見出し画像

タイ語の翻訳小説「824 月明かりのロンド」ができるまで⑥


◎優雅な香りの花輪について

●信心深い厚いタイの人々

タイにはいたるところにお寺があり、日常的に参拝をする人も大勢いて、多くの人々はとても信仰心が厚い。タイ語の翻訳小説「824 月明かりのロンド」でも、神社が主要なモチーフになっているが、そのほかいくつか信仰にまつわるシーンも登場する。今回は、その中のひとつ、タクシーのバックミラーによく飾られている花輪について。

消臭効果がある葉を車内に

「824月明かりのロンド」小説内では、フランスから旅行に来て以来、タイのあまりの心地のよさに感動し、運転免許を取ってタクシーの運転手をしているミッシェルという男性のキャラクターが登場するが、彼はタイに来たばかりの頃はタクシーに置かれているバイトゥーイ(バンダンリーフ)の匂いが苦手だったと描かれている。このバイトゥーイ、ホテルの部屋や化粧室など、タイに降り立つとどこからか漂ってくる。なるほど、ミッシェルが苦手だったと言うのもちょっとうなずける、甘くてどこか複雑な香りだ。消臭効果が高いらしく、タイでは鶏肉をこの葉に包んであげる料理でもおなじみ。

●香りが良いのはポンマライ

タイの人々は祖先も霊が植物に宿るという言い伝えも信じており、植物をとても大切にする。もちろん植物を用いた供物も多い。タイのタクシーに飾られている植物でバイトゥーイよりももっと一般的なのは、「ポンマライ」という黄色や白の、香りが良いきれいな花をひと房ひと房丁寧に、まるで数珠のように編んだ花輪だ。タイを訪れた際、路上で毎朝作ったばかりの数珠のような美しい「ポンマライ」の花輪が丁寧に並べられている光景を見ることができるだろう。

●リビングに飾ってもいい香り、でも夕方には枯れてしまう

私はこの気高い香りがする美しい「ポンマライ」が大好きで、バンコク在住時、ときどきリビングにも飾った。花びらのひんやりとした手触りを楽しみながら、繊細に編まれた花輪がほんのり香る一日は何とも優雅。日ごろの雑な自分の暮らしぶりもちょっと潤う。が、この花輪、花輪であるため、花瓶にはさせない。もちろんバンコクは年中暑い。朝買った花輪は残念ながら夕方過ぎには茶色く変色し、用済みとなった。けれどもだからこそ、毎朝、お布施のように出来立ての花輪を買い、一日の安全を願うという役割にふさわしいのだろう。
「824 月明かりのロンド」にはタイらしさを感じる描写が髄所に出てくる。
またご紹介するのでどうぞ読んでね。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?