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仮想通貨BOTTER向け日本株解説 基本編

皆さん、こんにちはRos@Ros_1224です。
主に個別株、仮想通貨のシステムトレードをやってます。
裁量もやってます。

皆さん、取引所のデータ遅延で消耗してますか?通らない注文に消耗していませんか?
ええ、僕は消耗しています。


というわけで、今回はいわゆる仮想通貨BOTTER向けの記事です。
仮想通貨を取り巻くシステムトレード環境と、株式市場のシステムトレード環境の違いなどなどを簡単に説明します。もちろん投資勧誘を目的とするものではありません。

ようは沼へ誘う記事です。

※2020年9月 本記事は、カブコム証券によるkabuステーションAPIの公開前の情報です。ご注意ください。

1.APIについて

さて、BOTTERにとって重要なのはまずここでしょう。
質問を受けるのも実はここが多いです。
株式市場には仮想通貨取引所に見られるような取引API、リアルタイムAPIは用意されていません。

※2020年9月 現在はauカブコム証券のkabuステーションAPIがあります。


(※米国の証券会社であるIB証券には日本株でも個別株CFD、現物のAPIがあるという話がありますが、ここでは触れません。)

「証券会社のツールを解析して注文を~」
「セッションを保持したWEB画面から発注して~」

って悪いBOTTERならまず考えると思います。
これは結論をいうと短期売買で使用するリスクは高いと思われます。

対当売買などを複数回発生させてしまった時点で、リアルに警告が来ます笑
マーケットメイク戦略をやれば必然的に板の注文とキャンセルが大量に発生します。これが見せ玉と扱われる可能性は否定できません。
実際に個人のアルゴリズム取引に対し、課徴金納付命令がなされた事例もあります。
約定させる意思はあっても、疑いをかけられる可能性は否定できません

まあぶっちゃけ仮想通貨も既に金商法の対象になってるので、なんのこっちゃですがこのあたりどこまでがグレーかセーフか曖昧な以上、常にリスクはあるのです。

そもそも株の短期売買は、HFT業者が闊歩している世界です。
コロケーションサービスなどを利用した彼らの注文は特別早い。1ms未満を競う世界です。自分はこの時点で短期売買を選択肢から外しています。

時間軸を伸ばすことはハンデでしょうか?
いえ、ハンデではありません。戦場が違うだけです。

2.基本戦略

「いやそれでも短期売買をやる」というチャレンジャーの方はここで終了です。ここから先は読む価値がないでしょう。
基本的には日次以上の時間軸でトレードすることになります。


前提として「注文を自動化するかどうかはシストレとは別の話」です。
高頻度売買ではないですし、注文する銘柄数が少数であれば別に手動で注文すればよいだけの話なのです。数分で終わります。
取引が行われていない時間に発注すればいいので、全く焦ることもありません。当たり前ですが、システムに従ってる以上それでもシステムトレードです。
そもそも元手が数百万程度ならそんなに注文数増やせないので、手動で事足ります。
寝る前、朝、昼休みあたりにコーヒーでも飲みながら、売買対象をポチポチーっと入力すればいいのです。数分です。

というわけで、チャレンジャーの方を除けば基本的には下記のような方針で、売買することになります。

(1)板寄せでエントリー、決済する。
日本市場は9:00~15:00が取引時間ですが
その時間内に4回板寄せのタイミングがあります。

 9:00:板寄せ(前場寄り付き)
11:30:板寄せ(前場引け)
~昼休み(1時間)~
12:30:板寄せ(後場寄り付き)
15:00:板寄せ(後場引け)

板寄せのタイミングではスプレッドを考慮する必要がありません。
他の市場参加者に対して不利になるなんてこともありません。
※自身のマーケットインパクトにより、勿論価格は変わる可能性がある。

そのため板寄せでエントリー、決済することが基本戦略となります。
またチャートデータを始め、信用取引のデータなどの入手可能な株式のデータは基本的に日次レベルのデータになります。
そのため、OPEN(前場寄り付き)、CLOSE(後場引け)のタイミングでの投資判断が合理的になると考えます。
更に言えば、リアルタイムの株価。つまり引け直前(~14:59)までの株価のデータを取得することは難しいため、CLOSEをエントリータイミングに使用するのは難しいと言わざるを得ません。

(2)ルールベースorモデルベースアプローチをとる
仮想通貨では「取引所間の価格差を利用したアビトラージ」のほか、「取引所仕様をついたエッジ」など価格予想に依らないものを収益化することが可能になります。
株式市場では「ザラ場に注文するアプローチをとらないのであれば、このようなエッジを収益化することはほぼ不可能」といっていいです。
株式市場でもザラ場で「有名人のTwitter投稿を監視して注文」といったような手法は存在しているみたいですが、少なくとも正規の手段でリアルタイム株価を得ることは難しいし、面倒なので自分は選択肢に入れていません。
検証すらしていません。
遅延、速度と戦うのは仮想通貨BOTだけで十分です。

