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【森の神様】宮脇昭先生を悼む

横浜国立大学 名誉教授

宮脇 昭先生が、7月16日、
ご逝去されました。

こころより、お悔やみ申し上げます。



宮脇先生を知りましたのは、
東日本大震災の後のことで、
大津波に遭った場所を
くまなく調査しているという
ニュースでした。

「震災で生じたがれきのほとんどは、
家屋などに使われていた
廃木材やコンクリートだ。
これらはもともと自然が生み出した
エコロジカルな『地球資源』だ。
捨てたり焼いたりしないで
有効に活用すべきだ

海岸部に穴を掘り、
がれきと土を混ぜ、
かまぼこ状のほっこりした
マウンド(土塁)を築く

そこに、
その土地の本来の樹種である
潜在自然植生の木を選んで
苗を植えていけば、

10~20年で防災・環境保全林が
海岸に沿って生まれる。
この森では個々の樹木は世代交代しても、
森全体として
9000年は長持ちする
持続可能な生態系になる

将来再び巨大な津波が襲来しても、
森は津波のエネルギーを吸収する

東北地方の潜在自然植生である
タブノキやカシ、シイ類などは
根が真っすぐに深く地下に入る
直根性・深根性の木であるため
容易に倒れず波砕効果を持つ。

背後の市街地の被害を和らげ、
引き波に対してはフェンスとなって
海に流される人命を救うこともできる」

(日本経済新聞の記事より)

この言葉に、
わたしは釘付けになってしまった!

当時、
「いのちの森の防潮堤」を立ち上げ、
現在は、
「鎮守の森のプロジェクト」に
なっております。

また、宮脇先生のご指導の下、
鎮守の森の植樹を、
宮城県でいち早く行った、
仙台市青葉区、輪王寺さんは、
社団法人 
いのちを守る森の防潮堤推進
東北協議会を立ち上げました。
現在は、
社団法人 森の防潮堤協会です。



平成16年(2004)、
輪王寺の地下を通る
都市計画道路工事に伴い、
輪王寺参道の杉並木が
全て伐採されたが、
新たな参道に、
土地本来の森をつくろうと考えた
現在の住職は、
多くのボランティアの協力のもと
植樹を行い、現在の参道が完成した。
参道を含む境内には、
三万本以上の植樹が行われ、
今では輪王寺を取り囲むように
土地本来の森が育まれています。

森の防潮堤協会、理事長、
日置道隆 住職です。

このお2人こそ、宮城県岩沼市の、
現、千年希望の丘の原動力です。

加えまして、
岩沼市 前市長、井口経明さんの
挙手がなければ、
いのちの森の防潮堤は
造成されませんでした。

当時、いのちの森の防潮堤に関しては、
国交省からの猛反対があり、
宮城県知事、仙台市長まで、
右倣いしてしまい、
宮脇先生の提唱する、
いのちの森の防潮堤は、
立ち行かなくなってしまいました。
そこで挙手してくださったのが、
岩沼市 前市長の井口さんでした。

「1000年先まで
持続可能な岩沼をつくる」






東日本大震災の大津波の、人的被害は、
岩沼市も同じでした。
仙台空港を持つ市として、
コンクリート製の防潮堤では
補えない被害を、
いのちの森の防潮堤で、
最小化させる、減災させる。
その思いが、
宮脇先生の提唱する、
いのちの森の防潮堤と一致したのでした。

平成17年、2005年に、
輪王寺につくられた、輪廻の森。
写真当時、2012年ですから、
7年の月日の経った、鎮守の森です。

ちょうど、この輪廻の森の左脇に、
キリスト教徒の墓所があります。

フカフカしている、森の道

お寺では、墓所に飾られた仏花を、
このようにして乾かして、
肥料として再利用。

2012年の当時は、
お寺の境内の2か所に、
ビニールハウスを建てて、
苗木を育てていました。
現在は、数年間の植樹祭も終えて、
苗木はつくられていません。
このような状態だったのですよ!

いのちの森の防潮堤に植えるまでに、
2年の育苗が必要となります。

親子のロバを飼って、
糞を肥料にもしました。
現在は、お父さんロバは亡くなり、
母娘の2頭だけになりました。

「いいか!
人の話を聴くのに
無駄話をしている暇はない!

この苗木は、子々孫々、
人のいのちを守っていく苗木だ!

いのちをかけて苗木をつくり、育て

いのちをかけて
防潮堤に植えていかねばならない!」

ヤマザクラの種

培養土と、
上に被せる藁とアカマツの葉。
どちらかを種を植え付けた後に、被せる。
湿度と土の温度を保つためと、
後の肥料となる。

「種、苗木を植えるのに手袋は要らない!

素手で、こころを込めて植えるのだ!

汚くなったら洗えばいい!」

1本1本、ポットに植え直していく。

先生が、いのちの森の防潮堤に提唱する
樹木の根は、まっすぐに下に伸びるもの。

土地本来の樹木とは、

生物多様性を重視し、
遺伝子の撹乱から
地域の遺伝子を守るため、
また「ふるさとの木による
ふるさとの森づくり」を実現するため
「地域性苗木」づくりを進めていきます。
その地域、風土の遺伝子を持った
樹木を植えること。
海岸に近い樹木なら、潮風に強い、
その土地の気候に強い、
そのことが樹木を長持ちさせ、
その土地の気候に負けない。

宮脇先生は、

「スギやヒノキ、カラマツ、マツなどの
針葉樹林は、
人間が材木を生産するため
人工的に造林したもので、
人が手を入れ続けなければ維持できない。
本来の植生は
内陸部ではシラカシなどの常緑広葉樹、
海岸部はタブノキ、シイ等の
いずれも照葉樹林が本来の姿である。

現在の針葉樹では
20年に一回の伐採と
3年に一回の下草刈りが前提で、
それをやらないと維持できない
偽物の森である。
マツにしても、
元々条件の悪い山頂部などに限定して
生えていただけのものを
人間が広げてしまったのだから
マツクイムシの大発生は
自然の摂理である。
その土地本来の森であれば、
火事や地震などの自然災害にも
耐えられる能力を持つが、
人工的な森では耐えられない。

手入れの行き届かない人工的な森は
元に戻すのが一番であり、
そのためには
200年間は
森に人間が変な手を加えないこと。
200年で元に戻る

先生のお話は、目からウロコでした。

先生は、岩手県から福島県の海岸を、
すべて、いのちの森の防潮堤にしたい
という思いがありました。

しかし、岩沼市以外、
挙手されなかったのは、
当時、わたしも悲しかったです。

2021年3月の、輪王寺の参道です。

すでに、苗木を植樹してから、
16年が経ちました。

土は、フカフカ。膝に衝撃がありません。

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