MIRAI DRIVE PROJECT——Hack for Safety|メモ

アクサダイレクト主催による「MIRAI DRIVE PROJECT——Hack for Safety」に東洋美術学校は参加しました。これはハッカソン形式にて、二日間連続で開催されたワークショップ。多摩美術大学、京都精華大学、デジタルハリウッド大学、そして東洋美術学校の計4校が「10年後の生活で起こりうる生活に身近なリスクとその回避策」「10年後の未来の交通環境で起きるリスクとその回避策」というテーマで、デザインを考えてゆくものとなりました。初日がアイデアソン、最終日がハッカソンという形式。台風の影響もあり、ハッカソン自体は予定より短縮したスケジュールでの実施となりましたが、参加した生徒にとって非常に充実した時間と経験になったようです。

東洋美術学校は学科・学年をまたいだ選抜有志で参加。コミュニケーション・デザイン専攻の一年生2名と、二年生1名、四年生1名に夜間部グラフィックデザイン科1名を加えた合計5名のグループでのぞみました。アイデアから各種のデザイン、プロトタイプ、ティザーサイト、そしてプレゼンテーションまでを二日間で完結させるメニュー。両日ともプログラマがつき、UIのプロトタイプを同時進行で制作することも可能でした。今回の実働者はあくまで生徒グループであり、筆者は引率のオブザーバー的立位置でしたから、ここでは当日と、それにいたるまでのドキュメントを紹介します。成果物としてのデザイン、それ自体の紹介はまた別の機会に。

東洋美術学校グループが提案したのは車体搭載型のドライヴ・コンシェルジュ・サーヴィス「KURUMATCH」(クルマッチ)。将来、自律走行車が普及した際、懸念されるのは運転する、つまり制御する楽しみがなくなることかもしれません。その課題に気づいたのは事前におこなったフィールドワーク。7月におこなわれたオリエンテーション後、東洋美術学校グループは横浜 日産グローバルギャラリーにて、自動運転レベル2を経験しました。

フィールドワーク
日産グローバルギャラリーから横浜界隈をテスト走行(1 August 2018)

EVカーということもあり、それはとても静かな動作。そして手や足、なにも身体をふれていないのに、正確なハンドリングと安定したスピードでこともなげに進んでゆくようすには、まさに未来をみる思い。驚嘆するとともに、漠とした気持ち悪さを覚えたことも事実です。ひとと車の距離が、いまよりも遠ざかってしまうのではないか? どこかそうしたもどかしさを痛感する経験となりました。そこに物理的なリスクではなく、精神的・文化的な不可視のリスクをみることになります。

未来のヤンキーはいかに暴走するか? 
その後、ハッカソン当日までに幾度かブレインストーミングをおこなううち、雑談のなか「未来のヤンキーは、どうやって暴走するのか?」という話に。自動運転だと暴走のしようがない。暴走族絶滅の本質的危機という、一部の文化圏にとって驚異的な未来は、ひとまずセグウェイで爆走すればいいという牧歌的な結論をみることになりましたが、しかし、これはなにもヤンキーにかぎらず、運転をすること、制御することのたのしみは、誰しも起こりうるリスクになるのではないか? という、その後のデザインの根幹となるヒントとなりました。

GoogleDocsによる「情報交換ノート」
今回のプロジェクトメンバーはパーマネントなものではないため、各自のタイミングでアイデアや議論を記載できるメモを用意。ハッカソン当日までに25ページにおよぶ情報量となる。

ほかにもGoogeDriveをもちいて情報・データを共有。ハッカソン当日は、プログラマにそのままデータを共有することができ、またグループ内でもリアルタイムで同時編集しながら作業を進行することができた。GoogeDriveのシステムは、こうしたワークにおいて圧倒的に効率が良いことを再認識。

事前におこなったブレインストーミング。10年後のヴィジョンをグループ内で共有。ほかにも、自動運転についての認識など、事前に足並みをそろえておく。図はヤンキーがセグウェイで爆走し、それをセグウェイ警察がおいかけるという、未来の暴走族とその取り締まり風景。あまりに牧歌的(21 September 2018)

フィールドワークやブレインストーミングを重ねるなか、ある程度の方向性がみえてきたころで、大林寛先生(OVERKAST / ÉKRITS 代表)をゲスト講師としてまじえ会議。俯瞰的な視点はこうしたとき、とてもおおきい。どこか漠としていた、これまでのアイデアの断片が構造をもって編集されだす。くわえてヤンキーの話はさらに盛りあがる。キャロルの解散コンサートにてクールスが国会議事堂前をノーヘルでドリフトする話題など(27 September 2018)