というわけでザラ場で発注をしないのであれば、ルールベース または モデルベースのアプローチに落ち着くと思います。
ええ、株式市場はデータサイエンスの戦場です。

A.ルールベース
ようは「移動平均線25日が~を超えたら~」とか「信用倍率が~を超えたら」みたいなやつです。
プログラムで言えばIF文を列挙する形になります。
古典的な手法ですが、市販のシストレソフトやTradingViewで作られるストラテジーの類は、このアプローチに当たるものが多いと思います。

イメージ:

if 移動平均線(A) > 移動平均線(B):
    買い注文
elif RSI(30) < 閾値:
   買い注文
if 移動平均線(C) > 移動平均線(D):
    売り注文
elif RSI(30) > 閾値:
    売り注文

B.モデルベース
数理モデルを用いて、株価の値動き自体を導出します。
ここでいう数理モデルとは統計モデル、機械学習モデルを指します。
モデルっていうとわかんね、ってなる方も多いとおもいますが
要は「値動きを導出する関数」です。
この関数の精度を極限まで上げます。
統計モデルでも、機械学習モデルでも目指すところはかわりません。

ようはクオンツと呼ばれる本業の方々と同じことをやります。
アクティブ運用ファンドがやれて個人でできない理由はないのです。
(※ただし入手可能なデータは少ないのかもしれない)

イメージ:

def calc_return_model(説明変数1,説明変数2...)
   # めっちゃかっこいい”関数”
   return 説明変数1*0.5 + 説明変数2*0.1 ...
   
if calc_return_model(説明変数1,説明変数2...) > threshold:
   買い注文
else:
   売り注文


どっちが優れているかとかは様々な議論を呼ぶのであえて書きません。


(3)売買対象を選定する
株式市場では、3500以上の銘柄が上場しています。
売買が盛んである東証1部に絞っても、2100程度の銘柄数が存在します。
銘柄数があるということは、それだけ収益機会が存在しているということに他なりません。

ただし、取る戦略によってはそこからさらに絞られた銘柄となってくるでしょう。
というのも信用取引(レバレッジ)、および空売り(ショート)ができる銘柄というのは限られているからです。
JPXのサイトにそのリストがあります。
https://www.jpx.co.jp/listing/others/margin/index.html

信用取引を前提とする場合、制度信用選定銘柄に限られます。
更に空売りを行う場合には貸借銘柄に限られてきます。
(厳密にはHYPER空売りなど1日信用という莫大な手数料を払って1日だけ空売りできる仕組みがあります)
よって戦略の中に空売りを組み込む場合には、貸借銘柄が対象となります。
それでも東証1部に限っても1800銘柄程度が対象となります。
この銘柄の一つ一つあるいはグループ単位に対してアルファを探索することになるのです。

勿論、特定のセクターなどに限るなども検討すべきです。
例えば、スマホゲーム株ではセールスランキングの結果が顕著に株価に反映されたりすることがあります。
そういったファクターを取り込み、勝てる戦略(ルール、モデル)を練り上げていきます。

(3)ベータ、アルファを考慮する
株式市場では、個々の株の動きのほか”市場全体の動き”が存在します。
個別銘柄の値動き(リターン)は
「ベータ(全体の値動き) + アルファ(個々の値動き)」
としてざっくり表現されます。

仮想通貨でも似たような値動きはありますよね。仮想通貨全体への信頼によってビットコ、アルトコイン全体下げみたいな。
だけど一部のコインだけ上げてるみたいな。よーはあれです。

この辺りはアクティブ運用理論を勉強するのが良いんだと思いますが
(自分も勉強不足です)

取り分けて、このベータ+アルファの考え方は重要です。
市場全体の値動きを収益源とする場合、それはすなわち日経平均だったりTOPIXだったり市場平均を予想することに他なりません。
ベータのみを収益とする場合には銘柄複数を取引する必要なんてなく、日経ETFなり日経平均先物を取引すればいいのです。
自分も2019年は信用手数料の関係で、日経ETFにてシステムトレードを行っていたのですが、これは非常に難しいです。やってみればわかります。
自分の場合、勝てはしたものの9か月間ヨコヨコ損益を描きました。
重要なファクターとなるのは「日銀の売買動向」などなのですが、奴ら急に買い渋り始めたりします。
日銀の動向、政策その他によって左右されるのが市場平均なのです。
ではどうするかというと、アルファがメインの収益源となります。アルファとはすなわち「個々の銘柄特有の値動き」となるので、売買対象とする銘柄数が多ければ多いほどアルファの収益機会が生まれることに他なりません。
が、勿論ベータを無視してエントリすると酷いことになるのは想像に難くないでしょう。
ベータを無視すると
「仮想通貨99%全体下げだけど、XRPは相対的に上げそうだからロングや!」

