第５回 御嶽海編／フィリピンレストラン・イポイポ
11月８日から開催されている大相撲11月場所。
例年なら、福岡市で開催されるはずの九州場所は、新型コロナウイルスの感染拡大防止のため、「11月場所」として東京・両国国技館でおこなわれています。
18年名古屋場所、19年秋場所と２度の優勝を果たし、今場所は関脇として本場所に臨んでいる実力者・御嶽海は、フィリピン生まれ。母のマルガリータさんがフィリピン出身だったために、４歳までフィリピンで過ごしたのだそうです。
「フィリピン時代は、お母さんの兄弟（おじ、おば）やイトコたちと、大人数で暮らしていました。家の近所は自然がいっぱいで、毎日が楽しかったなぁ……」
と、当時を振り返る御嶽海。父の故郷・長野県上松町に移り住んでからは、フィリピンが恋しくて、泣いてばかりいたそう。母が作ってくれるフィリピン料理を食べて、体を大きくした御嶽海は、小学生の時に相撲を始めます。すぐに頭角を現し、東洋大学４年時には、「学生横綱」と「アマチュア横綱」のビッグタイトルに輝く大活躍。２０１５年、出羽海部屋に入門します。
その後、順調に出世を果たした御嶽海は、つねに「大関候補」と呼ばれ、期待されています。
その御嶽海が故郷の味を求めて、足しげく通っているのが、所属する出羽海部屋からもほど近い、錦糸町のフィリピン料理店「イポイポ」。
ネオン街の一角にある同店は、02年から営業しているそうですが、当時からフィリピン出身のタレントたちで、連日満員。仕事を終えた彼女たちの空腹を満たしてくれる貴重なお店だったのだそう。今は、彼女たちの子ども世代もお店にやってくるそうです。
まずは、エビと野菜のちょっぴり酸っぱいスープ、シンガンナヒポン。酸っぱさが食欲をそそる１品です。（８００円）
小腹が空いた時は、ご飯のセット、タプシログ。ガーリックライスの上に、味付けビーフと目玉焼きが乗っているプレートは１０００円とお手頃価格になっています。
御嶽海も大好物だという、フィリピン風ビーフシチュー「ビーフカルベレータ」（１３００円）も、ピリ辛風の味付け。フィリピンでは煮込み料理の種類が多いのですが、こちらは定番の煮込みと言えるでしょう。
もう１つの定番煮込み、「おふくろの味」と言えば、アドボミックス。フィリピンはおいしい鶏肉が廉価で出回っていますが、鶏肉と豚肉を、フィリピンの醬油と酢で柔らかく煮込んであります。酢が効いているので、見た目よりもサッパリめの味付け。（１３００円）
「御嶽海関はこれらの料理を食べる前に、大盛りの白飯を食べるんです。その食欲には惚れ惚れしてしまいますね」とは、同店の伊奈社長。
「自分の付け人の力士を数人連れてきて、彼らが腹いっぱいになるまで食べさせるんです。明るくて、面倒見のいい性格だから、お店で御嶽海関と出会った人は、みんなファンになっちゃう（笑）」（同社長）というほど、楽しい食事風景が繰り広げられているようです。
アルコール類も充実しています。
フィリピンのサンミゲールビールやレッドホースビールなどに加え、チューハイ類、カクテルなども揃っています。
その他、豚の耳を刻んで炒めたものに、生卵をポンと乗せた鉄板料理シシグ（１７００円）や、フィリピン風春巻きのルンピアンシャンハイ（１０００円）など、お酒のつまみも充実しています。
そのボリュームに驚かされるのは、骨つき豚スネ肉の唐揚げ、クリスピーパタ。ドイツ料理のアイスバイン的な料理で、ビールにピッタリ。楽しい気分がさらに盛り上がる１品です。
昨年から今年にかけて、年下の貴景勝、朝乃山に、大関取りの先を越されてしまった御嶽海。故郷の味を堪能して、11月場所では１年ぶりの優勝を期待したいところです。
※料理の価格は税抜きです。
＊本記事は2019年12月3日に行った取材を元に構成しています。
＼今回訪ねたお店／
フィリピンレストラン イポイポ
東京都墨田区江東橋４－１９－１２ 近代ビル１Ｆ
電話：０３－３６３５－３３０５
営業時間：１８時～翌６時（曜日によって異なる） 無休
撮影：山口真由子
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向正面から世界が見える～大相撲・外国人力士物語
◯第５回：御嶽海（１）
御嶽海が表彰式で母に投げキッス。
まぐれではなく「最高の優勝」だった
◯第５回：御嶽海（２）
公務員試験合格→和歌山県庁内定。
それでも御嶽海が角界を選んだわけ
◯第５回：御嶽海（３）
「自分より人気があるんじゃないか？」
御嶽海が嫉妬したのは母だった
御嶽海久司（みたけうみ・ひさし）
本名：大道久司（おおみち・ひさし）。1992年12月25日生まれ。長野県出身。180㎝、177㎏。出羽海部屋所属。
得意技は突き・押し。学生相撲で活躍した後、角界入り。思いきりのいい押し相撲と、周囲を魅了する明るいキャラクターで、子供から大人まで大人気。幕内優勝2回。三賞受賞9回。