アイデアソンからハッカソンへ
初日となる9月29日はアイデアソン。テーマにもとづきブレインストーミング、その編集とアイデアの構築、目的の設定をおこない、それに基づきデザインの輪郭を浮き彫りにしてゆきます。自律走行車が普及したときの、ひとと車の距離感。事前のミーティングでも話にあがった、みえないリスクを気にしながら、単なる移動手段としてではなく、自動車がこれまでひとに及ぼしていた影響を自覚してゆきます。自律走行車はひとびとに何を与え、なにを失わせるのか? その考察の結果として、コミュニケーションをとることができる、ドライバーと対等の関係をもつ車というプランに。サーヴィス名も、車とマッチングをかけあわせ「KURUMATCH」(クルマッチ)に決定。またフィールドワークの際、実際に自動運転レベル2を体験し、その自動車のハンドル部分に集中した煩雑なボタンの数におどろいた経験をふまえ、インターフェイスを音声入力、そして光にしぼり、進めてゆくことになりました。

ブレインストーミング
かぎられた時間のなか、できるかぎりアイデアをだしてゆく(29 September, 2018)

アイデアを俯瞰でみながら整理する。

使用シーンを想定しながら、ユーザー・エクスペリエンスの設計をおこなう。

プログラマとのディスカッション
今回のデザインに必要な、音声入力AIや光のインターフェイスが、時間内にどの程度可能かを相談。その可能性をふまえながら、意見交換。時にプログラマ側からもデザイン的な視点でアドバイスされることも。時間内での可能性をふまえながら、プロトタイプの全貌を把握する(29 September, 2018)


朝一番のしごと
予定よりも時間が圧縮されたこともあいまって、一日目終了後、東洋美術学校グループは深夜早朝にかけてハッカソンに向けての下ごしらえをおこなった様子。30日朝にはデザインのコンセプト、ロゴや色彩計画といったブランド・デザイン、プレゼンテーション・ツールの選定などが準備された状態になっていました。会場にむかう前、近所のカフェでミーティング。進行状況の確認と、その後一日のスケジュールを決め、完成までのプロセスをイメージしてゆきます。この持ち帰り作業、事前共有の際もGoogleDriveのシステムは多いに役立ちました。


デザインとプロトタイピング

9:30の開場時間から、すぐさま作業開始。プログラマからは光のインターフェイス、ついで音声のインターフェイスが到着。これらを実際に扱いながらスタディをしてゆきます。ともにプロトタイプは素晴らしい完成度。グループ一同、驚嘆の声をあげます。技術者とデザイナーが組むことに対する世間の期待はもちろん、私自身、経験からその相乗効果のおおきさをしってはいましたが、やはり、アイデアが具体化される瞬間は特別な高揚感を得るもの。グループ一同、モチベーションと自信をもってデザイン・ワークが進んでゆきます。

光のインターフェイス
AIの音声と同期する環状のLED。光の色彩や明るさで感情をあらわす(ダジャレではない)

AI音声のプロトタイプ
プロトタイプの受け答えは抜群。すでに人格を感じるほどのもの。おもわず小躍り。

スマートフォンで動画・写真を撮影しながらリアルタイムでティザーサイトに反映してゆく。

ティザーサイトに要素をまとめることで、プレゼンテーションにも対応できる仕様にした。


プレゼンテーションとレビュー
13:00に作業終了。そのままプレゼンテーションとレビュー、そしてタッチ・アンド・トライに移ります。考えてみれば音声入力AIや、自律走行車はそれぞれすでに存在しているものですが、それが融合したとき、個性的なプロダクトでありサーヴィスになることも、こうして俯瞰してみるとわかります。自動車という個室空間のなか、かたちは持たないものの、音声と光で確かに存在するアンビエントな存在。今回は具体的なインターフェイスが あることで、より現実的なプレゼンテーションをおこなうことができました。

今回のハッカソンは、前述のとおり選抜有志でおこなったもの。学年や経験値が異なると、当然、スキルの差は出てしまいますが、モチベーションが揃うことが大切であると改めて認識した次第です。加えて二日間、ないしは7月のオリエンテーション以降、つねに楽しそうにしながら取り組んでいたことが印象的なチームでした。

東洋美術学校としてハッカソンに参加したのは今回がはじめての経験。近年では通常授業においてもワークショップ型進行を実施していることもあり、ハッカソンの教育的効果を身をもって理解する時間ともなりました。主催のアクサダイレクトをはじめ、運営スタッフのみなさまにあらためて御礼申し上げます。

3 October 2018
中村将大


追記

プロジェクトメンバーのひとりであった、東洋美術学校 夜間部グラフィックデザイン科の生徒がnoteにまとめてくださいました。

文学あるデザイナーへのヒント|はがひなこ

この生徒は早稲田大学とのダブルスクール生。この数年、美術系ではないバックグラウンドをもつデザイナーが増えていますが、それを象徴するように夜間部は大学在籍者や大卒者などがおおい。こうした背景をもつデザイナーと、美術系デザイナーの相乗効果はいかほどか? ふりかえってみれば、今回のプロジェクト・チームはその好例となったのかもしれません。
(4 October 2018, 追記)
追記2

10月26日にアクサダイレクト「MIRAI DRIVE PROJECT」ページにて情報公開されました。東洋美術学校はAXA DIRECT賞を受賞いたしました。ありがとうございます。当日の様子もYouTubeで公開されています。
(26 October 2018, 追記)

受賞時のようす

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中村将大

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