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おしどりマコ氏の発言は「デマ」か否かを考えてみる。

お笑い芸人のおしどりマコ氏。
8年前の東日本大震災、それに伴う福島第一原発事故以降、反原発を掲げ事故で拡散された放射性物質の危険性を訴える「ジャーナリスト」として、精力的に活動し情報を発信されてきました。

おしどりマコ氏(以下マコ氏)の発信内容は、各方面の多くの専門家から「デマ」だと非難・批判されています。追々明らかにしていきますが、基本的な知識と論理的な思考を持ち合わせたごく普通の方なら、彼女のツイートや発言を読んだり、彼女の講演を録った動画を観れば、誰もがマコ氏がデマ発言をしてるのでは?との「印象」を受けるだろうと思います。

しかしながら、外見上だけをみれば、マコ氏の発言がデマとは断言しにくいんですよね。


それは何故か?


実際にマコ氏のHPやYouTubeに転がっているマコ氏の講演、聴衆が書き起こしたその概要をみるとわかりますが、「放射能のせいで病気になった・放射能が原因の植物の異変が・福島県産品は放射能汚染されている・それを子供達に食べさせるとは何事・放射能で将来子供達に悪影響が云々」というように、「誰か」の発言を「伝えているだけ」なんですよね。ほとんどが「伝聞形式」

これは本当に徹底されています。「誰か」の口を借りて、放射能に対する懸念や心配や恐怖を強調した上で、聴衆に伝えています。

たとえばこれ。

「……あ、でも取り急ぎお伝えしたいお話を、福島に伺って、飯舘の方々からお聞きしたお話を」
「福島県産の農産物を県外で食べて応援、という活動が多いですが、それは違う、とおっしゃってました。そして、『福島のものを食べて応援するより、汚染されていない食物を福島に送ってほしい。そのほうが応援なんだけどな』ともおっしゃってましたよ
福島の方々は、暫定基準値ギリギリに汚染されてるものを食べてるかも、と不安に思ってらっしゃるし

おしどりマコ・ケンの「脱ってみる?」第17回‐マガジン9より
http://www.magazine9.jp/oshidori/110824/

徹底されてますね。この例だと、「福島県産農作物は他と比べて高く放射能汚染されており、放射性物質が多く含まれていているので食べると内部被曝がヤバい事になる」と受け取れると思います。

こちらも。

「原発が爆発した時、放射性物質が風に乗って全国に飛んだ。福島県だけ線量が高いわけじゃない。(恐らく関東圏の子供を)検診をしていると気付くことがある。それは小児の甲状腺がんも多くなっているが、免疫機能が弱くなり、放射線エイズとも言える症状が現れていることを認識する必要がある』という話でした
「『なんとなくおかしいけど、証明できない』話は他にもあると言いました」
「(福島市の)農家さんが『根が4ヶ所から生えた玉ねぎが沢山できた』『トマトの主管が育たなくて成長しない』などで種は福島県産だとする人が説明会に」

あかいわエコメッセ「漫才界の脱原発ジャーナリスト・おしどりマコ&ケン講演会、三田茂医師のお話(2016/08/21)」岡山県労働組合会議HPより
http://b.kenro.jp/2016/08/8-21あかいわメッセ/

ここでは東京や関東圏から岡山に移住した医師や一般の方、そして農家さんの話を紹介。
福島県ヤバいです。福島県以外もヤバいです。東日本住めなさそうです。

このように、マコ氏自身からは放射能に対する自らの見解や心情をほとんど語る事はありません。徹底して「伝聞形式」

「マコ氏がデマ発言をしてるのでは?との『印象』を受けるだろうと思います」としたのはそういう事です。


やっとここからが本題。

「え?誰かの話をそのまま伝えているだけなら、それは事実には違いないしマコ氏がデマ発言をしているとはいえないんじゃないの?」
そう思われる方も多いでしょう。

お気付きの方もいらっしゃるでしょうか。伝聞形式の例を一部を挙げましたが、それからもうっすら判る通りマコ氏の伝える「誰かの発言」には、根拠もソースもない、そして事実とはいえない内容が多いのです。

