中村将大

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中村将大

https://readdesign.jp/ ■お問い合わせ: masahiro.nakamura@thu.ac.jp

最近の記事

「用即美」の「即」

民藝——柳宗悦による「用即美」の「即」。これをどのように解釈すると、わかりいいか。 工藝風向 高木崇雄さんによる著書『わかりやすい民藝』[ D&DEPARTMENT ] でふれられているよう、柳宗悦自身の文章からは「用の美」ということばは(いまのところ)みつけられないとのこと。世間的に定着してもいる「民藝=用の美」というイメージ。それが意外にも当人の発言になかった(かもしれない)……というのは、いろいろな意味において興味ぶかい。とはいえ、柳のかんがえをみてゆけば、たしかに「

    • 映画『夜明けのすべて』感想メモ

      話題になっている『夜明けのすべて』原作小説とあわせ映画もみてきました。原作と映画のちがい、さまざまあるけれど大枠の変化はなく、むしろ映画のほうが薄味かつ滋味ぶかい印象をうけました。 ここからは、いわゆるネタバレをふくみます。 『夜明けのすべて』主人公のふたり。藤沢さんはPMS、山添くんはパニック障害をかかえている。いかに自身とむきあうか。そのうえでまわりと接してゆくのか。そして、まわりはどう接してゆくのか。絶対的な解決はない課題に、日々すこしずつ前進してゆくプロセスをみてゆ

      • デザイン教育のデザイン——番外編: 当時とすこし変化したこと

        note記事。2019年にお話ししたものが、この数日、けっこう読まれているようです。ありがとうございます。ちょうど文化におけるモダニズムについて考えはじめたころのこと。この段階では西洋と東洋を対比的にみていて、解像度あまいところがあります。いまとなっては差異もあれば、共通項もあるという解釈。 それは視覚の優位性についてのはなしかもしれない。人類史における革新的な時代をみれば、不思議なほど視覚優位な文明にもみえてきます。 たとえば谷崎潤一郎『陰翳礼讃』にみられる近代の課題。

        • デザイン教育のデザイン——4: 教員と受講生の対談①タイポグラフィ編

          「デザイン教育のデザイン」として、筆者が2009年から2021年まで携わった美術系専門学校4年制デザイン学科の教育プログラム、その設計プロセスについてこれまで四回にわたり記事を公開しました。想像以上に読んでいただいていること、とてもうれしくおもいます。 これからしばらくは各領域における、担当教員と受講生の対談記録を紹介してゆきます。デザイン教育プログラムを実践するにあたり、教員がどのような意図で授業を設計し実施したのか。そして受講生の立場から、その教育効果や経験はどのように

        「用即美」の「即」

          デザイン教育のデザイン——3: デザイン基礎過程の考察と実践

          「デザイン教育のデザイン」として、筆者が2009年から2021年まで携わった美術系専門学校4年制デザイン学科の教育プログラム、その設計プロセスについてこれまで三回にわたり記事を公開しました。想像以上に読んでいただいていること、とてもうれしくおもいます。 前回はそのデザイン教育プログラムの最終系を紹介しました。そのプログラムにおいて基礎過程を構築することが、ひとつの課題となったこともあわせてお話ししたかたちになります。ここでは「デザイン教育のデザイン——3: デザイン基礎過程

          デザイン教育のデザイン——3: デザイン基礎過程の考察と実践

          デザイン教育のデザイン——2: デザイン教育プログラムの設計と可視化

          「デザイン教育のデザイン」として、筆者が2009年から2021年まで携わった美術系専門学校4年制デザイン学科の教育プログラム、その設計プロセスについてこれまで二回にわたり記事を公開しました。 前回はその基礎となるデザインの定義。またコミュニケーションデザインという学科の冠について検討し、またその要としてタイポグラフィ系授業を設定したことについて、お話をしています。 最終的なデザイン教育プログラム 今回は本格的な各論にはいる前、2020年段階のデザイン教育プログラムについ

          デザイン教育のデザイン——2: デザイン教育プログラムの設計と可視化

          デザイン教育のデザイン——1: デザインの定義をする

          (続き)この美術専門学校に着任した2009年ごろ。当時のデザイン教育の状況を振り返ってみます。いわゆる大手美術大学出身のデザイナーは、それまでと変わらず活躍していました。一方、慶応義塾大学 湘南藤沢キャンパスや早稲田大学 文化構想学部など。いわゆる総合大学においてもデザイン領域と呼べるプログラムが実施され、そうした卒業生の活躍もかなり目立つようになりました。 またウェブデザイン——特にAdobe Flash——を経由して、いわゆるインフォーメーションアーキテクトなる範囲の方

          デザイン教育のデザイン——1: デザインの定義をする

          デザイン教育のデザイン——はじめに

          はじめに 2009年4月に新卒で入職し、その後、2021年3月までの11年間。東京都内にある美術専門学校の4年制デザイン学科教員を勤めました。ここでは授業を担当したり、非常勤講師の窓口をしたり、日々、学生の面倒をみたりすることが、その主な仕事でした。しかしこの11年をあらためて振り返り、筆者としてそこでもっとも印象に残っている仕事は、デザイン教育プログラムの設計と実施でした。 これは、いつの間にかはじまった仕事のひとつです。また筆者一人で実施したものではなく、専任・非常勤

