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[その1]ユナイテッドアローズ名誉会長の重松氏からセレクトしてもらったが、2年たってまだ納められていないお話です

タイトルからファッション業界の超有名人の名前を出していますが、一応承認もらって書き始めています。

わたくし新潟県五泉市の絹織物工場である「横正機業場」のものです。
工場で作っているものは、着物や法衣(お坊さんの衣)の染めるまえの白い布です。これを白生地(しろきじ)といいます。

そんな私たちが、ユナイテッドアローズの創業者であり、現在、名誉会長にある重松理さんから、ある注文を頂きました。
しかし、、、、出会いから2年以上たち(注文を頂いてからは1年ぐらいでしょうか)、まだご注文の品物を納められていません。
※これからのお話は、重松さんが代表をおりてからご自分の目にかなったものを直接セレクトしている「順理庵」についてです。ユナイテッドアローズからの注文ではないです、良く間違われるので最初に。

本来は、クライアントからの注文は世の中に出て公表されるのが普通とは思いますが、ものづくりの過程こそ価値があり、試行錯誤している方がリアルっぽくていいかも(実際しているのですが・・)と思い、重松さんに相談したら「いいよ」と言ってくださったので、今までのやりとりを書いていきたいと思います。

さて、ご注文いただいた内容とは、、

私たち工場に注文いただいたのは、

・草木染/藍染のストール

です。
おい、きものの生地をつくる工場になぜストール?
そして、ストール作るのに2年以上もかかるの??
と思われてしまいますが、いくつか条件があります。

1.幅が70cm以上であること
2.指定した色を草木染/藍染で出すこと
3.絽(ろ)と紗(しゃ)であること

です。
いずれもそんなに難しそうではなさそうですよね。。。
ただ、その中で聞きなれない言葉が、、、絽?紗?

着物をお召しになる方であれば、ご存じと思いますが、絽や紗は、夏に着る着物の織物の種類を言います。夏お坊さんが黒い透け感あるものまとっていると思いますが、あれが紗です。今度じ~っと見てみてください。

というわけで、一見簡単そうに見えて、実は難しい??。
振り返ってみると難しいというより、自分たちの能力不足?
なこと満載で、書いていると笑われてしまいそうですが、これはこれで地方の中小零細工場のあがきみたいなものとしてとらえてもらえればいいと思います。
笑われても、私たちのこと知ってもらえた方がいいですし、
できれば、考えかとか仕事の進め方とか、まずいでしょ~とアドバイスを頂き(励ましもほしい、笑)、勉強していければとも思います。

さて、今後の書いていく内容はまだ決めていませんが、こんな感じになると思います。もちろん、脱線することや、他の伝えたい事もあり、この通りなるとも限りません

・私たちは何者なのか?
(今日はここまで書きます)

・重松さんとの出会い
(なぜ、地方の名も知られていない中小零細工場と重松さんが・・)

・最初の提案にむけて
(求めている理想のストールイメージをどうつかむか・・)

・意識レベルの違い
(今まで気にしていた事を放置するとこうなるのか・・)

・さて、どうするか
(モノの性質は変えることができるのか・・)

・1年たってみたら、まさか。。
(ん~なぜゆえに、、という感じです)

・ようやくそろったと思ったら、、まさか。。
(お盆明けの打合せが、ここです。)



そもそも、なぜ重松さんの名を借りて書くのか?
私たちは何者なのか?


それは、一言でいえば、PRのためです。もちろん、ものづくりの過程も伝えたいというのも同じくらいありますが、、

・五泉産地PR,自社PR、シルクPR、等々をしたいのです。

・有名な方の名前があった方が、書く人が無名でも読んでもらえるのでは?と思ったからです。

・日本のセレクトショップを牽引してきた重松氏が注文したものとは?と興味を持ってもらえるのではないか?と思ったからです。


最初に、新潟県五泉市のPRと書きましたが、これを読んでくださった人の中にはどれくらい「知っているよ」「聞いたコトあるな」という人がいるでしょうか?
まず、五泉市のことをいうと

日本一の生産高のニットのまち
レディースの高級婦人服を五泉市で作っています、でもアパレルメーカーのOEMなので表に名前は出てきませんね。新潟県内では「五泉=ニット」として知られています。

和装の日本三大白生地産地のひとつ
男性の黒紋付きで使う表の生地(羽二重)は五泉で織った生地です。
他にも染帯の生地(塩瀬)。夏のきものの生地(絽や紗)。
お坊さんの衣の生地などを織っています。
染めるための素材なので名前は表にでてきませんね。