福島や放射能に関するネガティブな話でそうであれば、確実に風評に繫がる事になるでしょう。

おしどりマコ氏はジャーナリストとして何度も東京電力の記者会見に出席し、会見者が回答に窮する程の鋭い質問をされている方です。福島県にも足繁く通い、地元の方と会談されています。
当然原発や放射性物質や放射線、そのデータ、そして福島県の実態について相当ご存知の筈です。

その、事実を、実態を知っている詳しい人間が「誰かの『無根拠な』話をそのまま伝えている」のは非常に不可解です。


その最たる例として「奇形タマネギ」の件があります(下記のまとめは参考までに。概要として示します)。

「おしどりマコが国内やドイツ・スイスで宣伝する奇形玉ねぎ←各所に問い合わせたらデマ確定」Togetterまとめより
https://togetter.com/li/1281486

これは、福島市西部の農家さんが栽培して収穫した中に「4つ根っこが出ている形の変な赤タマネギ」があったというもの。

といいつつ、タマネギについては今は語りません。

あ、1つだけ。

まとめ等ではそのタマネギがそういう形になった理由を「放射線ではなく『分球』であろう」としていますが、私個人は「収穫し忘れた分球したタマネギがちょっと育っちゃった」と推測しています。


閑話休題。


私がいま問題にし取り上げ検証するのは、マコ氏がそのまま伝えた農家さんの「タマネギ以外の発言」です。

そのソースが、以前私が観たマコ氏の講演を録ったYouTube動画のいくつかが削除されてしまっています。その書き起こしを記録していたWebサービスが終了してしまった(´・ω・`)事もあり、私の記憶やまだ残っている講演を聞いた方のブログエントリーをソースとするしかなく。それもアレですけど……とにかく次に挙げてみます。

①(4つの根っこのタマネギが採れた福島市西部の)畑の近くの山の林の木マツ?モミ?の先端の芽が出ていなかった(記憶)

②福島第一事故の年でも、同じく
畑の近くの山の湧き水を飲んでいたのが、自身が2015年に甲状腺がんと診断された一因では(記憶と※1)

③近隣の住民や親戚も甲状腺がんになった(※1※2)

【※1】「2015年に甲状腺がんが見つかって翌年手術をした男性は、事故の年でも山菜を摘み、山の湧き水を手ですくって飲んでいたと話す。そこに放射性ヨウ素が含まれていたことを知ったのは2013年」
「150世帯中、男性の甲状腺がんは3人出て、親戚の女性も1人発症した」
http://www.labornetjp.org/news/2017/1207hayasida
【※2】「通常通りの生活を送った結果、周辺地域に住む人々の甲状腺がん発症者は増加しているという」
http://snbblog.sundayresearch.eu/?p=4016


《①について》
少し解説が必要ですね。

2015年、国立研究開発法人放射線医学総合研究所(放医研)からこのような発表がありました。

放射線量が特に高い地域でモミの形態変化を調査
https://www.nirs.qst.go.jp/information/news//2015/0828.html

空間線量率が特に高い地域に自生するモミ個体群に「主幹欠損(垂直に伸びる1本の主幹のてっぺんに頂芽が、それを囲むように配置する側芽が出るところ、頂芽が出ない状態)」の顕著な増加が観察されたというものです。
この内容については、マスコミが報じていたのでご存知の方もいると思います。当然マコ氏もご存知だったと「推測」します。

というのも、次の動画で関連する研究について言及しているからです。

「松をやってる福島大学の先生が教えてくれた」

(2016/08/08)「おしどりマコ・ケン講演会」子ども脱被ばく裁判第6回期日学習会」より
https://www.youtube.com/watch?v=IVjRL0n_FVM(1:30:30〜)