みたいなことになってしまうわけです。

なのでベータ、すなわち市場全体の値動き自体をヘッジしてしまうマーケットニュートラル戦略という概念があったりするのですが、専門書読んでください。
厳密にベータをヘッジするのは結構な難易度かと思われます。
というのも個々の銘柄の「全体市場に対しての感応度(ベータ)」は銘柄によって異なり、更に日々変動していくからです。

4.ルール、環境

さて、株式市場にてシステムトレードをする際に気を付けなければいけない取引ルールや環境が存在します。これらは売買戦略にも影響を与える可能性があるので紹介します。

(1)空売り価格規制について
 株式市場では、株価が下がっている銘柄。具体的には「当日基準価格から、10%以上価格下落している銘柄」はトリガー抵触銘柄とされ、個人投資家であれば51単元以上の新規空売りを禁止されます。
逆にいえば、50単元以下であればこの規制は無視できることになります。

基本的に100株/単元が一般的であるため
100円の株であれば 100(株/単元) * 50単元 * 100(株価) = 50万円
まで新規で空売りできる計算となります。

時価総額に依らず株価によって新規空売りできる最大金額が決まってくるのです。意味が分かりませんね笑

例えば時価総額1億円、取引単位100単元の株があったとして、株価が1万円、なら10000*100*50=5千万円まで空売りできるということになります。時価総額の半分に匹敵します。
まあそんな銘柄はないのですが、何じゃこりゃこのルールって話ですね

そのほか、取引所、証券会社側の判断によりそもそも空売り自体が禁止となる信用取引規制がなされる場合があります。
注文画面でエラーになります。これは諦めるしかありません

(2)値幅制限、特別気配
いわゆるストップ安、ストップ高です。
個別銘柄に対して材料が出た場合、1日の値幅制限に抵触するほどの値動きが発生し、取引ができなくなる状態が存在します。
システムトレードにおいてもこれらは明確にリスクです。
エントリーできないならまだしも、エントリー後にザラ場で材料が出てクローズできない場合、数十%も価格変動リスクを被ることになります。

※制限値幅とは?(SBI証券)

「逆指値しとけばいいんじゃね?」って思う方もいるでしょう。
逆指値したところで刺さらない可能性も高いです。なぜなら特別気配に突入した場合、その時点で売買の成立が発生しない状態となるからです。

※特別気配とは?(SBI証券)

結論を言います。

運否天賦に任せましょう。順方向を引くこともあるのです。祈りましょう。

ザラ場で発生する天災、災害を予想することはできないのですから。


(3)現物、信用取引の差について
結論から言いましょう。信用取引一択です。
おわり。



というのもなんなので・・・現物は差金決済規制の対象となり、同一資金同一銘柄での売買が規制されています。ようは回転売買が不可能となります。

更に言うと、手数料体系についても短期であれば基本的に信用取引が有利となります。
信用取引では売買手数料のほか金利(*借りた日数)、逆日歩(銘柄次第)が発生する可能性がありますが、仮想通貨のレバレッジ手数料と比較すると全然安いです。

さらに最近は証券会社側で新規売買手数料は無料化となる流れになってきています。つまりコストとしては金利、逆日歩が対象となりますがスイングでなければ無視できる範囲です。


「いやいやいや!長期トレンドフォローをワイはしたいんや!現物をやるんや!」 
または
「バリュー株や!安いのを買いたたいて長期的に回帰するのを狙うんや!」って方もいらっしゃるでしょう。
素晴らしいと思います。バイアンドホールド、ようは投資ですね。
多分シストレってなんだっけ・・・・?ってゲシュタルト崩壊すると思いますが

5.データの入手

スクレイピングする手段などもなくはないですが、基本買いましょう。
ググれば出てきます。

無料
株式投資メモ https://kabuoji3.com/stock/

有料
[JPXデータクラウド] http://db-ec.jpx.co.jp/
[kabu+] https://kabu.plus/

など



6.終わりに

長くなりました。ざっくりまとめます。

(1)個人が使えるAPIはない
(2)発注の自動化は必須ではない
(3)株式市場はデータサイエンスの戦場である
(4)取引ルールを理解すべし
(5)信用取引を活用すべし

ここまでこのあほみたいな長文を読んだあなたにこの言葉をささげましょう.



「Welcome to Undeground.」

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