がそこに設計のヒントを見出す事例はこれからますます多くなっていくでしょう。

土地選びに建築家が関わることは、建築家にとっては大きなチャンスにつながりそうです。では一般の顧客にとってはどうでしょうか。建て主にとってのメリットにどのようにつながっていくのでしょうか?
クロストークの後に行われた両社による発表は、OZONEと創造系不動産との提携が、より顧客満足度を高めるための施策であることを強調するものでした。

「家を建てることは、住宅を設計することだけでなく、どのようなライフプランを描くのかというところからはじまっています」

20年も前から家づくりのトータルサポートを行ってきたOZONE。顧客のニーズ応えるさまざまなサービスを提供しています。多数の登録建築家のなかから、顧客のイメージに合った建築家を提案することもそのひとつ。ひとつひとつのサービスが顧客ファーストを追求するなかで築かれていったものです。

「資金が決まっているなかでどのような配分にするのかは、家づくりに大きく影響します。敷地の選び方次第では顧客のニーズを満たしつつ、無駄な出費を抑え少しでも多くの資金を建屋に残すといったことが可能になります。そこで不動産の知見のある創造系不動産と組むことで、双方の強みを生かした提案ができるだろうと考えました」

家づくりにはさまざまな不安や困難が伴います。今回の提携でもOZONEは施主に対するさまざまなケアに力を入れるそう。一方の創造系不動産は、「街の家」で増田さんから相談を受けたように、意欲的な建築作品をつくる建築家とのコラボレーションを得意としています。「建築と不動産をつなげる」ことを理念とする創造系不動産は、敷地に建つ建築物の価値を高めることで、土地の不動産価値を高めることに挑戦しています。日本では不動産的価値と建築的価値が別々に評価されてきました。両者をつなげることで顧客満足を追求する創造系不動産の事業モデルはこれまでにない視点です。建築に対する高い知見があってこそ可能となる新しい取り組みです。
世の中に少しでも多くの良質な建築を提供していきたいというOZONEと創造系不動産。志をひとつにしながらも、異なるアプローチで建築界に貢献してきた両社の提携は、これまで取りこぼしてきたニーズに応える、痒いところに手が届くサービスとなるでしょう。

建築と不動産のフロー。OZONEは各フェーズでの顧客ケアを行う

2018年8月に業務提携を発表してから約3か月。具体的な事例の紹介はありませんでしたが、すでに4つの案件に着手しており、そのうちのひとつは建築家も決まって具体的に動きはじめているそうです。
両社の業務提携がどのような成果を生むのか、1年後あるいはもっと先になるかもしれませんが、次はぜひクライアント側からのお話を聞いてみたいですね。



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