更にこれにも解説が必要ですが……この「福島大学云々」はこちら。

「アカマツにおける形態学的変化~2014年から2015年の観察結果より~」
平成27年度 野生動植物への放射線影響に関する調査研究報告会より
http://www.env.go.jp/jishin/monitoring/results_wl_d160219.pdf

こちらは「アカマツの放射線による形態異常」についての調査です。放医研のモミの研究調査と近い内容です。

動画の中の話は、何かの会合に出ていたマコ氏が、居合わせた「松をやってる福島大学の先生」にタマネギについて質問されたものだと思われます。


ここまでの記述や私の推測が間違えていないとして。


まず放医研の調査。線量の高かった県内3カ所と、比較対象として線量の十分に低い1カ所(対照区)で行われています。
そして主幹欠損は線量の高かった所は対照区より有意に高かったとされます。
次に福島大学の調査。こちらも同じく線量の高い県内数カ所と、恐らくは対照区として選んだと思われる線量の低い福島大学キャンパスと他1カ所で行われています。
こちらも同様に線量の高かった所は対照区と比べて形体異常がより高頻度で観察されたとあります。

そうすると、①のタマネギの農家さんの証言、「福島大学キャンパスより西の、福島大学キャンパスより若干線量の低い地域の畑近くの山林で木の芽の形体異常が観察された」というのは驚くべき大発見(?)になるかと思います。

もし私の推察通りだと、マコ氏が福島大学の調査内容を知った上で、福島大学の先生にあのタマネギについて質問したならば、その際に「畑近くの山林の異常」について話さないのはおかしいと思うのです。


《②について》
「畑の近くの山の放射性ヨウ素が湧き水を飲んでいたから甲状腺がんに」というのもにわかに信じ難い話です。

たとえ湧き水に放射性物質が含まれていて、それを飲み内部被曝が継続していたとしても、わずか2年あまりで甲状腺がんにはなるとは考え難い事。

そもそも福島第一事故で放出された放射性ヨウ素(ヨウ素131)の半減期はおおよそ8日。「事故の年でも(普通に)飲んでいた」と言うのは無意味です。

第一「表流水(河川や湖沼のように地表面に存在している水)の影響をほとんど受けない」ですし、「(湧水を含む)井戸水等の地下水については、放射性物質による汚染は確認されておらず」とあります。もちろん放射性ヨウ素以外の放射性物質、セシウムやストロンチウムについても同様でしょう。

表7.2.1 水源種別ごとの浄水処理方法と放射性物質対策

「福島県水道整備基本構想2013 福島県くらしの水ビジョン 東日本大震災を経て」より
https://www.pref.fukushima.lg.jp/uploaded/attachment/57858.pdf

あと、「そこに放射性ヨウ素が含まれていたことを知ったのは2013年」というのがよくわからないんですよね。

色々調べたのですけど、福島県内で最古(福一事故に最も近い時期)のモニタリング調査結果がこの川内村の2011年3月27日。
https://www.pref.fukushima.lg.jp/uploaded/attachment/338480.pdf

農家さんの畑の福島市となると、こちらの2011年7月7日。
https://www.pref.fukushima.lg.jp/uploaded/attachment/338487.pdf

まぁ当然ですけど全て「ND」、不検出です。

もちろん、福島県本体ではない個人あるいは団体が調査していたかも知れませんしそれで知り得たかもです。しかし、先の通り湧き水が表流水の影響をほとんど受けないのなら、放射性物質が多く存在する可能性は低いですし、摂取したかもしれない期間はごくわずかです。

