夜の真ん中で鳴りつづけるサイレンはゆるい周波数で私を弱くした。横たわって夜の暗さに目を慣らすことしかできない。そんなことにしか使われていない私の体は、朝が近づくほど衰えていくみたいだった。マットレスに浸透していく涙がわかる。思ってもいないごめんなさいを積み重ねることは、良い意味で愛してるだった。怯えは愛ゆえってあの人に聞いたことがある気がするし、その人は適齢でしっかりした人としっかりした結婚をしてしっかりした子供を育ててしっかりした毎日を送っている。そのとき、私は将来ドレスと
朝5時に起きてメイクをする。 鏡。 向かい合って、ただ息をしていた。 寝癖。 嫌いになれないあの人みたいだなと思う。 ｢My Hair is Badとメンヘラリストカットって響きがにてるよね｣ 下地を塗る。 アイライン。 涙袋をかく。 ハイライト。 影をつける。 赤シャドウ。 眉毛をかく。 ビューラー。 薄いチーク。 別れた元彼。 中継先の、アナウンサーの名前。 髪を下ろして内側に巻いていく。 大丈夫。私は全部、慣れている。 モデル上がりの女優のコメント。 こん
大好きと会いたいを1500円で売ってるあの人の本当の会いたいなんて誰にもわからない。 戦略的なAm、ありきたりだねと笑ってイントロでとめた君はさみしい。 さみしいから抱く、抱いたからさみしい。 因果律に酔うひとたちの夜。 マイヘアの新曲きいた？うん、きいたきいた、あれなんか椎木さん彼女できたりしたのかな？なんかでも大衆的なラブソングって感じ、分かる？まあでも好きだけどね、あー私椎木さんの元カノになりたい、うん、彼女じゃなくて元カノ、そう、だってその方が彼女より かのじょよ
12月になると気温は焦ったように下がる。 制服のスカートの裾と靴下の始まりのあいだは、何センチが正しいんだろう？ 足が細く見えたい、 友達と同じ長さで、 だってこうすると、 教室で息できるし、 間違ってないはず、 生きるためだけの、 絶対領域をまもる。 短いのバカみたい、 お手本通り普通に、 私にはお似合いだ、 あの子みたいには、 到底なれないしね、 指をさされぬよう、 絶対領域をまもる。 長くても短くても、冬は寒いんだし、これ以上さみしいことなんて考えなくていい。 イ
