摂食障害のケース

キネシオロジーのセッションを初めてまだ間もないころ、出張の依頼を受けました。「嫁を見てほしい」ということで、クライアントさんご本人ではなく、配偶者の母親からの依頼でした。

何がテーマか聞いてもはっきりした回答はありません。「嫁を見てほしい」という不穏な言葉の響きから、なにかよからぬことが起こっていて、言いたくないのだなと思いました。セッションを始めたばかりだし、出張はするつもりがなかったので最初は断りましたが、あまりに熱心にお願いしてくるので、初めての出張セッションを受けることにしました。

そのお宅へ着いて、クライアントになる女性をひと目見て、拒食症だとわかりました。不思議なのは、家族にはその認識がないことでした。ちょっとやせている、最近食べないのよね、ぐらいな感じに思っているようでした。

夫の家での四世代同居で、その女性の存在は薄く感じられました。自分の意見などないようかにしていました。

彼女の口からも、自分が食べていないという言葉は出てきませんでした。キネシオロジーのセッションでは、クライアントが言葉にしなくても、筋肉反射を使ってチェックリストから項目をピックアップすることによって、症状も原因も知ることができます。

クライアントは必ずしも本当のことは言いません。嘘を言う人も多いです。クライアントが言っていることと身体が言っていることが違う場合、どちらを信用すべきか講師に質問したことがありますが、その場合、身体の言い分が正しいのでそちらを採用せよと言われました。嘘をついているかどうかは問題ではありません。症状が消失することが重要なので、正確な情報を集めなければならないのです。

彼女の身体から情報をピックアップしていくと、食べない理由に「復讐」と出てきました。復讐のために食べないとはどういうことでしょうか?

誰に対しての復讐なのか身体に聞いていくと、「夫」と出ます。夫への復讐で食べない。

当時、彼女は30代後半でした。身体から上がってきた情報を総合すると、結婚当初、夫は彼女にいろいろな約束をしました。その中には自分たちの家を持ち、子供と夫婦で暮らすというものがありました。しかし夫は実家を出ようとせず、ずるずると両親との同居を続けています。家は狭く、自由がありません。子供は3人います。彼女は食べないことにより、がりがりにやせました。それは夫への復讐のためです。彼女はこう言いたいのです。「女性らしさを失ったわたしを見て、あなたは何も行動しないのか?わたしは同居ではなく、自分の家がほしい、夫婦と子供だけで暮らしたい」ということでした。

これはあくまで無意識に考えていることです。ですから理屈は通っていません。顕在意識では食べられなくて苦しんでいます。身体の調子も悪く、外出ができません。ただ、そのときにできた彼女の気持ちを表現する方法が食べられない、ということだったということです。

原因はわかったものの、セッションができるか、また結果が出るのかはわかりませんでした。摂食障害は病院に行ったとしても、改善するのが難しい症状です。身体にできるかどうかの確認をして、OKが出たのでひととおりセッションをしました。家族の方には、彼女がこの家から出たいと言っている旨を伝えましたが、経済的に無理だと言われました。

セッションをしてよくなったかどうか、すべてのケースで確認できるわけではありません。西洋医学と同様に結果を保証できるものではありません。その彼女についてもその後、どうなったかずっとわからないままでした。こちらから連絡をとるということはしません。

セッションをしてから1年半ぐらいたったとき、一番最初にセッションを受けにきた、彼女の親戚に会う機会がありました。会ってすぐには何も言わないので、やはりキネシオロジーで摂食障害の改善は無理なのかなと思いましたが、帰り際に勇気を出して、例の彼女はその後、どうしているか聞いてみました。すると、「もとどおりになって元気に外出してますよ」という答えが返ってきました。

こんな大きな問題でもよくなってしまえば、悪かったときのことなど忘れてしまうかのようです。早く教えてくれればいいのに、とよく思いますが、仕方ありません。

食べない理由はさまざまでしょう。人間の身体は不思議です。自分の身体を痛めつけてまでも、どうしても達成したいことがわたしたちにはあるようです。

※セッションは個人のものでありすべての人に当てはまるものではありません。また、結果を保証するものでもありません。


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