それなのに、湧水を甲状腺がんの原因とするのは無理があるでしょう。

「山菜は?」といっても、同じく「わずか2年間云々」で終了する話です。

放射性物質関係に詳しいなら、マコ氏はこの農家さんの考えに「違うよ、全然違うよ」と言い、「その可能性はほとんどない」と否定して然るべきだと思います。

でも「誰かの話をそのまま伝えている」のです。


《③について》
これは……①と②についても通じる話、重要な話になるのですが、マコ氏は証言のウラ(確証・根拠・ソース・公式なデータ)を一切取っていませんし、「数量の概念」もガン無視していますし、かつそれらを一切示していません。
「その方々が本当に甲状腺がんになったのかどうか」を確認したとする発言、記述が一切ありません。相手(農家さん以外の甲状腺がんに罹った方)に「罹った?」と訊くのは失礼かもしれませんが、正しい情報を発信するジャーナリストとしてはやらなくてはならない事です。

もし本当に甲状腺がんになっているのなら、その方達の内部被曝量、外部被曝量を大まかにでも推測あるいは調査をして、その話の妥当性を確認すべきです。

しかしながら、どんなケースでも全てでウラ取りを怠っています


この、ソースも示さずウラ取りを怠った結果がどうなるか。

ここまで示した例の様に、マコ氏の「誰かの話をそのまま伝えた」ものは、並べてそれらを見た者読んだ者に「放射性物質への、福島県への、福島県産物への無用な恐れ」、つまり風評を生み出す内容となっています。


「福島県産の農産物を県外で食べて応援は違う」
「福島の方々は汚染されてるものを食べてるかも」
「放射線エイズとも言える症状が」
「甲状腺がんが」
「木の新芽が」
「タマネギが」
「トマトが」
「湧き水が」等々。



おしどりマコ氏は曲がりなりにも「ジャーナリスト」を自称している訳ですから、現実世界の「事実を元にした」正しい情報を伝えなければならないのでは、と考えます。最低限守らなければならないライン。

おしどりマコ氏は原発について多くの発言をし、反原発を自論とし主張し続けています。それだけ原発や放射能・放射性物質、また足繁く通った福島についての知見は相当なものでしょうし、自身もそう自負されています。

であるならば、たとえ「誰か」の話を聞いたものだとしても、その誰かが誤解や誤認をしているのならば、間違ったソースを元にして騙されているのであれば、それは正すべきですしその話を拡散すべきではないでしょう。「事実を元にした」ものではないのですから。ジャーナリズムの俎上に載せていい様な代物じゃない。



でも、おしどりマコ氏は間違ったものを間違ったまま伝えています。
恐らく「あえて」でしょう。



結論。


おしどりマコ氏が「あえて」根拠を示さないのは、反原発を主張する身として「一般市民にとって福島県や被災地の産品、放射性物質がとにかく危険であると思ってもらわなければならない」からなのでは?

おしどりマコ氏が「あえて」伝聞形式に固執するのは、「それで発生させた風評の責任は絶対に取りたくないから」なのでは?

つまり、

「意図的に事実ではない情報=風評=デマを発信している。そしてその責任を取る事を巧妙にかつ全力で回避しようとしている」。


私はそう「邪推」しています。









と、誰かが言っていましたよ。











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※このエントリーは、最近おしどりマコ氏が何か忙しく活動されていらっしゃる事とは全く関係ありません。

ただ、ジャーナリストのとしてのマコ氏、またひとりの大人の社会人としてのマコ氏に対して、個人的に「いくらなんでもそれは駄目だろう」と思った事を、確認のため改めて根拠を以て記してみただけです。

恐らく細かい点で色々事実誤認や間違いが含まれていると思います。もし見つけたらご指摘の方お願いします。

noteって修正できるの?
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(おまけ)
「風評の責任を取りたくないから」ってのは、マコ氏が弁護士を立て「名誉毀損だ!」と訴えている事例から推察できるのでは、と思います。(下記リンク先参照)。

私にはこのやり口が言論弾圧に当たるかどうかは判断できませんが。

「食べて応援は自殺行為」と言ってない
https://gendai.ismedia.jp/articles/-/57961?page=6
朝日新聞・論座の記事削除要請
https://togetter.com/li/1376292


初めて書くnote、如何せん勝手がわからないのでどう表示されるのか、どう捉えられるのか不安でなりません(´・ω・`)。

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