【短編小説】「おおきくなったらケッコンしよう」と約束してきた幼馴染が一生可愛い。~好きと言えない僕は、あらゆる言葉で想いを伝え続ける~
第1話「おおきくなったらケッコンしよう」
幼い頃の僕――新田優樹(あらた・ゆうき)は心が不自由だった。
自分がどうしたいのか分からない。今どんな気持ちなのか分からない。それ故に「どうしたの?」と聞かれても、「〇〇した」と答えられない。
母が聞いてくる。
「寂しいの? 痛いの? 悲しいの?」
そのどれにも当てはまらない気がして、首を横に振る。
「寂しい? 痛い? 悲しい?」
母の顔が徐々に焦りの色を帯びてくる。根気強く僕の気持ちを知ろうとしてくれているが