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無限の好奇心への入り口

こんにちは、ロンロ・ボナペティです。

突然ですが、皆さんには好きな建築がありますか?
よく遊びに行く建築、また行きたい建築、いつか行ってみたい建築・・・。
そんなこと言われてもちゃんと考えたことないなぁ、、、そう思われる方も多いかもしれません。
「建築」を、例えば「レストラン」や「お洋服屋さん」、「美術館」などに置き換えると、すぐに好きな場所が思い浮かびますよね。
でも私がここで言っているのは、純粋に「建築」を楽しんでいますか? ということ。
今あなたがイメージした場所が、何の機能ももたない建物だけのがらんどうになった時に、それでも行きたいと思いますか? という問いです。
ちょっと何言ってるか分かりません・・・、そんな声も聞こえてきそうですが、ここではそんな人にこそ読んでいただきたい内容をまとめてみました。
建築がわかるようになると「無限の好奇心」を手に入れたハイパー無敵状態になれるので、ぜひ読んでみてください。

建築を理解するのは本当に難しい
まずはじめに、ある建築をきちんと理解するのは難しい、という話をしたいと思います。
こちらの写真をご覧ください。すべての建築がひとつひとつ、まったく違うかたちをしていますよね。

全部同じにしてしまえば安く上がるのに・・・と思うかも知れませんが、建築は
・機能(どんな目的で使うのか)
・施主(誰のお金で建てる建築か)
・使用者(誰が使うのか)
・設計者(誰が設計するのか)
・経済(どのくらいお金が使えるか)
・立地(どこに建てるのか)
・意匠(どんなデザインにするか)
・構造(どう組み立てるのか)
・規模(どんな大きさか)
・環境(どんな気候の土地に建てるのか)
・時期(いつからいつまで使うのか)
・快適性(室内の環境)
・利便性(使い勝手)
・技術(どんな方法でつくるか)
・文化(その土地の文化を反映しているか)
・歴史(建てられる時代背景)
などなど、実にさまざまな要因により、かたちが決定されていきます。

そして、ひとつとして同じ条件のもと設計される建物はないのです。
これだけ複合的な理由で出来上がった建築を見て、そのすべてをきちんと理解するというのは土台無理な話。
設計者や、設計者と何度も打合せを重ねた施主であれば、かなりの理解度でしょうが、無意識の内に決定される部分も少なからずあるはずです。

例外としては、公営団地や学校建築、ハウスメーカーの住宅など、多くのスペースを効率的に大量供給する必要がある場合。
個々の建物にコストをかけることができないので、上記の条件のうちいくつかのパラメーターを固定して、考える必要がないようにしてしまう。
最も経済的なかたちをどこにでも展開できるようにしておき、あとは敷地の条件や規模など、若干の変更を加えて同じ建物を建てるというやり方です。
経済合理性が重要視される建物では多く採用され、オフィスビルなんかも、比較的無個性で似たような建物が多いですね。
今では当たり前になったこの考え方も、実は近代に活躍した建築家たちが実現した「発明品」なんです。が、その話はまたの機会に。

難しい、だからこそ面白い
さて、建築って難しいんだなというのがわかったところで、だからこそわかると面白いよ、というお話です。
ちょっと話が飛びますが、こちらの3枚の写真をご覧ください。

いずれも2000年代以降に建てられた美術館建築です。(上から 新国立美術館/東京/黒川紀章/2007年 金沢21世紀美術館/金沢/SANAA/2004年 テート・モダン/ロンドン/ヘルツォーク&ド・ムーロン/2000年/リノベーション)
設計者や場所は違えど同じ時代に、同じ目的でつくられたのに一見なんの共通点も見出せないくらい全然違うかたちをしています。
それぞれの設計者が何を思って設計したのか、なぜこのようなかたちになったのか、気になりませんか?

名作と言われる建築作品は、いずれも理屈抜きで心地よいと感じる、人の感性に働きかける力をもっています。
けれどなぜそうした空間が実現されているのかがわからないと、素通りしてしまいますよね。
建築がわかるようになるというのは、ある建築が生まれた背景を、上記のような多角的な観点から推測し、自分なりに納得できる解答を見つけられるようにするということです。
それができるようになると、何気なく町歩きをするだけでも眼に映るものすべてに興味をもてるようになり、片時も飽きることがありません。
そしてきちんとその答えを出せるようになるためには、建築のことだけを学んでも不十分で、さまざまなことに興味・関心をもつ必要があるんですね。
もちろんそうして身につけた知識は、建築以外のものを見るときにも役に立ち、さまざまな発見を得られるようになります。
建築が無限の好奇心への入り口になる、と言った意味がお分かりいただけるでしょうか。

普段私が一緒にお仕事をさせていただく建築家と呼ばれる方々は、与えられた条件に対して、単に合理的な回答を導き出すのではなく、その中でどんな建築が実現できるか、創意工夫を怠らない人たちです。
どんな視点で見ても、オリジナルのアイディアが隠されている。
なぜならば、彼ら・彼女らが実現したいのは、目の前のクライアントを喜ばせるだけの建築ではなく、自身の「作品」としての、建築の歴史を切り拓くものだからです。
誰も見たことのないものだからこそ、実現するためにさまざまなハードルがあり、人類史上初めての課題に直面することも。
中途半端な仕事をしてはトラブルが発生したり、自分が本当に実現したかったものに到達できない可能性もあります。

そして、なぜそのような建築をつくろうとしたのだろう、ということを紐解いていくと、それぞれの建築に固有の歴史や背景が見えてくるのです。
だからこそ、良いと思った建築は調べれば調べるほど思いもよらない発想が隠されていて、興味が尽きない対象になり得るんです。

私は普段、建築好きの人たちに向けて本をつくっているんですが、常々建築の面白さが一定の知識・リテラシーを備えていないと理解が難しいものであることに歯がゆさを覚えています。

もっと建築の面白さを幅広い方々に知ってほしい、建築を通じて得た発見を色んな人と共有したい、と思っています。
そのために専門的な知識がなくても楽しめる記事を書いていこうと思っています!

ちょっと具体性のない話になってしまいましたが、今後noteで記事を書いていくにあたって自分の立ち位置を整理しておきたいという思いでまとめてみました。
「建築のこんな話聞いてみたい」「家の近くに有名な建築があるんだけど何が凄いの?」「こんな話もしてみたら?」などなど、感想・ご意見もお待ちしてます!

最後まで読んでいただきありがとうございます。サポートは取材費用に使わせていただきます。