          デザイン教育のデザイン——はじめに

          『陰翳礼讃』をよむ

          ことしの春。『陰影礼賛をよむ』と題した私家版小冊子を作成しました。 2022年から恩師 面出薫さんとともに不定期ながら谷崎潤一郎『陰影礼賛』を再読する時間をもうけています。この『陰影礼賛をよむ』は中村にとっての、その一年の成果をまとめた中間報告書のようなものです。いや、はたしてその一年なのか。おもえば2011年ごろから鈴木大拙や柳宗悦に触れはじめて以来の経験のようにもおもえるし、もっといえば大学3・4年次に在籍した武蔵野美術大学 面出薫ゼミからのことなのかもしれません。

          『陰翳礼讃』をよむ

          神楽岡久美さんのためのデザイン

          現在開催中の展示会『わたしのからだは心になる?』。出展者 神楽岡久美さんに関するグラフィック・デザインを中村が担当しております。 今回、使用した活字書体はLinotype Didotと本明朝新小がなM、本明朝Bold、游築5号かな。また構成においては、作為的に罫線を活用すること、グリッド性を強調することを意識しています。 神楽岡さんの作品群のタイトルであり、そのステイトメントは「美的身体のメタモルフォーゼ」。過去事例のリサーチをつづけながら、未来における身体美のありかたを

          神楽岡久美さんのためのデザイン

          Life in Art JAPAN CRAFT 百工のデザイン

          無印良品銀座のギャラリーATELIER MUJI GINZAにて『Life in Art JAPAN CRAFT 百工のデザイン』と題した展示がはじまります。総勢百名を超えるつくり手が出展されています。この展示会場には5名の論考も寄せられており、このひとつを中村が担当をしています。 デザインの世界にいる自分が、クラフトの企画展示に寄稿すること。はじめはすこし戸惑いもしました。しかし、こんかいのタイトルにはしっかり「デザイン」とついている。 僕個人、デザインは人間にほんらい

          Life in Art JAPAN CRAFT 百工のデザイン

          文庫本フォーマットデータを無償配布いたします

          文庫本版型のフォーマットデータを無償配布いたします。仕様は以下のとおりです。 こちらのGoogleDriveよりダウンロードしてください。 ■fmt.indd(文庫本本文フォーマットデータ/Adobe InDesignデータ) ■cover.ai(文庫本表紙フォーマットデータ/Adobe Illustratorデータ) このデータの版型は、幅 108 mm、高さ 105 mmとなります。こまかな仕様や解説については下記にしてゆきます。基本的には1、2、6は筆者個人のはなし

          文庫本フォーマットデータを無償配布いたします

          中村将大『未然のこと』

          この夏、40歳の節目をむかえるにあたり、この数年のあいだnoteやInstagramなどSNSに投稿していた雑文をオンデマンド印刷・製本のかたちにて、まとめることとしました。少部数限定ではありますが、ご希望のかたには頒布いたします|受付終了しました。ありがとうございます| こうしてみれば、ぐだぐだと似たようなことばかり書いており、少々、恥ずかしくもあります。しかしその循環性のなか、自分なりに整理されてゆく過程がパッケージされているのは、興味ぶかいところでもありました。 こ

          中村将大『未然のこと』

          『わたしのからだは心になる?』展|神楽岡久美さんが出展されています

          『わたしのからだは心になる?』展 会期: 2023年8月30日 水曜日—11月19日 日曜日 平日11:00—21:00/土日祝 10:00—19:00 入場無料 会場: SusHi Tech Square(東京都千代田区丸の内3-8-3) 主催: 東京都 東京都主催の展示企画『わたしのからだは心になる?』展に、神楽岡久美さんが出展されます。今回、神楽岡さんの展示にかかわるグラフィックスのデザインを中村が担当しております。 — 神楽岡さんの作品群のタイトルであり、そのス

          『わたしのからだは心になる?』展|神楽岡久美さんが出展されています

          『日本の美をよむ 2023 』会場にて小冊子『陰翳礼讃をよむ』頒布いたします

          5月6日 土曜日に胡桃堂喫茶店とオンライン配信にて開催される催し『日本の美をよむ 2023 今田順+中村将大』。こちらの会場で小冊子『陰翳礼讃をよむ』を頒布いたします。 この小冊子『陰翳礼讃をよむ』は、面出薫さんと中村による個人的な勉強会の資料として作成したものです。内容として、この催しにちかいこともあり、こんかい頒布するはこびとしました。 もともとプライヴェートな勉強会用資料のため、単価が高くなってしまうこと、もうしわけないです。当日は12部くらい持参しようとかんがえて

          『日本の美をよむ 2023 』会場にて小冊子『陰翳礼讃をよむ』頒布いたします

          グレン・グールド/タイポグラフィ

          デザインのよみかた、ポッドキャスト最新回が更新されました。新年第一回目となる今回は「69回 講評会とグレン・グールド『ゴルドベルク変奏曲』の話」。中村の担当した授業課題をふりかえる内容となっています。 ¶ この授業最終回は講評会の形式とし、ゲスト講師を4名お招きすることにしました。タイポグラフィ研究者の河野三男さん、作編曲家/サックス奏者の渡辺将也さん、ドラム奏者の伊原俊一さん、そしてデザインのよみかたをはじめ、各所で協働いただいているOVERKAST/ÉKRITS編集長の

          グレン・グールド/タイポグラフィ