客観的にとらえてみれば
和と洋、織物と編物(ニット)が共存した、全国的にもめずらしい日本屈指の「せんいの町」ともいえると思っています。

私たちは、後者の絹織物の工場です。
日本の三大産地のひとつ、なんていえば響きはいいですが、皆さんご存知の通り、着物は着なくなっています。また少し見直されてきていますが、価格・手入れなどから「絹離れ」は絶賛進行中。よって生産高の落ち込みには底がありません。お坊さんも絹の衣を着なくなってきていますし。。

それだったら、
それなりに細々とやっていればいいのでは?
なくなることはないんじゃない?
というのもあるのですが、色いろと悩みを抱えているのです。

一番の課題は、職人は高齢化です。(でました!よくある話です)
そして、人はとりたくても儲からないし、そんな衰退している先細り産業には入りたくないし、そもそも何やっているか分からない業界だし(親が入れたくないですよね)、というのが現状です。

いまでこそ伝統産業という位置づけですが、そのまちの歴史を作ってきた主管産業でした。今でもシルクの使用量は全国的にみてトップクラスの生産地でありながら、新潟県内はおろか、地元の人には全く知られていません。

地元の小学校、中学校、高校の生徒の方にきくと、絹織物の存在をしらない、もしくは名前だけしか知らない、何を作っているのか見たこともない、というのが現状なのです。(ちなみに、五泉=ニット はつながっています。)

先日、中学校の同窓会がありました。25年ぶりぐらいにあうので「今なにしてる?」という話になりますが、家業の絹織物してるよ、と話をすると「織物?なにそれ?」と。。。私と同じ世代がこれではまずいな、と本当に実感しました。

こういう話は、五泉だけでなく全国いろんな業種・業界でわんさかあると思います。そんな中、その状況を打破しようとして、立ち上がるカッコいい方たちがいたりします。そして盛り上がります。朽ち果てるところもあれば、1等星のように輝き注目されるところもあります。


私たちは、そういうカッコよさはあまりいりませんし、なかなかそんなうまくいくわけがないと思いながらやっていますが、300年ちかく続く産地の歴史の中で、何もしなければさらに衰退していくだけで、アラフォーなのでまだ頑張れる時だと思い、少し色々と取り組んでみよう!としています。

そして、ちょっとずつは前進しています
(まだ朽ち果ててはいません。笑)

でも、まだまだ。自分たちの会社の立て直しも大事だし、地元に地場産業をきちんと伝える教育も大事だ、産地としてのPRも大事だなぁーと、日々思うことばかり。少し目を広げると地元に少子化という波が覆いかぶさり、地元の財政はどうなることか。

考えれば考えるほど暗くなってしまうので、まずは明るい未来をイメージしながら、できることからやってみよう的な感じで、これを書き始めました。


わたしが、家業にはいったのが2013年9月1日。
ちょうど5年経過します。
思い返せば、いろんな人と出会い(そのうちの一人が重松さん)、試行錯誤しながら、自分たちのシルクロードを作ってきました。

この先どうなるか分かりませんが、とりあえず重松さんとのこと書いてみたいと思います。

さいごに

重松さんとのお話をこれから書いていく中で、いくつか登場人物や会社などの名前がでてきますので、それをまとめて、初回は終わりにします。

写真右:横正機業場の社長 横野恒明
書いているわたしの兄。今から15年前くらいに、父親の病気(今も健在)を機に家業に入る。現場で職人としても働きながら経営を行う。私からするとそっくり兄と言われ(私がそっくりな弟ですね)、はたしてスーパー横野ブラザーズになれるか。

写真左:わたし(書き手)横野弘征
弟。横正機業場の専務。5年前にとちょっとかっこわる系な理由で家業に入る。主に和装以外の新しいこと模索しています。36歳までシステムエンジニアしていました。社長のことはお兄ちゃんと呼んでいます。むかしから、金魚のフンです。


写真中央:ユナイテッドアローズ名誉会長 重松理さん。
あまり多くを私が語ることはできませんが、BEAMSの創業メンバーでもあるのですね。その辺はnewspicksのこの記事が面白いです。(有料)

※これからのお話は、代表をおりてからご自分の目にかなったものを直接セレクトしている「順理庵」です。ユナイテッドアローズからの注文ではないです。大事なことなのでもう一回書きました。

写真右:植物染め浜五 星名康弘さん。
重要文化財の修復に携わるなどしていたが、なぜか草木染の職人に。
新潟県の越前浜で工房を構えています。


順理庵
重松さんがセレクトしたものを置いているお店。銀座、六本木にある。

日本の高い精神性と美意識からなる、ひとつの真正なる美の基準
=THE GENUINE NIPPON STANDARDを
次世代に継承していくことを目的としたお店です。
(順理庵HPより引用)

横正機業場
私たちの会社。着物の染める前の白い反物を作っています。

絽紗
わたしたちが立ち上げたシルクストールのブランドです。(是非しってくださいね!笑)


#ビジネス #ファッション #ものづくり #仕事

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